あらすじは短くあってくれ! ネタバレ嫌いがおすすめする「一行のあらすじで見たくなる映画」8選
ライター・城戸の映画コラム。
「映画のあらすじ」ってどの程度詳しく説明するのがベストなんでしょうか。個人的には短ければ短いほど良いと思っています。
公式のあらすじに序盤30分の展開が全部書かれているような作品もありますが、なんとなく損した気分になっちゃうんですよね。極端な話「タイタニックが沈む」って周知の事実もマジで知らなければ衝撃の展開として楽しめるはずなんです。できることなら「レオナルド・ディカプリオがでっけー船に乗ります!」くらいの前情報で見たかった。
しかし、それでは誰も興味を持たないのが悲しい現実……。かくいう僕もコラムを書くにあたり多くを語らないよう注意していますが、短すぎても「見たい!」と思ってもらえないような気がして、いつも塩梅(あんばい)に悩んでしまうんですよね。
そんな「あらすじ」事情の煩わしさからたまには逃げ出したい! ということで今回は「たった一行のあらすじで見たくなる映画」を紹介していきます。ネタバレNG原理主義の人も安心してお読みください。
「ファイナル・デスティネーション」
【あらすじ】九死に一生を得たはずが別の原因で死んでいく人たち
とにかくいっぱい人が死ぬホラー映画「ファイナル・デスティネーション」シリーズ。各作品は登場人物もシチュエーションも異なりますが、とある「死のルール」だけは一貫しています。それは「死の運命からは逃れられない」というもの。一度は死から逃れた人物たちが、また別の死因で次々と命を落としていくのです。
まるで死神の仕業とでも言わんばかりに襲い掛かる死のピタゴラスイッチ。「登場人物は死の運命から逃げ切れるのか?」という手に汗握るドラマはもちろん、予想もつかないアクロバティックな死に様も本作の魅力です。「1」はシリーズの中でもグロ描写も控え目なので、ホラーが苦手な人でもサスペンスとして楽しめると思います。
「ロード・トリップ」
【あらすじ】浮気相手とのセックステープを彼女に郵送しちゃった
むしろあらすじを2行以上で説明する方が難しい! かつてのコメディ監督トッド・フィリップスによるロードムービーの傑作です。バカな大学生たちのわちゃわちゃは、見てるこっちの知能指数まで下がっていくような気がします。「市外局番が違うなら浮気じゃないんだぜ」。
低レベルな下ネタに不衛生なギャグ、そしてお色気もふんだんに含まれる、とにかく下品極まりない内容ですが、およそ20年後に「ジョーカー」を撮る監督だと知った上で鑑賞すると感慨深いかもしれません。
「パージ」
【あらすじ】1年に1度、すべての犯罪が許される夜
こんなに興味をそそられる設定もそうそう無いでしょう。どんな悪事が飛び出すのか、自分だったら何をするか、つい想像してしまうはず。
ところが蓋を開けてみれば単なる立てこもりスリラーだった……というギャップから批判的な感想も多い作品ですが、僕は大好きです。そりゃあ暴徒が出歩いている中、一般人にできることなんて家に立てこもるくらいでしょう。
「パージ」は3部作となっており、「2」以降では主人公が変わり、前述した設定やアクション要素が色濃くなっていきます。だからこそ小市民的な視点から描かれる「1」が輝く側面もありますので、ぜひ「3」まで一気に鑑賞してみてほしい作品です。
「ディザスター・アーティスト」
【あらすじ】クソ映画ができあがるまで
海外では超有名なクソ映画「The Room」の製作過程を描いた作品。トミー・ウィソーという男の生き様に心打たれる内容となっており、同時に映画の舞台裏の風景も楽しめるというお得な作品です。クソ映画をネタにして遊ぶのが大好きなインターネットの皆さんは大いに楽しめること間違いなし。
最初はバカにしか見えないのに、いつの間にかリスペクトせずにはいられなくなる不思議な魅力を持ったトミー・ウィソーの半生。何かに情熱を持つことの尊さを学べる作品です。
「キッズ・リベンジ」
【あらすじ】普通に殺すタイプのホーム・アローン
もはやあらすじではありませんが、まさに的確な表現だと思います。殺人にためらいのないサイコ児童が主人公。そんな彼が、マコーレーカルキンよろしく悪人をトラップにはめて次々と殺していく様はまさに大人のホームアローンといえるでしょう。
弟のサイコな一面に翻弄(ほんろう)され続ける姉の姿も見どころのひとつ。執行者が誰であれ、悪人が報いを受けるのはやはり見ていて気持ちが良いものです。
「ラディウス」
【あらすじ】その男の半径15メートルに入ると死ぬ
なんで? くさすぎるから?
もちろん理由は説明しませんので、自分の目で確かめてみてください。この設定だけで90分引っ張るという、良くも悪くも突き抜けた内容です。低予算かつ淡々とした描写が人を選ぶ作品ではありますが、要所にセンスが光ります。ちょっと変わったSFやミステリーが見たい方におすすめです。
「リアリズムの宿」
【あらすじ】企画者が寝坊したせいで、あんまり知らない人との2人旅になってしまいました
つげ義春の原作漫画を映画化した作品。当時27歳とは思えない、山下敦弘監督の卓越したセンスが光る逸品です。ごく平凡な男2人組による旅行の様子が描かれるだけなのに、それがめちゃくちゃ面白いんですねえ。構図やセリフ回しのセンスに、誰しも身に覚えがある普遍的な題材。タイトルにあるリアリズム、言い換えれば「人間臭さ」にが心に染み入ります。
日本語が母国語でよかったと感じるくらいセリフが良い。これが洋画だったら字幕を呼んでも細かいニュアンスは理解できなかったわけで……。そう考えると英語も覚えたくなりますね。ハロー、グッバイ。くるりによる主題歌も、物語とマッチしていて非常にいいですよ。
「恐怖の報酬」
【あらすじ】ニトログリセリンと行く地獄のジャングルクルーズ
1977年、ウィリアム・フリードキン監督作。
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督による1953年の同名映画のリメイクです。とにかくギラギラした男たちの顔が印象的な作品。
ほんの少しの衝撃で爆発してしまうニトログリセリンを大金と引き換えに運ぶ男たち。それぞれのバックボーンを抱えた彼らには、常に死の恐怖がつきまといます。爆発と隣り合わせの状況が生む極限のドラマ。ジャケットにもなっている、トラックで吊り橋を渡るシーンはただただ圧巻。かの「エクソシスト」を作り上げたフリードキンの優れた演出により、全編とてつもない緊張感に包まれた内容となっています。こんないい映画を教えてくれたツタヤの発掘良品には感謝しかありません。
スパっと簡潔なあらすじながら、一言では語りつくせない魅力を持つ作品をご紹介しました。一見すると単純でも、中身は非常に奥深かった……というのは、映画に限った話ではありません。何事も自分の目で見て本質を知ることが大切です。ぜひご鑑賞ください。
<城戸>
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