実は親和性の高いトランプ氏とGAFA〜リベラルとは程遠いシリコンバレーの実情

シリコンバレーで何が起きているのか、佐々木俊尚氏が解説。

» 2020年08月22日 13時00分 公開
[ニッポン放送(1242.com)]
ニッポン放送

 ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。アメリカのソフトウェア企業のオラクルが中国のTikTok買収に参戦したニュースについて解説した。

飯田浩司のOK! Cozy up! ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

アメリカのソフトウェア大手オラクルがTikTok買収に参戦か

 イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」は8月17日、アメリカのソフトウェア大手オラクルが、中国の動画投稿アプリ「TikTok」の一部事業の買収について事前協議を行ったと報じた。TikTok買収については、マイクロソフトが交渉を進めている状況である。

飯田)マイクロソフト以外に、ツイッターも出ていましたよね。

佐々木)オラクルで3社目です。オラクルの社長であるラリー・エリソンさんは、シリコンバレー有数の大金持ちで有名ですが、トランプ支持者です。アメリカのIT企業で、トランプ支持者は少しだけいます。有名なのは、ペイパルという決済サービスの創業者であるピーター・ティールさんです。

 GAFAはリベラルを自称しているので、トランプ支持ではありません。しかし、本当にGAFAがリベラルでトランプさんに反対なのかと、必ずしも言えないねじれた構造が裏側にはあります。

飯田浩司のOK! Cozy up! 13日、米ホワイトハウスの執務室で発言するトランプ大統領(ロイター=共同)=2020年8月13日 写真提供:共同通信社

トランプ大統領は新自由主義的なところが発祥〜本当はシリコンバレーと親和性が高い

佐々木)アメリカの民主党のようなリベラルの勢力は、やたらとLGBTや移民のことを取り上げますが、中西部の白人貧困層は相手にしていません。そういうことに対する怒りがトランプさんを当選させたと、前回の大統領選では言われました。トランプさんは白人貧困層の味方だと言っていますが、自身は大金持ちです。

 実はトランプさんは、白人貧困層を包摂して支えるというよりも、新自由主義的に、自由な資本主義で稼ごうというところが発祥の人です。選挙に勝つために、白人貧困層の味方と言っていたところがあります。

 新自由主義的な思想で言うと、アメリカのシリコンバレーはまさしく新自由主義です。

飯田)規制はどんどんなくした方がいい。

佐々木)お金を稼いで国を豊かにするので、政府は何もしなくていいから我々に任せて、という発想が根本にあります。

 本当はトランプさんとシリコンバレーは親和性が高いはずですが、あえてGAFA側は言わないで来ました。なぜなら、シリコンバレーはリベラルで自由な民主党的なものの味方だと訴えて来たからです。

飯田)カリフォルニアは民主党の強固な地盤ですからね。

飯田浩司のOK! Cozy up! オラクル(企業)-Wikipediaより

足元の貧困を見ずに豊かな生活をするGAFAの欺瞞〜リベラルのメッキが剥がれて来た

佐々木)そこが欺瞞だと思うのです。シリコンバレーのネット企業はLGBTや移民など、民主党寄りの話を言っていますが、足元の貧困にまったく目を向けていない。シリコンバレーに行くとアップルなどの本社が並んでいて、最上階のカフェでお酒を飲み、ジャズを聴いている。広大な緑地のなかにあるキャンパスと呼ばれる場所では、おいしいものが食べ放題で、豊かな生活をしています。

 そこでLGBTや地球温暖化などと言っていますが、本社から一歩出ると、そこにはホームレスがあふれています。しかも、裕福なGAFAの社員たちが住んでいるせいで家賃が上がっていて、普通の人が住めなくなっています。

 サンフランシスコのワンルームの家賃は30万円ですよ。そんなところに日本人は住めません。ところが彼らは、足元の貧困についてはまったく何も言いません。

飯田浩司のOK! Cozy up! 2013年の世界経済フォーラムに参加中のベニオフ(マーク・ベニオフ-Wikipediaより)

法人税を上乗せしてホームレス対策をする法案を提出したマーク・ベニオフ

佐々木)最近、「セールスフォース」というシリコンバレーで有名なBtoBの会社がありますが、社長のマーク・ベニオフさんが『トレイルブレイザー』という本を出しました。彼はそういう風潮が嫌で、カリフォルニアの法人税を何%か上乗せしてあげて、そのお金でホームレス対策をするという法案をつくって提出したのです。そうしたら、シリコンバレーのネット企業はこぞって反対しました。

飯田)法人税は払いたくないということですね。そもそもタックスヘイブンを使って、ほとんど法人税を払っていないのに。

佐々木)それは欺瞞ではないですか。そういう状況のなかで、私たちはリベラルではなく、民主主義でもなく、新自由主義であり、「だからトランプさんと仲よくするのだ」と言ってしまうペイパルのピーター・ティールさんのような人が出て来ます。身もふたもないですが、真っ当だと思います。

飯田)そちらの方が、主張がすっきりしていますよね。

佐々木)正直ですよね。ラリー・エリソン氏がなぜトランプ支持なのかを調べましたが、あまり明快なことは言っていません。「現在の政権を支持するのが我々の仕事だ」と言っているだけで、政治思想については語っていませんでした。

 シリコンバレーでも、拠って立つリベラリズムが何なのかが崩れるなかで、正直な姿勢を見せる人が出た感じがします。

飯田)ビジネスの世界で、「お金は正直」というところがありますよね。それでやっていた人たちが欺瞞だということになって来たのは、リベラルのメッキが剥がれて来ているようですね。

飯田浩司のOK! Cozy up! デジタル市場競争会議で、「GAFA」と呼ばれるグーグルなど米IT大手4社の担当者を前に発言する菅義偉官房長官(左手前から2人目)=2019年11月12日、首相官邸 写真提供:時事通信社

GAFAのような富裕層からの税金の分配を考えるべき〜アメリカの分断は広がるばかり

佐々木)GAFAのような会社が巨大化し、お金持ちになるなかで、格差は広がっているわけです。日本とは比べ物にならないくらい、富裕層への資産集中が起きています。しかも、コロナ禍で一般労働者の給料が減っているにも関わらず、アメリカでは富の集中がさらに激しくなっています。

 この前もニュースで観ましたが、アメリカで高級ヨットやクルーザーが売れまくっていると。なぜいま10億円ほどかけて買うかというと、3密を避けて暮らせるからだそうです。

飯田)海の方が風が吹くし、ウイルスはいないと。

佐々木)経済学者のトマ・ピケティ氏は『21世紀の資本』で、「資本収益の方が労働で得られる給与より増えて行く」と言っています。いかにGAFAのようなところから税金を取って分配するかを、国際社会は考えなければいけないのですが、それにGAFAは答えず、一方で「我々はリベラルだ、民主党だ」と言っている。

 この問題を解消しない限り、アメリカの分断の問題は解決しないと思います。(radikoのタイムフリーを聴く

Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/18/news071.jpg 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  2. /nl/articles/2503/20/news115.jpg 「いつの間に……」 大谷翔平、試合後の「ひざの状態」にファンに衝撃 「ボロボロ」「すごさを物語っている」
  3. /nl/articles/2503/20/news026.jpg プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが550万再生「凄すぎて笑うしかないw」「チーズが、、、」 話題になった作者に話を聞いた
  4. /nl/articles/2503/19/news126.jpg 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
  5. /nl/articles/2503/19/news030.jpg 19万8000円で購入した超高級魚を、4年間育てたら…… ド肝を抜く“大変化”に「どんどん色が」「すごい」
  6. /nl/articles/2503/20/news046.jpg 【ワークマン】一体なんだこれは…… 衝撃的な“1500円Tシャツ”に反響 「すごく良い」「発想が面白い」
  7. /nl/articles/2503/19/news019.jpg 水族館のイカに“指でハート”をしてみたら… “まさかのお返し”が190万表示「こ、こんなことあるのか」
  8. /nl/articles/2503/20/news112.jpg 「なんでこれ使った」 ドジャース公式が“日本人3選手”の勇姿を投稿→よく見ると…… まさかの「違和感」に「誰かわからんかった」
  9. /nl/articles/2503/20/news009.jpg 「もうこりごりだ〜」 財布に新紙幣を入れたら…… “まさかのビジュアル”に爆笑 「昭和アニメのオチかな?」 投稿者に話を聞いた
  10. /nl/articles/2503/17/news040.jpg 毎日庭に来るインコから、ある日渡された“贈り物”とは…… 「号泣した」まさかの正体に「まるで何かの物語のよう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  2. 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
  3. 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  4. 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】
  5. ペットのカエルを土に埋め、約半年間放置→掘り返してみたら…… 「すげぇ」予想外の結末に「ほんと不思議」
  6. 「絶対当たったわこれ」→「は?」 ガリガリ君の棒に書かれていた“衝撃の文章”に「そうはならんやろ」 投稿者に当時の思いを聞いた
  7. コメダ珈琲店で「軽い食事」を注文 → 出てきた“まさかの実物”に思わず大仰天 「逆詐欺ですね」「軽食という名の主食」
  8. 最恐雑草“ヤブガラシ”根元をハサミでチョキッと切ると…… “驚愕の結末”に「すごい」「知りませんでした」
  9. 「笑い過ぎて涙が」 小学生次男、宿題で先生に不正を疑われる→まさかの原因が530万表示 「じわじわくる」 投稿者に話を聞いた
  10. 大阪梅田駅で撮影された“奇跡のような光景”に「今まで見たことない」「本当に贅沢な眺めだ」 全ホームにマルーンカラーが整列
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に