アイマス描け麻雀で勝って「麻雀エアガイツ仮面」になりたかったけどなれなかったマシーナリーとも子の話マシーナリーともコラム

麻雀に憑かれ、麻雀に疲れたバーチャルYouTuberの話。

» 2020年08月30日 20時30分 公開
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 バーチャルYouTuber、マシーナリーとも子による不定期コラム第28回(連載一覧)。今回はとも子から急に「麻雀テーマにしてむこうぶちと天とアイドルマスターシンデレラガールズと世界のアソビ大全と雀魂の話書いてもいいですか?」というLINEが来たので麻雀の話です。情報多くない?


マシーナリーとも子

ライター:マシーナリーとも子

マシーナリー<strong><span class="cmsColorOrange">とも子:</span></strong>プロフィール

徳で動くバーチャルYouTuber(サイボーグ)。「アイドルマスター シンデレラガールズ」の池袋晶葉ちゃんのファンやプロデューサーを増やして投票してもらうために2018年4月に活動開始。前世はプラモ雑誌の編集をしていたとも言われているが定かではない。現在は自分のグッズを売ったりライターやったりして糊口をしのいでいる。お仕事募集中。

YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/barzam154
wiki:https://wikiwiki.jp/mashitomo/
ポータルサイト:https://www.machinery-tomoko.com/



麻雀やらないけど麻雀漫画読む族

 めっちゃたくさん読んでるというわけではないんだけど麻雀漫画が好きなんだよね。ちょっと前に『むこうぶち』を読んだらどハマりしてしまって全巻買ったし、それまでも『アカギ』のアニメとか好きでさ。あれは作業用BGMにもいいから、ネット配信を垂れ流しながらお絵描きしたりとかで何度も見たよ。福本漫画で言うと『銀と金』の麻雀も面白かったね。最後に銀さんがイカサマのタネをチラッと見せてくれるのがカッコ良くてさ……。



 でも麻雀自体はマジで全然やったことがない。いや、何度も覚えようとしたことはあったんだよな。実際に雀荘に行って打ってみたこともあるのよ。ただなあー、何度牌をつまんでも身につかなかった。麻雀のルール、複雑すぎない? よくあんなややっこしいルールのゲームが流行ったよな。最初に思い付いたやつとそれに付き合ってくれたやつはどうかしてるぜ……と思って調べたら「麻雀を発明したのは孔子!(激烈諸説あります)」みたいな話を聞いてキン肉マンスーパーフェニックスになっちゃった(アンタほどの実力者がそう言うならの意)。


ガルパンだって戦車わかんなくても見られるもんな

 ここまで読んで「なんで麻雀分からないのに麻雀漫画読んでるの!?」と不思議に思う人類もいるかもしれないが、実は全然問題ないんだよな。問題なくないですか? ルールがわかんなくても面白くないですか? だって麻雀漫画は「驚きの一手!」みたいなのが出てくるとちゃんと登場人物が驚いてくれるもん。


マシーナリーとも子 全然分からないけど外野が驚いてくれるので勝負の雰囲気は手に取るように分かる(50〜51巻「仕手戦」より)

 だから全然問題ない。強気の打牌をするシーンが、完全にドラゴンボールでの必殺技の撃ち合い、ガンダムでのつばぜり合いとして機能してるので「この打牌は強いんだな」みたいなのが登場人物のリアクションで分かるからなんの問題もないんだよな。「意外な一手!」みたいなのも同様です。

 それに例えば『むこうぶち』って単純にマンガとしてめちゃめちゃ面白いんだよ。このマンガは化け物じみて麻雀が強い謎の男、によって次から次へと麻雀強者が敗れていくという漫画だ。舞台はバブル期の日本、超高レートのマンション麻雀を主な戦場としてさまざまな人間模様が描かれる。卓を囲む者たちは皆、それぞれの持つ信念、戦略を持って傀を倒そうと試みる。だが妖怪や災害のような雀力を持つ傀には敵わず、その力量に飲み込まれるように点棒を吐き出していく。


マシーナリーとも子 40〜41巻収録の「杖」より。バカみたいな金額が数十分でやりとりされていきます

 先述した通り日本の景気がいい時代で、ものすごい高レートの卓となっているので一度負けたらウン十万、ウン百万の負けはザラ。エピソードによっては千万、億といった金が麻雀を通じて失われていく。なのでほとんどの場合、傀に狙われた者の運命は破滅だ。敗者の中には精神の均衡を失ったり、あるいは命を絶ったりする者も少なくない。でも中には傀に負ける事で自分を縛っていたものから解き放たれたり、新しい目標を得て前進する奴らもたくさんいるんだよな。この「負けた者たちの物語」がとても面白いのが『むこうぶち』の特徴だ。


マシーナリーとも子 7巻収録「綱」。スカンピンにされて開ける道もある

 この面白さに、実は「麻雀のルールが分かるかどうか」はあんまり関係なかったりする。もちろん麻雀ならではの良さもたくさん盛り込まれてるんだけどね。必死に相手の手牌を読もうとしたり、コンビで味方を援護するときの心理的交錯は麻雀ならでは感を分からないなりに感じるわ。

 また、そういう「相手の手を読みたい」という麻雀ならではの心の動きが、「相手のことをもっと知りたい」ということに重なってきて人間関係の描写にすごく深みを持たせているんだよね……。この『むこうぶち』、題材や時代性もあって登場キャラクターには圧倒的に男、それもオッサンが多いんだけどオッサンとオッサンの感情の向き合わせ方が死ぬほど豊富にあってマジで超潤沢なBL、ブロマンスを死ぬほど摂取できます。マジでたまんねえ。


マシーナリーとも子 34巻「SとN」より、マシーナリーとも子イチオシのカプ、江崎(右)と後堂(左)。見ての通りの仲の良さなうえ、後堂はかつて江崎に金で買われたことがあります

 さらにそうして麻雀を通じて描かれる濃厚な関係性が、50巻以上続いている長尺の物語の中で絶妙に交錯していくのがまたたまらない。10巻以上前に傀に敗れたキャラクターが久しぶりに再登場ってパターンがよくあるんだけど、過去傀と戦った者同士で傀を交えて同卓、ってシチュエーションにまたたまらない良さがあって、あくまで『むこうぶち』という単独の漫画の中の話でありながらまるでアメコミのクロスオーバーみたいな高揚感が得られるんだよね……。イヤほんと面白い漫画ですわ……。


アイマス描け麻雀界に広がるうわさ

 と、こんな感じで長い間「麻雀は分からないけど麻雀漫画は面白いなあ」というスタンスで生きてきた。たまに思い出したように「麻雀でも覚えてみよっかな」と考えても長続きしない。だって難しすぎるから……。

 そんな私の考え方が変わる出来事があった。2020年、コロナ禍渦巻くいつもと違うがことさらに暑い夏の出来事であった。Twitterを駆け巡る一つのうわさがあった。

「べらぼうに描け麻雀が強い池袋晶葉Pがいる」

 説明しよう。描け麻雀とは古から存在する絵描き同士の遊びだ。ここ、日本では賭博は御法度だ。当然お金をかけて麻雀をすることは基本的に禁じられてる。元検事長が賭け麻雀をしていたことが話題になったのも記憶に新しい。だが絵なら……? 絵ならどうだろう? 絵を描いたり描かせたりすることは賭博には当たらないのではないか。そんな発想からネット麻雀の隆盛とともに始まったのが描け麻雀だ。ルールは単純。麻雀をし、トップを取ったものが4位に自分の描きたい絵を描かせる。これだけである。以前から「天鳳」などを利用して親しまれてきた描け麻雀だが、ここ最近は ニンテンドーSwitchで発売された「世界のアソビ大全」やYostarの「雀魂」で行われていることが多いようだ。



 確かにここ最近、Twitterを「晶葉」で検索すると(私は1日に5〜20回ほどTwitterを晶葉で検索している)「賭け麻雀の負債(※)で池袋晶葉ちゃんを描きました」のツイートとともに池袋晶葉ちゃんのイラストが投稿されているのをよく見る。

※負債:描け麻雀で敗北し、絵を描く責務を負うことを言う


マシーナリーとも子 我がタイムラインを疾走る衝撃。なにかが、なにかが起きている……


 何かが起きている……。

 インターネットは「描け麻雀が強い池袋晶葉P」を畏れる声で満ちた。すごい。まるで傀やアカギみたいじゃないか。こんな世界があったのか。そして私は気付いたんだ。

「絵がうまくならなくても麻雀が強ければ池袋晶葉ちゃんの絵がこの世に増えるんだ」

と。


イラスト、エアガイツ、VTuber、描け麻雀

 私は2014年ごろから絵を描き始めた。ここで言う「絵を描き始めた」とは「絵をデジタルで描いてインターネット上にアップロードする」と言うこと、インターネット上で絵を描くアカウントとして活動することを志し始めたと言う意味だ。

 私はそれまでも何度も「絵がうまくなりてぇな〜〜」と何度も志してはきたが、何度練習しても思ったように描けないので挫折してきた。モチベーションが続かないのだ。だが2014年は事情が違った。アイドルマスターシンデレラガールズがサービス開始して2年と少し。私は池袋晶葉ちゃんにドハマりしていたのだ。



 池袋晶葉ちゃんはとてもかわいく、そしてあんなに小さいのにとてもカッコいい一面も見せてくれる。それでいてプロデューサーである私に全幅の信頼と甘えを見せてくる。とてつもなくものすごい女である。彼女について私はこれまでの歴史の中で人類が生み出したものの中でも最も素晴らしい産物であると崇拝している。だがそんな彼女について私を悩ませることがあった。

 二次創作がすくねーんだ。

 同人誌も少ない。2014年当時、私は飢えに飢えていた。もちろん公式からの供給も欲しい。だが日々を生きる糧として二次創作も必要なんだ。頼む。池袋晶葉ちゃんを描いてくれ皆……。

 そうして悩み続けた私がたどり着いた私は「自分自身が神絵師になること」だった。とにかく絵がうまくなってしまおう。そうして最強になり、ある日フォロワーやインタビュアーからこう聞かれるんだ。

「どうしてあなたはそんなに絵がうまくなったんですか?」

 そうしたら私は胸を張ってこう答えてやる。

「それはね、池袋晶葉ちゃんの絵をたくさん描いたからなんですよ」

 私はエアガイツ仮面になりたかった。エアガイツ仮面とは、やはり2014年話題になったゲーセン強者である。彼はその名の通り3D格闘ゲーム「エアガイツ」に長けた格闘ゲームプレイヤーである。だが他の格ゲーについても強い。彼は高田馬場ミカドを主な戦場とし、あらゆる対戦格闘ゲーム大会で優勝する。そしてヒーローインタビューで向けられたマイクでこう叫ぶのだ。「お前らみんな『エアガイツ』をやるのだ!」と。

 素晴らしい。男の中の男だ。私は実際に大会が行われているミカドに赴いて彼の勇姿を直接確かめたことはないが、記事や動画配信でその勇姿を見て心を奪われた。そうだ私はエアガイツ仮面になろう……そう考えてタブレットペンを取ったんだ。ちなみにエアガイツ仮面については故・大塚ギチ氏詳細なコラムを手掛けているので参照されたい。

 あれから6年。

 気付いたら世界に「お前ら池袋晶葉ちゃんの絵を描くのだ!」「投票するのだ!」と叫ぶためにVTuberにまでなってしまったが、まだエアガイツ仮面の高みには遠い。まだ、優勝台に足をかけることができない。そんな日々に差し込んだ一筋の光明が「描け麻雀が強い池袋晶葉P」のうわさだった。こんなところに一種の答えがあったんだ。

 何も最強の絵描きに、最強のVTuberになることだけが池袋晶葉ちゃんの二次創作を増やす手段ではない。麻雀で強くなるという手もあるのだ。

 VTuberは今や1万人を数えるという。最強になるためには1万人を倒さなければならない。だが麻雀だったらどうだろう? 麻雀は4人で打つもものだ。つまり3人だけやっつければエアガイツ仮面になれるのだ。そうだ、麻雀を覚えよう。麻雀を覚えて強くなろう。そしてこう叫ぶのだ。

「お前ら池袋晶葉ちゃんを描くのだ!」


麻雀習得、そして……

 私は麻雀を覚えることを決意した。あるときは「アソビ大全」で対戦しながらYouTube配信をした。YouTubeの視聴者というのは配信に参加したがるものだ。特に麻雀はこの手の配信で視聴者の力が強い。どういう捨て牌をすればいいか、何を目指せばいいかコメントで言い合えば盛り上がるからだ。私もこれを最大限に利用する。そうする無数の声は漏れなく参考になる。どんなときにどの牌を捨てればいいのか。私の後ろには数十人単位のアドバイザーがいるのだ。私は配信をしながら臆面もなく「えっ、なになになにどれどれどれどれを捨てるのがいいの? これ? なんで?」と聞きまくった。



マシーナリーとも子 実戦で学ぶマシーナリーとも子(44:30

 またあるときは身内でボイスチャットをしながら卓を囲み、アドバイスを受けながら実戦を繰り返した。相手が張ったら何を捨てたら安全なのか。何が危険なのか。スジを読むとはどういうことか。それを実際に振り込むことで身体に染み付かせる。

 私は無謀な振り込みで何度もトンだ。だが敗北と引き換えにどんどんセオリーを身につけていった。麻雀の役は国士無双や四暗刻だけではないということ、ポンチーカンできるんなら取りあえずすりゃあいいというものではないということ、タンヤオや平和は狙いやすくて強いのでみんなが狙い、そのため序盤は1や9が切られがちということ……。

 私はようやく麻雀を理解した。こういうゲームだったのか。傀がやっていたゲームは。そしてドアをたたいた。アイマスP描け麻雀部屋のドアを。エアガイツ仮面になるために……。

「打てますか?」

 そう言って卓についた。傀のように。さあ君たちに描いてもらうぞ。池袋晶葉ちゃんを……。


マシーナリーとも子 死んだ

 トンだ。

 初めての賭け麻雀はオーラスを待つことなく私が全ての点棒を吐き出してトンで終わった。マジ? なんですかこれ。私は気付いたらリクエストされたバーチャルYouTuberの絵を描いていた。

 なぜだ。なぜ勝てなかった。それから私は鍛錬を繰り返した。毎晩夜更かしして友人らと麻雀をつまんだ。専用のDiscordサーバまで立てた。私は麻雀で勝ってエアガイツ仮面になるんや!!!

 1週間後。再び描け麻雀部屋の通知が鳴る。メンツが足りないそうだ。ならばやるしかあるまい。私のこの1週間の成果、見せてやる!


マシーナリーとも子 死んだ2

 トンだ。前回は点棒5桁から満貫に振り込んでの死だったが今回は負けに負けまくってオーラス開始の時点で1100点しかないヘボヘボ状況でふつーに上家にツモられてトンだ。あっ……あれ?? おかしいなこれ……なんで??? もしかしてマシーナリーとも子……麻雀の才がゼロ!?!?!?



 やべえっす。麻雀やべえっす。何がやばいって麻雀やってるとき、他のことがまったくできない。絵描いたり文章描いたりっていう「ながら作業」ができない。自分が触ってない時も相手の捨て牌見なきゃならんし。

 これがさ、例えば4人で集まって格ゲーやろうぜとかだったら意外とできるんだよ。待ち時間にちょっとずつ絵描いたりとかさ。でも麻雀はやばい。麻雀始めたら終わるまでほかのことをすることができない。これが積み重なるとやばい。おまんま食えなくなってしまう。

 そして心が折れた私は決めた。もう描け麻雀はコリゴリだ……。これからは身内でほそぼそと遊ぶくらいにしておこう……。麻雀エアガイツ仮面への夢は、ついえた。


理解OK

 ボロボロになり果て、麻雀から足を洗って数日……。ふと空き時間に『むこうぶち』を読んだ。なんとはなしに……。

 読んで、私は驚いた。分かる。みんなが何に驚いてるのかが分かる……悩んだ末に捨て牌を切ったその理由が分かる! なんだとっ!!! 麻雀漫画の面白みが増してる!? なんかコマの下の方に貼り付いたように描かれた手牌一覧を凝視するようになってしまっている……! 

 なんということだ。こんなの意味が分かったらただでさえ面白いのに倍面白いじゃないか……!

 私は紆余曲折の末、麻雀に憑かれ、麻雀に疲れて去った。だが新たな楽しみを見出だすことに成功した。なんてこった。まるで『むこうぶち』で傀に敗れたキャラクター達みたいじゃないか……。そして恐らくこんな風に漫画を読んでいると、また牌をつまみたくなってしまうのだろう。参ったね。懲りやしないね。

 マジで絵で良かったよな。マンション麻雀の世界だったら破滅でした。まあまだまだ生きてきて触れたことのない遊びはたくさんあるし、手を出してみると面白いと、そんな話でしたということでひとつ。あっ、あと2回目の描け麻雀の負債はまだ描いてないッスけどこの原稿納品したらやるんで……へへほんとトボけてるわけじゃないんで。すぐやるんで。勘弁してくださいッスへへ……。またよろしくお願いしやッス。ウッス。


マシーナリーとも子 勝負に負けて得るものもある。あるんだって。というわけでみなさん『むこうぶち』を読みましょう……。4巻「付け馬」より

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