「となりのトトロ」のカンタのおばあさんは税法に明るい? 映画の世界に「税金があったら」を妄想してみました
映画の場面写真とともに考えてみました。
映画を見ているとよく出てくる、お金にまつわるやりとり。フィクションの世界にも、現代の日本と同じような税制があったら? と考えると、映画の見え方が一気に変わるかもしれません。
今回は、映画「となりのトトロ」から、「ジブリの世界に税金があったら?」を元国税局員のさんきゅう倉田と想像していきましょう。
さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて東京国税局に入庁。法人税の調査などを行ったのち同退職、芸人となる。芸人活動の傍ら、執筆や講演で生計を立てる。好きな言葉は「増税」。公式サイト、Twitter
映画にはどんな「お金の動き」が隠れている?
子どもの無邪気な姿や、彼女たちが迷い込んだ不思議な世界が印象的な「となりのトトロ」。ぼくはテレビ放映に合わせて、毎回「となりのトトロで起きているかもしれない税法上の取扱い」を考えてツイートしています。慣れ親しんだアニメ作品を通して、難解な「税金」に興味を持ってもらえたらうれしく思います。
カンタのおばあさんは賢く節税している?
メイとサツキとお父さんが引っ越しをして、近所に住むカンタのおばあさんに、いかにも減価償却が終わっていそうな木造の物件を案内してもらうシーンです。
このおばあさんは、この家にかかる不動産所得と農業による事業所得を得ています。すると、損益通算ができるので、どちらかが赤字の場合は所得税を圧縮できるのです。これからは、ただのおばあさんではなく、税法に通じたかなりやり手の女性と見るべきでしょう。
お父さんが「お花屋さん」を開業するには?
メイがお花をたくさん摘んできて、お父さんの仕事机に並べるほほえましいシーン。「お父さんはお花屋さんね」というセリフもかわいらしいですね。
この綺麗な花を、もし本当に「お花屋さん」として販売するとどうなるのでしょうか。事業を開始する場合は、開業届などを税務署に提出する必要があります。翌年の確定申告は、白色申告と青色申告が選べますが、「欠損金の繰越控除」などの4つの特典がある青色申告を行う場合には、事前の申請が必要です。こちらも開業時に申請しましょう。
なお、お花屋さんとして法人を設立する場合は、法務局で費用を払い「登記」を行わなければいけません。
トトロたちが会社を作っていたら?
小トトロと中トトロがどんぐりを集めているところを見たメイが、彼ら(?)を追いかけて森に入っていくシーンです。
トトロたちは、どんぐりを集めて販売しているんでしょうか。仕入原価が低くて良いですね。実は、2匹(?)とも、大トトロが代表取締役を務める法人の従業員かもしれません。
どんぐりを集め終わって会社に戻ると、大トトロは寝ていました。従業員が働いている間に社長が寝ているとしたら、とてもよい会社ですね。社長はお飾りで、従業員が事業を回していれば、社長に何かあっても安心です。後継者選びにも困らないでしょう。
トトロがくれた小包は「贈与」?「一時所得」?
お父さんをバスで迎えに行くために、メイとサツキが雨の中バス停に佇んでいると、トトロがやってきました。彼らもバスに乗るんですね。優しいサツキは、傘を持っていなかったトトロに傘を渡してあげました。
すると、トトロは二人に小さな包みを渡します。反対給付でしょうか。単純に贈与したともとれます。このあたりは判断が難しいところですが、トトロ個人の資産を渡したのなら「贈与」だし、トトロが代表取締役を務める法人の資産を渡したのなら、「一時所得」になります。なお、贈与税の控除額は年間110万円で、一時所得は50万円です。
トトロがもしどんぐりの販売会社をやっているとすると、これは「広告宣伝費」に当たるでしょうか。包みの中には、どんぐりをはじめとした木の実が入っていて、庭に植えて踊ると、たちまち大木になりました。これは、実はただのどんぐりではなく、特別な力がある貴重なものなのかもしれません。
日ごろから税金に親しもう
税金やお金の制度はとても複雑だし、曖昧な部分も多くあります。ぼくが子どもの頃は、子どもがお金の話をするのはタブーだったように感じます。
でも、そのまま何も勉強せずに大人になると、とても困ることになる。アニメなどを入り口に、子どものうちから税金やお金に慣れ親しんでもらいたいと思います。
画像出典:スタジオジブリ
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