ニュース
» 2020年12月14日 20時00分 公開

“ペリーの人”宮崎吐夢に聞く「Flashの時代」 流行当時は「ちょっと複雑な気持ち」、でも今は――

ペリーFlashの流行を、“本家”宮崎吐夢さんはどう見ていた?

[池谷勇人,ねとらぼ]

 2020年12月をもってサポート終了となる「Adobe Flash」。これを振り返る、サントリー「CRAFT BOSS」のスペシャルムービー「クラフトボス『Flash Back Memories』」特設サイト)が12月10日に公開されました。



 「ゴノレゴ」「ペリーのお願い」「人生オワタの大冒険」など、懐かしのFlash作品が次々登場する同CMですが、実は俳優・ミュージシャンの宮崎吐夢さん@miyazakitomu)がナレーションを担当している点も見どころの一つ。「ペリーのお願い」をはじめ、「バスト占いのうた」「ここがあの女のハウスね」など、数々の人気Flashの元ネタとして知られる宮崎さんは、当時のFlashムーブメントをどのように見ていたのか。ナレーション収録直後の宮崎さんに、当時の心境や、思い出深かったエピソードなどをうかがいました。

(取材・文:池谷勇人)


宮崎吐夢さん Flashインタビュー ペリーがうさんくさい日本語で開国を嘆願する「ペリーのお願い」は、2000年代のインターネットユーザーなら一度は耳にしたことがあるのでは

※取材はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策を十分に講じたうえで行っています


複雑な思いもあった「ペリーFlash」

―― ナレーションを収録されてみて、いかがでしたか?

宮崎:収録前は特に気負いもなかったんですけど、CM映像を拝見したらあまりにも感動的で。特に最後のSpecial Thanksの「Flashを愛する、すべての人たち」というメッセージでうるっときてしまいました。「これは……責任重大だぞ」と急に意気込んでナレーションしたら力んでしまったのか、「もうちょっとトーンを落としてください」と言われました(笑)。


宮崎吐夢さん Flashインタビュー 宮崎吐夢さん。1992年より大人計画に参加。俳優・ミュージシャン・作家など幅広く活躍する傍ら、1990年代後半には雑誌『TECH Win』の付録CD-ROM内「さるやまハゲの助アワー」で、音声・映像を組み合わせたネタ作品を多数発表。「ペリーのお願い」などいくつかの作品は後にFlash化され、インターネット上で人気を博した。オリジナル作品は、CD「宮崎吐夢記念館」、DVD「今夜で店じまい」シリーズ(全3巻)などにまとめられている。最近の主な出演作は、映画「凪待ち」(2019)、「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(2018)など。舞台「ピーター&ザ・スターキャッチャー」(新国立劇場)に出演中。

宮崎吐夢さん Flashインタビュー CM映像より。Special Thanksの最後に「Flashを愛する、すべての人たち」の表記

―― 宮崎さんといえば「ペリーのお願い」が有名ですが、もともとは雑誌「TECH Win」の付録CDに収録されていたんですよね。あの作品がFlashで盛り上がっていたのを、宮崎さんはどのように見ていましたか。

宮崎:2000年くらいでしたでしょうか。最初は2ちゃんねるで話題になっていると聞きました。そのころPCを所有していなかったので割と他人ごとだったのですが、僕の音源にいろんな画像がつけられて盛り上がっているのを見たときは、ちょっと複雑な気持ちでした。

―― 複雑ですか。


宮崎吐夢さん Flashインタビュー ネタに限らず、自分のDVDや出演作品なども見返さないという宮崎さん

宮崎:ネットで流行った僕がらみのFlashの中には、個人的に正直あまり好みではないセンスの画像や不正確な字幕がかぶせてあったり、「ペリーのお願い」とは関係のない「バスト占いのうた」や「ピアノレッスン」などにも「ペリー」のタイトルや画像を付けたりしているものが含まれていました。それを見たという人から「吐夢さんのペリー見てました」と言われるたびに、いちいちモヤっとした記憶があります。

―― 確かに、ちょっとふざけた字幕を付けていたものもありました。

宮崎:もちろんイヤな気持ちだけでなく、うれしくもあったんですよ。21歳のとき劇団に入って、20代半ばごろから一人の舞台でネタを作るようになって。そのとき細々とやってたのと同じようなことを映像のコンテンツにしてみたら、すぐに広まって反応があったと知って。「自分の作ったものはネットだとこんなに広がるんだ」という驚きもありました。

―― いまさらですが、あれは当然、宮崎さんには無許諾で使われていたんですよね……?

宮崎:はい。もちろんクレジットもないですし、Flashを作られた一人の方のホームページには「ペリーといえば自分だ」的な文言が掲げられていて。まあ今はどうかわからないんですけど、20年前は特に黎明期ということもあり、無法地帯的なところもありました。それにいちいち目くじら立てるというのも違うのかなとも思っていたのですが、あるラジオ番組でペリーの音源がずっと無許可で使われていて、番組から生まれた「黒船」という洋楽コンピレーションのCDが大手レコード会社から2枚同時でリリースされているのを知ったときは、さすがにこれはちょっとまずいなと。

※TOKYO FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」での出来事。番組内や番組から生まれた洋楽コンピレーションCDでペリーの音源が無断使用されており、最終的には番組内で謝罪し、CDは廃盤となった

―― そんなこともあったんですね……。少し話が戻りますが、そもそも宮崎さんが「TECH Win」の付録CDに関わりはじめたのはどういう経緯だったのでしょう。

宮崎:あれは、しりあがり寿さん監修の「さるやまハゲの助アワー」という毎月10本くらいの動画コンテンツが載っているプログラムだったんですが、当時しりあがりさんの事務所に出入りしていた友人の河井克夫さんから誘われました。僕が一人でネタとか作っているのを見て、「何かやりませんか」と。

―― 河井克夫さん、「今夜で店じまい」などを一緒に手掛けられていましたね。



宮崎:そうですそうです。河井克夫さんは僕にとって恩人で感謝しかないです。絵も描けるし音楽も作れるし僕が書いたネタや歌詞をイチから一緒に形にしてくれて。河井さんがいなければ本当に何も生まれてなかったです。あと、もう一人。「さるやまハゲの助アワー」のときは、TECH Win編集部に鳥羽ジャングルさんという音楽面で天才的に有能な編集者さんがいて。「あの女のハウス」や「僕の姉ちゃんがAVに」ほか、いろんな曲の音源を作っていただきました。

―― 当時はまだFlashはなかったですよね?

宮崎:なかったかどうかすらわからないです(笑)。僕はそういうネット文化とは無関係に、手書きでネタや歌詞を書いて、それをスタジオで読んだり歌ったりして収録してました。


詠み人知らずでも、Flash文化に関われてよかった

―― 宮崎さんの作品といえば他にも「バスト占いのうた」などがネットでは有名です。他の作品の流行についてはどのように見ていましたか。

宮崎:「バスト占いのうた」は、ちゃんとオリジナルの河井さんのイラストも広まったようなので、「ペリーのお願い」よりはありがたかったですね。カラオケにも入っているので、印税も毎月わずかながら入ってきます(笑)。

―― 「ここがあの女のハウスね」がきっかけで「WHITE ALBUM2」のアニメにも声優として出演したりしていましたよね。

※「ここがあの女のハウスね」の音源と、ゲーム「WHITE ALBUM」のキャラクターを組み合わせたFlashが流行。これがきっかけで、アニメ版「WHITE ALBUM2」に宮崎吐夢さんが出演したことがあった

宮崎:僕、アニメやゲームにまったく詳しくなくて。「WHITE ALBUM」さんにも特に思い入れもなく、普通に声優仕事として受けたという感じでした(苦笑)。


宮崎吐夢さん Flashインタビュー 「ここがあの女のハウスね」の流行についてはあまり実感がなかったとのこと

―― 逆に思い出に残っているエピソードなどはありますか。

宮崎:ペリー絡みでうれしかったことが2つありまして、1つはガラスの仮面ペリー来航というFlash。『ガラスの仮面』の主人公がオーディションを受けるシーンで「ペリーのお願い」をやるというFlashなんですけど、あれはセンスが溢れていて非常に面白かったし、北島マヤさんの口から僕の声が流れたことに感動しました。「ペリー」関連ではそのFlashがダントツで好きでしたね。

―― もう1つは?

宮崎:ブルボンヌさんという有名なドラァグクイーンの方が、「ペリーのお願い」の音源に合わせて「リップシンク(口パク)」のパフォーマンスをやってくださっていたんです。僕は確かブログか何かで知って見に行ったんですけど、それはもう芸としてきちんと面白かったし、お客さんにも大ウケで。当時(2000年ごろ)新宿3丁目の飲み屋に週に1回入られていたので、飲みに行きがてらご挨拶させていただいたんですが、お互い恐縮してしまって(笑)。その後ずいぶんたってから僕の出演した舞台を観に来てくれて、久々に再開したこともありましたね。

―― いい話ですね……。Flashがきっかけで仕事につながったりしたことなどはありましたか。

宮崎:2002年、白元(現在の白元アース)の蚊取り線香のCMでペリーのキャラクターに声をあてるという、割とそのままのお仕事がきました。そのあとすぐ「パワーエイド」という、コカ・コーラが販売しているスポーツドリンクのWeb CMの声をやったり。外国なまりのある日本語の声の仕事は結構いっぱいやってますね。「ZIP!」の「おはよう忍者隊ガッチャマン」のアンダーソン長官とか、「炎の宅配便」のジャーク・ニックとか。もうすぐには思い出せないくらい、たくさんやらせていただいてます。

―― 「塊魂」シリーズの王様も演じられていましたよね。

宮崎:ああ、はいはい。確かシリーズ2作目を作るとき、王様の声とエンディングテーマを両方やってほしいと(※)。他に楽曲で参加していた人たちも豪華で、あれはうれしかったです。歌詞の「やりすぎはよくないけど――」あたりは「バスト占いのうた」の歌詞をもじっていただいて、今でも「塊魂のファンです」と言っていただく機会は多いです

※王様に声がついたのは2作目「みんな大好き塊魂」から。宮崎吐夢さんは最終ステージのBGM「キングオブキングのうた」も担当



―― ……! 言われてみれば、「でかけりゃいいってもんじゃないけど――」のあたりはそのままです。声や歌い方について、ナムコ(現バンダイナムコゲームス)側から何かオーダーはあったりしましたか?

宮崎:特にオーダーとか制約はなかったと思います。もうすべておまかせな感じで。

―― 最後に、宮崎さんから見た「Flash文化」とはどのようなものでしたか?

宮崎:僕がPCを買ったのが2003年だったので、Flash文化には接していなかったんですよね。当時もう30代だったし、そういうのを積極的に摂取する世代でもなかったというか。きっと僕がまだ見ていない面白いものはあるはずなんですけど、今どきの人気YouTuberの魅力を年長者があまり理解できないように、年齢的なターゲットからちょっと外れてしまっていたんだと思います。

―― あまり積極的に触れてこなかったというのは意外でした。

宮崎:ただ、今回のCMのナレーションをやらせていただいたことで、過去のもやもやが帳消しになったというか、浄化された気分です。松任谷由実さんが以前、自分の歌は「詠み人知らずとして残っていってほしい」みたいなことをおっしゃっていて。それを聞いたとき「売れて地位も名声も築いていらっしゃるから、そんな余裕のあることが言えるんじゃないですか」と思ったりもしたんですが(笑)。今日はほんのちょっとだけユーミンの気持ちになれました。僕の名前なんかまったく知らずとも「ペリー」を詠み人知らずとして楽しんでいただいた人が、CM制作のみなさんをはじめ、こんなにいてくださったなんて。僕ごときの過去に細々とやってきたことにも、わずかながら意味があったと思えた瞬間でした。Flashの世界にほんの少しでも関われて本当によかった。今は心からそう思います。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2201/16/news037.jpg 勝手に「サービス終了ゲーム総選挙」をやったら6700票も集まってしまったので結果を発表します 2位の「ディバインゲート」を抑えて1位に輝いたのは……
  2. /nl/articles/2201/15/news049.jpg 宮崎駿愛用の「電動消しゴム」が故障 → サクラクレパス公式が倉庫の奥から発掘 Twitterが繋いだ温かな展開が話題に
  3. /nl/articles/2201/14/news024.jpg ママとの散歩中、田んぼにポチャンした柴犬さんが帰宅後…… パパに一生懸命アクシデントを報告する姿がいとおしい
  4. /nl/articles/2201/15/news053.jpg 「こんないいものがあるんですね!」 吉川ひなの、第3子次女の“ベビーヘルメット使用”明かし反響
  5. /nl/articles/2201/16/news007.jpg 子猫「パパー!」父猫「よーしよし」 甘えにきた子猫をギュッと抱きしめる父猫が愛情たっぷりでほほえましい
  6. /nl/articles/2201/16/news034.jpg ビーズソファ「サイズミスって家が埋まった」 ヨギボーで家がギューギューになった光景に「笑い止まらない」「合成かと思ったw」
  7. /nl/articles/2201/16/news027.jpg 「お綺麗すぎる」「ママそっくり」 倖田來未&misono、テレビ初歌唱で称賛の母親と“歌姫3ショット”公開
  8. /nl/articles/2201/16/news032.jpg 「受けて立ちます」 トヨタ・豊田章男社長の「Zには負けませんから」無茶振りに応える各メーカーの反応をまとめた動画が話題に
  9. /nl/articles/2201/16/news029.jpg 宮里藍、0歳娘を見つめる“ママ姿”が幸せいっぱい 初めての親子ショットに「ママの表情」「なんか泣けてくる」
  10. /nl/articles/2201/16/news016.jpg 「ルールを破れば容赦しない」 いじめを絶対に許さない先生の漫画に「こんな先生に出会いたかった」の声

先週の総合アクセスTOP10

  1. 東原亜希、高身長の“BIG長女”に「そういえば君はまだ小学生だったのか」 父・井上康生との2ショットに驚きの声
  2. 人気女優の顔じゃない! 川口春奈、ほぼ瀕死のグロッキー状態に心配の声「完全に目がいってます」
  3. 榎本加奈子さん、大魔神・佐々木主浩と“縁起がよすぎる”夫婦ショット 「10代20代と全然変わらない」と美貌に注目も
  4. 村田充、元妻・神田沙也加さんの愛犬を引き取り新生活 “トイレ初成功”で喜びあふれる「おおおおおお!」
  5. TBS「ジョブチューン」炎上で無関係なシェフへの中傷相次ぐ 代表「何年もかけて築いた評価が一瞬で崩壊した」
  6. 渡辺満里奈、新しい“家族”が空へ旅立ち 早すぎる別れに夫・名倉潤も「聞いたことのない声を上げて泣きました」
  7. 「千と千尋の神隠し」地上波放送でジブリ公式が視聴者の疑問に答える神企画再び 「千尋はどうやって最後お父さんとお母さんを見分けたのですか?」
  8. 「鬼滅の有吉?」「コスプレかと!」 有吉弘行、『鬼滅の刃』炭治郎になった“奇跡の1枚”に反響
  9. 水野真紀、30年前の“振袖姿”が絶世の美女 「正真正銘のキレイなお姉さん」「本当に美しい」とファンほれぼれ
  10. 「もうひとつ、ご報告」神田沙也加、父・神田正輝に新たな家族を抱っこしてもらう

先月の総合アクセスTOP10

  1. 「どん兵衛」新CMに星野源が復活も衝撃の新展開 “どんぎつね”吉岡里帆の正体明かされ「完全なホラー案件」「狂気を感じる」
  2. ハラミちゃん、“公称145センチ”も本当の身長にゴチメンバー驚き 「デカイっていわれるのが嫌になっちゃって……」
  3. 西川史子、退院を報告 「生きていて良かったと思っていない」と告白も、力強い現在の心境明かす「私は医師です」
  4. 「もうアヒル口」「美人確定ですね!」 板野友美、生後2カ月娘の“顔出しショット”にみんなメロメロ
  5. 「気ぃ狂いそう」 木下優樹菜、生配信中止で“涙のおわび動画” やらかしたスタッフに「生きてたらミスぐらいする」
  6. 東大王・鈴木光、“お別れの笑顔”で司法試験合格を報告「本当にありがとうございました」 SNS閉鎖に涙のエール続々
  7. 「こんな普通に現れるの?!」「バレそうで心配」 倖田來未、駅のホームに“普通に並ぶ”姿にファン驚き
  8. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」「どストレートに餅で笑った」と称賛集まる
  9. 第1子妊娠のすみれ、母・松原千明と2年ぶりに涙の再会 「やっとママに会えました」と感動的な親子ショット公開
  10. 渡辺裕之、66歳バースデーで息子と2ショット 合同誕生日会に「すごいお料理とケーキ」「イケメン息子さん」