「男性の老人キャラはいい役が多い」 60歳でコスプレデビューした“亀仙人”から学ぶ、いつまでも趣味と人生を楽しむ方法:オタクの老後(2/2 ページ)
男性の老人キャラクターにはいい役が多い
河口さんによると、「高齢男性によるコスプレ」のメリットとして、「男性キャラクターの場合は年寄りでもコスプレできるキャラクターが多い」という点があるといいます。
「男で老人キャラって、けっこう実力者だったりとか、いい役が多いんですよ。反対に、おばあさんのキャラクターってあんまりパッと思い浮かばない。あと、じいさんのコスプレイヤーってモテるんですよ(笑)。白内障の手術をしたら、看護師さんから『亀仙人様ですか?』って聞かれて、話を聞いてみたら『時々コスカレード行ってます』と。若い女性からだけでなく、老若男女問わず広くモテる。それがエネルギーになるし、もうモテるためにコスプレしてるって書いてもらっていいです(笑)」(河口さん)
コスプレするキャラクターについても、選んでいるのは河口さん自身。どのキャラクターを選ぶかは、河口さんがコスカレードで担当している“会場選び”とも関係があるとか。
「キャラクターは会場に合わせて選んでます。例えば海上自衛隊の小月航空基地でのコスプレイベントに参加したときは『マクロスF』のキャラクターがいいかな……とか。その時々のコスプレ会場に適したタイトルの中から、自分に年格好が近いキャラをやってますね。3年を過ぎたあたりから『どういう会場にどういうキャラを合わせたらいいか』が自分でも分かるようになってきました。あとは、子どもが多い会場なら誰も知ってる亀仙人か、『ワンピース』のブルックですね」(河口さん)
また、河口さんのコスプレによって広がったのが、協力してくれる自治体や企業の幅。海外だろうと日本だろうと、河口さんは会った人全員に「亀仙人の河口です」と言って名刺を渡し、「ここでコスプレイベントを開催できないか」という相談があれば、どこにでも出かけて誰とでも会っているといいます。この行動力と顔の広さで、他のコスプレイベントよりもぐっと“開けた”形のイベントを作り上げてきました。
「町おこしが目的ということで広島県も広島市も協力してくれていますが、コスカレード実行委員会としては補助金などはもらっていません。運営予算はイベント参加費と私の小遣いでやりくりしていて、協賛金や広告を取るというプレッシャーがないんですよね。市や県との交渉にしても、自分は年寄りだから若者がいきなり行くよりも信頼を得やすいし、割と何でもうまくいく。普段から顔を出して『亀仙人の河口です』といって活動していると、メリットもたくさんあります」
では、逆にデメリットはないのでしょうか?
「自分が恥ずかしくなかったら、もう全然ないっていっていいと思いますよ。自分は本名を出して、こういう取材をしていただいたときにもそのまんま出てますから。そうすると自治体の人にも話が早いし、いろんなところでPRすればまたみんな来てくれる。基本的にコスプレしてるのは若い子ばっかりだから、じいさんってだけで注目されるし、もういいことしかないと思います」(河口さん)
「恥ずかしいと思ったらそこで終わり。堂々としていればいいんですよ」
コスプレ以外でも、河口さんは今後、お年寄り向けのスマホ講座や、主婦向けにメルカリやminneなどを活用する講座などを考えているといいます。このバイタリティーは、一体どこから出てくるのでしょうか。
「僕はいろいろやってますけど、一つも誰かのためにやっていることがないんです。全部自分のためにやっている(笑)。人のためにコスプレイベントをやろうとすると、一生懸命やっているのに反応がないとか、どうしても人のせいにしたり不満が出てきたりしますよね。でも、自分のためにやっていたらそれは全部自分に跳ね返ってくるから、人のせいにできない。年を食ってからのことだし、いい意味での利己主義を押し通した方がいいと思ってるんです」(河口さん)
「僕はいまだに自分が70歳だとあんまり思っていなくて、高校時代くらいの気持ちでいるんですよ。年を取ったら年相応に老けこまないといけない、という決まりもないですから(笑)。恥ずかしいと思ったらそこで終わり。新しいものにトライして、そこでどんどんいろんなことを吸収しようと思っています。堂々としていればいいんですよ」(河口さん)
自分自身も年齢を生かしたコスプレを楽しみつつ、外部との折衝では自らの年齢と経験を役立てて交渉役も務め、年齢も国籍も違う人々と一緒に文化を盛り上げることに貢献する……。自身の強みをうまく使って新しい趣味を楽しむ河口さんのスタンスは、単にコスプレという枠にとどまらず、年をとってからも趣味を満喫し続ける一つの方法を教えてくれているようです。
いい意味での利己主義と、新しいものに物怖じしない気持ちがあれば、いくつになっても趣味と人生を楽しむことは可能――。70歳でも生き生きとコスプレを続ける“亀仙人”の姿からは、そんなノウハウを学ぶことができそうです。
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