「男性の老人キャラはいい役が多い」 60歳でコスプレデビューした“亀仙人”から学ぶ、いつまでも趣味と人生を楽しむ方法オタクの老後(2/2 ページ)

» 2021年03月27日 17時00分 公開
[しげるねとらぼ]
前のページへ 1|2       

男性の老人キャラクターにはいい役が多い

 河口さんによると、「高齢男性によるコスプレ」のメリットとして、「男性キャラクターの場合は年寄りでもコスプレできるキャラクターが多い」という点があるといいます。

「男で老人キャラって、けっこう実力者だったりとか、いい役が多いんですよ。反対に、おばあさんのキャラクターってあんまりパッと思い浮かばない。あと、じいさんのコスプレイヤーってモテるんですよ(笑)。白内障の手術をしたら、看護師さんから『亀仙人様ですか?』って聞かれて、話を聞いてみたら『時々コスカレード行ってます』と。若い女性からだけでなく、老若男女問わず広くモテる。それがエネルギーになるし、もうモテるためにコスプレしてるって書いてもらっていいです(笑)」(河口さん)


オタクの老後 コスプレイヤー 『BLEACH』の山本元柳斎重國

 コスプレするキャラクターについても、選んでいるのは河口さん自身。どのキャラクターを選ぶかは、河口さんがコスカレードで担当している“会場選び”とも関係があるとか。

「キャラクターは会場に合わせて選んでます。例えば海上自衛隊の小月航空基地でのコスプレイベントに参加したときは『マクロスF』のキャラクターがいいかな……とか。その時々のコスプレ会場に適したタイトルの中から、自分に年格好が近いキャラをやってますね。3年を過ぎたあたりから『どういう会場にどういうキャラを合わせたらいいか』が自分でも分かるようになってきました。あとは、子どもが多い会場なら誰も知ってる亀仙人か、『ワンピース』のブルックですね」(河口さん)


オタクの老後 コスプレイヤー 海上自衛隊小月航空基地で撮影した、「マクロスF」のオズマ・リー

 また、河口さんのコスプレによって広がったのが、協力してくれる自治体や企業の幅。海外だろうと日本だろうと、河口さんは会った人全員に「亀仙人の河口です」と言って名刺を渡し、「ここでコスプレイベントを開催できないか」という相談があれば、どこにでも出かけて誰とでも会っているといいます。この行動力と顔の広さで、他のコスプレイベントよりもぐっと“開けた”形のイベントを作り上げてきました。

「町おこしが目的ということで広島県も広島市も協力してくれていますが、コスカレード実行委員会としては補助金などはもらっていません。運営予算はイベント参加費と私の小遣いでやりくりしていて、協賛金や広告を取るというプレッシャーがないんですよね。市や県との交渉にしても、自分は年寄りだから若者がいきなり行くよりも信頼を得やすいし、割と何でもうまくいく。普段から顔を出して『亀仙人の河口です』といって活動していると、メリットもたくさんあります」

 では、逆にデメリットはないのでしょうか?

「自分が恥ずかしくなかったら、もう全然ないっていっていいと思いますよ。自分は本名を出して、こういう取材をしていただいたときにもそのまんま出てますから。そうすると自治体の人にも話が早いし、いろんなところでPRすればまたみんな来てくれる。基本的にコスプレしてるのは若い子ばっかりだから、じいさんってだけで注目されるし、もういいことしかないと思います」(河口さん)


「恥ずかしいと思ったらそこで終わり。堂々としていればいいんですよ」

 コスプレ以外でも、河口さんは今後、お年寄り向けのスマホ講座や、主婦向けにメルカリやminneなどを活用する講座などを考えているといいます。このバイタリティーは、一体どこから出てくるのでしょうか。

「僕はいろいろやってますけど、一つも誰かのためにやっていることがないんです。全部自分のためにやっている(笑)。人のためにコスプレイベントをやろうとすると、一生懸命やっているのに反応がないとか、どうしても人のせいにしたり不満が出てきたりしますよね。でも、自分のためにやっていたらそれは全部自分に跳ね返ってくるから、人のせいにできない。年を食ってからのことだし、いい意味での利己主義を押し通した方がいいと思ってるんです」(河口さん)

「僕はいまだに自分が70歳だとあんまり思っていなくて、高校時代くらいの気持ちでいるんですよ。年を取ったら年相応に老けこまないといけない、という決まりもないですから(笑)。恥ずかしいと思ったらそこで終わり。新しいものにトライして、そこでどんどんいろんなことを吸収しようと思っています。堂々としていればいいんですよ」(河口さん)


オタクの老後 コスプレイヤー 「堂々としていればいいんですよ」と語る河口さん

 自分自身も年齢を生かしたコスプレを楽しみつつ、外部との折衝では自らの年齢と経験を役立てて交渉役も務め、年齢も国籍も違う人々と一緒に文化を盛り上げることに貢献する……。自身の強みをうまく使って新しい趣味を楽しむ河口さんのスタンスは、単にコスプレという枠にとどまらず、年をとってからも趣味を満喫し続ける一つの方法を教えてくれているようです。

 いい意味での利己主義と、新しいものに物怖じしない気持ちがあれば、いくつになっても趣味と人生を楽しむことは可能――。70歳でも生き生きとコスプレを続ける“亀仙人”の姿からは、そんなノウハウを学ぶことができそうです。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2408/31/news036.jpg 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほどの変貌が379万表示「そこだけボッ!ってw」 半年後の現在について聞いた
  2. /nl/articles/2408/30/news121.jpg 「地獄絵図」「えぐすぎやろ……」 静岡・焼津市の地下歩道が冠水 “信じられない光景”にネットあぜん
  3. /nl/articles/2408/31/news073.jpg 「よくこんなものが……」 米不足でメルカリに米出品→疑問の声も 運営は“禁止出品物”に「然るべき対応」
  4. /nl/articles/2408/31/news025.jpg 次男に塩対応の柴犬、いよいよ次男の帰省最終日を迎え…… 本音が出た瞬間に「不意に泣かせるのやめて欲しい」と感動の声
  5. /nl/articles/2408/30/news017.jpg 最上位グレードのハイエースを“50万円の底値”で購入したら…… 驚きの実物に「ある意味最強」「正直、羨ましい」
  6. /nl/articles/2408/30/news188.jpg 実写「着せ恋」、キャストに物議 海夢の再現度が高すぎるタレントを推す声あがる 「逆になんであかせあかりさん以外の人……」
  7. /nl/articles/2408/29/news193.jpg 「なんで欲しいと思ったんですか?」 酔った勢いで購入 → 後日届いた“まさかの商品”に反響 「理性あったら買わないw」
  8. /nl/articles/2408/28/news142.jpg 明石家さんま、69歳バースデー迎え長男から幸せ呼ぶ“輝かしいプレゼント” 同席した元妻・大竹しのぶは「最高の笑顔でした」
  9. /nl/articles/2408/31/news084.jpg 仕事早いな! 大谷翔平の愛犬“デコピン”、大反響の始球式がさっそくTシャツ化 「こ、これは……」「欲しい!」と爆売れの予感
  10. /nl/articles/2408/30/news113.jpg 「これ600円なの?」 大谷翔平が長く愛用しているデコピンの“おやつ入れ”、始球式で注目「おそろだった」「真美子さんが選んだのかな」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  2. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  3. 「苦手な芸能人は誰?」 あのちゃん、女性芸能人を“実名で即答” 「ここ最近で一番笑った」「強すぎる」
  4. ホテルでチェックアウト、忘れ物で多いのは? ホテル従業員が教える「圧倒的に多い忘れ物」
  5. 乳がん闘病中の梅宮アンナ、抗がん剤治療で「髪の毛ほとんどなくなっています」 帽子かぶり「ああ、来たか」
  6. 「キティちゃんのお面だと思ったら……」 ひっくり返すと“まさかの正体”に11万いいね
  7. 「凄すぎる…」「ガチで滝」 “市ケ谷駅の冠水”が衝撃与える 階段に大量の水が流れる様子も…… 東京メトロに経緯を取材
  8. 「早すぎます」「一体なにが」 52歳ボディービルダー、訃報1週間前に最期の投稿で“人生初の試み” 恋人は「亡くなる数時間前まで普通にお出かけも」
  9. お盆で帰省した次男に、柴犬も猫もまさかの反応→どちらも豹変して爆笑 「涙出てきました」「おもろ可愛過ぎ(笑)」
  10. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」