「キネマの神様」菅田将暉が明かす、志村けんさんとの別れを乗り越え生まれた“使命感” 「何としてもやり切って公開を」(2/2 ページ)
ゴウを演じる上で参考にした「感情」
―― 菅田さんが演じた「過去のゴウ」は大きな才能を持ちながら、夢破れて映画とは別の人生を歩みます。非常に複雑な役柄ですが、演じる上で最も参考にしたことは?
菅田 山田監督が話してくれた中で、「現場で昔一緒だった助監督の方」が心に残っていて。ゴウのように才能豊かで、面白い発想を持っていて、周囲も期待していた方でしたが、女性やお金のことを巡って結局現場を去っていったようです。
うかがったエピソード自体がそのまま本作に通じますけど、かつての同僚を語る山田監督の表情が印象的で。才能がとうとう形にならなかった“さみしさ”と、「アイツはやっぱりそうなってしまうのか」という“諦め”が両方にじんだ顔をされていて、僕は自分なりに「周りの人が山田監督と同じ顔になってくれてたらいいのかな」と受け止めて演じていました。
―― 特にこだわった点についてはいかがですか?
菅田 まず助監督然とするところでしょうね。僕らが映画作りの中で一番接する人なので、「誰が現場で助監督だろう?」というのは一番気になるし、指名させていただくことも多々あります。
山田監督と助監督という仕事について話したり、カチンコの鳴らし方も教わったりしました。当時のカチンコって、「フィルムがもったいない」って怒られるから、コンマ何秒の間にできるだけ早く鳴らすんだということを聞いたり。
一番気を付けたのは、あの時代特有の空気感。山田監督から小津安二郎などの資料をいっぱいいただいたので、当時の写真をずっと眺めたり、「東京物語」を見たりして現場に入りました。
野田さんとの「うたかた歌」は新しいスタートライン
―― 本作のエンドロールでは、菅田さんと野田さんによる主題歌「うたかた歌」が流れます。どのようないきさつで生まれたコラボですか?
菅田 俳優の立場としては、「自分が出演する映画のエンドロールを自分で歌う」のは違和感があってとても落ち着かなくなります。作品からいったん離れたところで、自分の歌声が急に聞こえるというのは抵抗感を常に覚えるので、なるべくやらないようにしてるんです。でも、今回のケースはすごく不思議で。
ゴウの過去パートを撮り終わった矢先、志村さんの逝去を経験して、現場がコロナ禍でストップしたタイミングで、野田さんが「『今回ご一緒できてありがとうございました』っていう気持ちを込めて1曲できたんで、どうか聞いてください」と、この曲を送ってくれたんです。
―― 送られた曲を耳にして最初どんな感想を抱きましたか?
菅田 1番の部分しかなかったんですが、もう本当にすてきな曲だなって感じました。「お手紙」として曲を作るなんて野田さんにしかできないことで、僕は1人のリスナーとしてただただ感動して、「こちらこそありがとうございました!」という思いでいっぱいでした。
「いつか歌いたいなぁ」という思いも確かにありましたが、野田さんと歌うことになったときはやっぱり驚きましたね。でも今思えば、みんなが「映画がどうなるか分からない」「撮影がこのままできるかどうかも分からない」と精神的に停滞していた中、野田さんが「うたかた歌」を届けてくれたことによって、「キネマの神様」がまた動き出した感じがします。本作と同じように、人と人とのつながりで作品が動いていくように思えたんです。
―― お話を聞いていると、「キネマの神様」は一度大きな“喪失”を経て、新しく“再生”したというイメージに受け取れます。
菅田 そうですね。「うたかた歌」が僕の中では“再生”の基盤です。野田さんの中でも、撮影現場の出来事がこのままだとなかったことになっちゃうという怖さがあって。その思いが結構曲に込められているように感じて、「そうですよね」という気持ちになったところが僕にとってのスタートラインになりました。
―― 曲のどの部分に、“再生”の意思を強く感じましたか?
菅田 曲冒頭の「夢中になってのめり込んだものがそういやあったよな」から撮影現場を思い出して、続くサビ部分の「悔やむにはどうやら命は短すぎて」で命の話へと展開する部分では、どうしたって志村さんのことを考えます。また、ゴウのことも思い浮かべたのでそのあたりです。
完成作品の鑑賞後に「自分が歌ってたんだ……」「ああ、よかったな」って安心しました。本編ともなじんでいて、ちゃんと「ゴウの歌」に違和感なく聞こえたからよかったですよ。
抱いていたのは「何としてでも公開を」という使命感
―― 「キネマの神様」は多くの困難を経て完成しました。クランクインからクランクアップまでに、作品へ向かう姿勢や意味付けはどう変わりましたか?
菅田 どれだけ大変な現場でも「なんだかんだいっても終わらないことはないよね」「最後には撮りきれるよな」というムードなんですけど、今回は本当に止まらざるを得ない、みんな何もできないという状況。志村さんと一緒に映画製作を経て、コミュニケーションを取って思い出ができるであろう未来がなくなったっていう喪失感もあって、どう悲しんでいいかも分からない。
そこから山田監督はじめ、僕らチームは諦めることなく、映画をちゃんとお客さんに見てもらおうっていうパワーで動いて。「何としてでもやり切って公開しよう」「考えるのはその後」みたいな使命感で動くようになっていたかもしれないですね。
―― 「キネマの神様」からは、全編通して映画の生命力を、そこに一生をかけた人間の存在を感じました。菅田さんは今後どんな俳優人生を目指していますか?
菅田 その場その場の出会いやタイミングで基本的には生きてきましたが、30代以降は自分の人生をちゃんと謳歌(おうか)しないと、作品にきちんと向き合えないなという感覚が今はあります。
自分の人生をずっと無視して仕事してきたので、ここからはバランスを取って一個一個の作品に向き合っていかなきゃっていう心持ちです。
スタイリスト:猪塚慶太/IZUKA KEITA ヘアメイク:古久保英人(OTIE)/ EITO FURUKUBO(OTIE)
(C)2021「キネマの神様」製作委員会
映画『キネマの神様』
出演:菅田将暉、沢田研二、永野芽郁、野田洋次郎、リリー・フランキー、前田旺志郎、志尊淳、北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子
監督・脚本:山田洋次
原作:原田マハ『キネマの神様』(文藝春秋刊)
配給:松竹
フォトギャラリー
関連記事
- 細田佳央太、ほぼ無名の主役から「ドラゴン桜」を勝ち取るまで フレッシュな笑顔から分かる“純粋”さと“情熱”
熱い男だ。 - 「どんな逆境やつらいことがあっても、とにかく前向きに」 映画「夏への扉」主演の山崎賢人に聞く作品との共通点
「悲しみとかつらいことを知っている人の方が人にも優しくできる」。 - スパイダーマンに役者として高めてもらった―― 映画「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」ピーター・パーカー役、榎木淳弥インタビュー
榎木淳弥さんにとって「スパイダーマン」とは? - 役者であることは自分の誇り――日曜劇場「ドラゴン桜」で話題、志田彩良の人生を変えた転機と母への“反抗心”
「ドラゴン桜」の“秀才”小杉麻里役で注目を集めています。 - 後悔したくなかった――注目の俳優・恒松祐里 子役から朝ドラ、「全裸監督 シーズン2」への出演を決めた“役者としての覚悟”
「おかえりモネ」「全裸監督 シーズン2」で正反対な役柄を演じる恒松さん。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
-
ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
-
夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
-
ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
-
妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
-
人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
-
「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
-
「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
-
160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
-
「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
- イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
- 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
- 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
- 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
- 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
- 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた