ウォルピスカーターが初著書『自分の声をチカラにする』 “高音出したい系男子”が歌い続けるためのポリシーとは(2/3 ページ)

» 2022年02月07日 18時00分 公開
[斉藤賢弘ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

他アーティストとの共同作業は「濃密な勉強」の機会

―― 周囲にはいい影響になっているかと(笑)。ウォルピスさんは「歌ってみた」に加えて、はるまきごはん(※3)さんや、はりーP(※4)さんはじめ多くのボカロPから楽曲提供を受ける機会もあります。「共同作業」についてはどう考えていますか?

※3 2014年から活動。作詞作曲のみならず、自身のチーム「スタジオごはん」でアニメーションMVも制作しており、ウォルピスカーターには後述の「雨子」や「1%」といった楽曲を提供している。

※4 2011年から活動。「ぼくらのレットイットビー」「EARTH DAY」などの代表曲を持ち、ウォルピスカーターには「晴天前夜」「泥中に咲く」などの楽曲を提供。“針原翼”名義では3人組ユニット「空白ごっこ」のメンバーとして活動している。

ウォルピス 僕にできないことをやってもらっているっていうのが一番大きいですね。共同作業となると、楽曲やムービー、イラスト制作をやってくれる人が大勢一緒に仕事をしてくれるわけじゃないですか。

 僕自身は歌を録っているだけなのでそんなに変わってないんですけど、ひとつの作品をいろんな方向からアイデアや手を入れて作り上げていくというのは贅沢でお得な気がしますね(笑)。

―― はるまきごはんさんやはりーPさんたちに加えて、多くのクリエイターがウォルピスさんと関わってくるわけですが、自分の中にはない要素に「面白い」「楽しいな」といった感情を抱いたりしますか?

ウォルピス 非常に多いですね。僕はひとりで作業する仕事が多くて、閉じこもって作業をしていると「自分の持っている経験値の切り売り」「今まで蓄積してきたノウハウをちょっとずつ削って出している」みたいな状態にどんどん陥っていくんですよ。最終的にゼロになってしまうというか。

 そこにボカロPさんたちからのデモが届くと、僕の中にない音楽の引き出しとか歌のインスピレーションが新しく加わっていく感じがしますね。

 自分にとっては「面白い」「楽しい」というよりは、「勉強になるな」という部分が一番大きいかなと思います。普段はうまい歌を聴くとすごくへこむ(笑)から人の音楽を全然聴かない分、共同制作などを通じてインスピレーションを得られる機会は貴重なので、その中でなるべく濃密な勉強をしようと思っています。

―― 今まで発表してきた楽曲で一番衝撃を受けたものは何でしょうか?

ウォルピス 何だろうなぁ……? はるまきごはんさんに書いてもらった「雨子」という作品があるんですけど、これがとんでもない楽曲だったんですよね。もうどう歌ったらいいのか分からないぐらいに高難度で。

 オクターブが異なるボーカルが両方メインとして楽曲の中に存在しているんですけど、最終的にその処理へ行き着くまでにすごく時間がかかりました。まず上のキーで録って、「なんか合わないな」って消して、今度は下のキーで録ってやっぱり消して……というのを何度も繰り返したので、あれはかなり「うっ!」ってなりましたね。

―― 自分の中でも達成感があった?

ウォルピス めちゃめちゃありました! 高いボーカルがまずあって、それを支えるようにオクターブ下のボーカルを添えるのがわりと定石なんですけど、そのお約束をぶっ壊して、上のオクターブも下のオクターブも両方前面に出しちゃおうっていう結論にたどり着けたのはすごい収穫だったなと思います。

―― そのときの経験がその後の楽曲に生きてきたことも?

ウォルピス あります。「定石を無視しよう」っていう気持ちが芽生えたのは明確にそこからなので。

 それこそボーカルだけじゃなくて、歌詞なども文法にとらわれずに書いてみようとか。日本語の文章としてみたら意味不明で支離滅裂だけど、メロディーに乗せればそんなこと気にならないよね、ある種の王道から外れてもいいんだっていうのが分かりましたし。かなり広い範囲で何かと応用が利く考え方だなと。

―― その「収穫」が一番生きた楽曲が気になります。

ウォルピス 「シ・シ・シ」という楽曲の歌詞が、かなり定石を外そうっていうところに注力したものになっています。文法も滅茶苦茶ですし、使われてる単語も「面白いからこれでいいや」ぐらいの気持ちで書いているので、ここが多分色濃く影響を受けたのかなと思います。

歌は「もうやめられない」存在に

―― 10年前から比べて歌い手が活躍する場もだいぶ広がったように感じます。ウォルピスさんの中で、歌い手活動に対して抱く思いに変化はありましたか?

ウォルピス 個人の話をすると、僕は2014〜2015年前後からからずっと、「高い声を出したい」っていうのを看板として掲げていて、そこから変わっていないです。

 「歌を誰かに聴いてほしい」という思いももちろんありますけど、それ以上に「僕が高い声を出して、その音源を僕が聴きたい」「あわよくばもっと高い声が出せるようになりたい」って点で自己完結してずっとやってますね。僕が楽しみたいという気持ちが一番なので。

 これからも時代に合ったやり方を探しつつ、高い声をどんどん出していければなと思います。

―― 「高い声を出したい」という点に全くブレはない、と。最後の質問ですが、Ado(※5)さんがあるインタビューで「昔から大好き」「原曲を本当に大事にしている」とウォルピスさんを称賛していまして……。

※5 2017年に歌い手活動を開始。2020年10月にはユニバーサルミュージックからデビューするとともに、ボカロPのsyudou作詞作曲の「うっせぇわ」を歌って大ヒットに。2022年1月には1stアルバム「狂言」を発表した。

ウォルピス わぁ、うれしい!

―― ウォルピスさんも著書の最後で、次世代の存在を意識する発言をしていましたが、今後どのような活動を目指しているかについてうかがえますか?

ウォルピス これは僕のポリシーみたいな部分なんですが「いい意味でなるべく頑張らないようにしたいな」と思ってます(笑)。

 僕も年を取っていく中で、はやりの曲をガンガン歌って時勢にどんどん乗っかってグイグイやっていくっていうのは非常にシンドい。若い人がエネルギッシュで、パワーもタフネスもある分、こちらはなるべく落ち着いたポジションを目指していきたいとずっと思ってます。

―― 「年を取っていく」とコメントしていましたが、ウォルピスさんの年齢でそこまで冷静に先を見据えていることに驚いています。そんなスタンスになったのはいつからでしょうか?

ウォルピス どうだろう……。

―― 「もっと上に行くぞ!」と考えるのが普通なのかなと思ったりもしました。

ウォルピス 明確にいつからというのは分からないんですけど、上を目指そうとした時期は間違いなくありました。ただ、「世の中って歌うまい人いっぱいいるな」とも気付きまして(笑)。

 その群雄割拠の中、自分が強烈な個性でもって駆け抜けられるかって真剣に考えたときに、自分にはまだまだ足りないものが多すぎて、かつ時間も限られているなって。

 でもそれをマイナスに捉えるのではなく、じゃあどうやってポジティブに生かしていくかってところで、自分を保つべくそこに行き着いたんだと思います。

―― よく分かりました。ウォルピスさんにとって「歌」はどのようなものなんでしょうか?

ウォルピス 歌というものは「生涯の趣味」だと思っています。それぐらいのめり込んでいますし、歌うことに関して他では感じられないくらいの喜びや楽しみを見つけてしまっているから、もうやめられない状態になっているんですね。

 高い声を出すボーカリストの方はたくさんいらっしゃいますけど、「高い声を出したい」って言っているボーカリストは僕以外に見たことがない。なので、オンリーワンとしてこの「高音出したい系男子」という看板を背負っていきたいと思っています。

他人の歌を研究するウォルピスカーター 他人の歌を研究しているウォルピスカーターさんのイメージ (C)docco

プレゼントキャンペーン

 ねとらぼエンタの公式YouTubeをチャンネル登録&公式Twitterをフォローし、プレゼント企画を告知するツイートをRTしてくださった方の中から抽選で3名に、ウォルピスカーターさんサイン入り『自分の声をチカラにする』をプレゼントします!

自著『自分の声をチカラにする』へサインするウォルピスカーター

(1)ねとらぼエンタ公式Twitterアカウント(@itm_nlabenta)をフォロー

(2)告知ツイートをRTで応募完了


注意事項

  • 締切期限は2月14日正午
  • 当選者には編集部からDMでご連絡します。DMが解放されていない場合には当選無効となりますのでご注意ください
  • いただいた個人情報はプレゼントの発送のみに使用し、送付後は速やかに処分します
  • ご応募完了時点で、アイティメディアのプライバシーポリシーへご同意いただいたものと致します。応募前に必ずご確認ください


フォトギャラリー

ウォルピスカーターの著書『自分の声をチカラにする』 ウォルピスカーター 他人の歌を研究するウォルピスカーター 自著『自分の声をチカラにする』へサインするウォルピスカーター

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた