東海道線と東海道本線ってどっちが正解? 山手線の「山手」って何なの? 実は楽しい「鉄道路線のお名前」の謎月刊乗り鉄話題(2022年6月版)(1/4 ページ)

知らなくても困らないけど、知ると何だか乗りたくなってくる「鉄道路線名」のお話をどうぞ。40代以上の皆さん、覚えてますか……?「E電」。

» 2022年06月02日 23時00分 公開
[杉山淳一ねとらぼ]
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 今年(2022年)は日本で鉄道が開業して150年になります(って前回も書きましたね。しつこい?)。

 日本で最初の鉄道は1872年「(東海道本線の)新橋〜横浜間」でした。開業したときは「東海道本線」という名前はありません。なにしろそこにしか鉄道がないのですから。「鉄道」「汽車」「陸蒸気」なんて呼ばれていたんだろうなと想像します。「東海道線」と正式に決まったきっかけは、1889(明治22)年の新橋〜神戸間の全線開通でした。この頃になると各地で鉄道建設の機運が高まり、区別するために「路線名」が必要になったのです。

鉄道開業当時、「路線名」はなかった 日本の鉄道開業当時、「路線名」はなかった(出典:国立国会図書館デジタルコレクション資料「東京名所図会」

 今回は、山手線って言うけれど「山手」って何のこと? 南海電鉄の「南海」ってどの海? など、知らなくても困らないけれど、知ると意外と面白くて親しみがわく「鉄道のお名前」のアレコレをひもといて分かりやすく解説します。

「線路名称」と「路線名称」がある 実は違う、けれどどちらも正しい

 1909年に明治政府は「国有鉄道線路名称」を制定します。ここで23の本線と、その支線群にグループ分けされました。東海道線は「東海道本線」になりました。

 時は進んで、国鉄が1987年に分割民営化されたときに、各地で本線を名乗っていた路線は「本」抜きの名称になりました。国土交通省監修の「鉄道要覧」における線路名称は全て「“本”抜き」です。東海道本線ではなく「東海道線」と記載されています。


 しかし、慣れ親しんだ呼び名は簡単に消えません。JR各社の対応も分かれています。JR四国は「(本線の)本抜き」を徹底しています。JR北海道は、運行情報では「本抜き」で時刻検索ページは「本付き」です。他のJR旅客会社は大体「本付き」です。乗車案内表示、市販の時刻表や鉄道雑誌では基本的にJR各社が定める表記に従っています。報道では「本抜き」も見受けられます。

 鉄道会社が案内で使う路線名は、実は線路名称ではなく「路線名称」です。ほとんどの路線で「線路名称」イコール「路線名称」です。しかし一致しない場合もある。つまり「本抜き」も「本付き」もどちらも正解です。

では「路線名称」って何なの? 聞き覚えのある京浜東北線、実は……

 「路線名称」のルーツは1914(大正3)年の「京浜線」でしょうか。

 京浜線は、東京駅から横浜市の高島町駅(ルート変更のため翌年廃止)まで、東海道本線のとなりに電車専用の路線として開業しました。分かりやすいように、わざわざ既存の線路名称とは違う名称が使われました。

 これが後に北側の電車専用線と統合されて、皆さんも聞き覚えのある「京浜東北線」となります。京浜東北線は路線名称ですから、線路名称の名簿「鉄道要覧」に掲載されません。

京浜東北線や埼京線は「路線名称」です 青線の京浜東北線や緑線の埼京線は「路線名称」。鉄道要覧には掲載されない(地理院地図を元に作図)

 路線名称は線路の名前というより、列車の経路名と考える方が分かりやすいかもしれません。

 「埼京線」も京浜東北線と同様に鉄道要覧にはない路線名称です。これを線路名称で表記すると「山手線(大崎〜池袋)」「赤羽線(池袋〜赤羽)」「東北線(赤羽〜大宮)」となります。これらの線路を直通する電車が「埼京線」というわけです。この方が分かりやすいですよね。

 このほか、利府線(東北線の支線:岩切〜利府)、美濃赤坂線(東海道線の支線:大垣〜美濃赤坂)、和田岬線(山陽線の支線:兵庫〜和田岬)のように、独立した線路名称のない支線にも路線名称が使われます。

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