ねとらぼ
2022/09/17 20:00(公開)

今日書きたいことはこれくらい:「スプラトゥーン3」が「不慣れな人に敗北のストレスを感じさせない」ことを徹底していてすごいなーと思った話

対戦ゲームに共通する問題。

 こんにちは、しんざきです。「エイムが苦手でも多少は戦える気がする」という、非常に甘えた理由でバケツを使っています。精進いたしますのでご勘弁ください。

 はじめにこの記事の趣旨なのですが、

  • 対人戦ゲームにおける「負けたときのストレス」がなぜ問題になるのか
  • なぜ、初心者が「スプラトゥーン3」を遊んでいると「敗北のストレス」が希釈されるのか、初心者目線での感想
  • 「ナワバトラー」がおまけゲームとしては想像以上に良くできている件について

 以上となります。よろしくお願いします。

スプラトゥーン3

「スプラトゥーン3」公式サイト

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ライター:しんざき

しんざき プロフィール

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ、三児の父。ダライアス外伝をこよなく愛する横シューターであり、今でも度々鯨ルートに挑んではシャコのばらまき弾にブチ切れている。好きなイーアルカンフーの敵キャラはタオ。

Twitter:@shinzaki

 

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対戦ゲームにおける「敗北時のストレス」問題

 皆さん、対人要素のあるゲームって遊びますか? 格ゲーやらデジタルカードゲームやらFPSやら音ゲーやらティンクルスタースプライツやらウォーロイドやら、まあ対人ゲームって言っても古今東西いろいろありますよね。

 しんざきも、かつて「キン肉マンマッスルタッグマッチ」でウォーズマン対策に血道を上げていたころからこっち、格ゲーを中心に対人戦はかなりの回数こなしているんですが、対人戦がCPU戦と一番違うところって、当たり前のようですが「負けたら悔しい」ってところだと思うんですよ。

スプラトゥーン3

参考:なぜ「キン肉マン マッスルタッグマッチ」は対戦ゲームにおける極めて重大なマイルストーンなのか?

 より正確に言うと、「敗北時のストレスがCPU戦よりも大きい」というべきでしょうか。

 画面の向こうに自分と同じゲーマーがいる。そのゲーマーとの勝負に、力比べに負けた。自分よりも相手の方が強かった。自分のミスを、自分の敗北を知っている人間が、画面の向こうに、あるいはWebの向こうに存在する。

 その事実だけでも床をゴロゴロ転がってしまうくらい悔しいですよね。もちろんCPUに負けても悔しいことは悔しいのですが、「人」に負けたということによる悔しさ、敗北時のストレスというものは格別なものだと思います。

 もちろん、「悔しいからこそ勝てたらうれしい」「勝ちたいから練習する」「勝ちたいからうまくなる、強くなる」というのは、ある程度やり込んでくるとむしろ「対戦ゲーの醍醐味(だいごみ)」となっていきますし、そのプロセスを良循環として消化できる人もたくさんいます。

 対戦ゲーがうまい人というのは、大体「敗北時のストレス」との付き合い方、向き合い方もうまいです。「負けた悔しさを強くなるモチベーションに振り向けることができる」って、強くなるための必須要件の一つですよね。

 とはいえ、この「敗北時のストレス」をうまく扱えず、そのゲームを早い段階でやめてしまう人、というのも数限りなくいるわけです。「全然勝てないから面白くなくてやめた」って話、よく聞きますよね? しんざきの身近でも、「〇〇ってゲーム全然勝てないからやめた」って言葉を聞く機会は多いです。

 世の中、みんながみんなバトル漫画の主人公スピリッツを持っているわけでもなし、「ゲームでまでストレスと付き合いたくない」というのはある意味当然であって、仕方ないことだと思うんですよ。「もっとやり込めば面白くなってくるのに」といっても、やり込むまでにストレスを感じっぱなしなのだとしたら、他にもっと面白いことはあるんだからそっちにいくよ、ってなっちゃいますよね。

 そういう意味で、特にゲームの入りはじめ、初心者のころの「負けたときのストレス」をどう軽減するか、というのはいろんなタイトルで共通の課題になっているんじゃないか、と想像するわけです。

 理想的なのは、「最初のうちはあんまり悔しくないんだけど、対戦に慣れて面白さが分かってきたころ、ほどよく悔しさを感じられるようになる」というデザインでしょうか。最初のハードルは低く、慣れてくると悔しさをモチベーションにできるように、というのは、一つの理想的な良循環でもあります。


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「スプラトゥーン3」における「敗北ストレス軽減策」

 さて、「スプラトゥーン3」の話をします。

 9月9日に「スプラトゥーン3」が発売されまして、しんざき一家もインク塗りにハマっております。

スプラトゥーン3 紹介映像

 私はナワバリ中心、長男はガチ寄り、長女はヒーローモード中心、次女はサーモンランが中心という感じでして、それぞれ違ったやり方でイカライフを楽しんでおります。おかげでSwitchの争奪戦が激しく、プレイ時間を確保するのが大変です。

 しんざきは「対戦ゲーム」についてはともかく、スプラトゥーンをはじめとするFPS/TPS(一人称/三人称視点シューティングゲーム)についてはそれほど遊んでおらず、端的に言うと素人なのですが、スプラ3は今のところ「敗北時のストレス」が非常に少なく、大変快適にプレイできているんですよ。

 なぜスプラトゥーンは対人戦の敗北ストレスが少ないのか、ということをちょっと自己分析してみたのですが、少なくともしんざきに関する限り、以下のような要素がそこに寄与しているのではないかと思いました。

  • そもそもシステム自体が「個人の責任」を感じずに済みやすい構造になっている
  • 自分が勝利にどれだけ貢献したか/脚をひっぱったかが巧妙にボカされている
  • どんなにコテンパンでも最低限システムに褒めてもらえる
  • 勝負に疲れても逃げ場がちゃんとある

 で、これが私にとっては、上で書いたような「不慣れなうちの敗北ストレス軽減策」として非常に有効に動作してるんじゃないか、と考えたわけなんです。

 まず一つ、「3」に限らずシリーズに共通する話なのですが、スプラトゥーンは非常に「負けに対する自分の責任」を重く受け取りにくい作りになっています。

 TPS初心者の最大の鬼門が「キル/デス」、つまり撃ち合いの部分だというのは論をまたないと思うのですが、スプラトゥーンの対戦システムは、シリーズの当初から「キル/デス」とは別の基準で勝負がつくようになっています。ナワバリなら「最終的に塗った面積の広さ」で勝負がつきますし、ガチバトルでも各種、キルデス以外の部分に勝敗条件が設定されています。

スプラトゥーン3 ナワバリバトル プレイ映像

 キルデスの意味が軽いわけではなく、むしろなるべく死なずに敵を倒し続けることは非常に重要なのですが、「自分のデスがどの程度敗北に直結したのか」ということは、ゲームにある程度慣れないと分かりません。たくさん死んでも負けるとは限らないし、たくさん倒しても勝てるとは限りません。

 実際、「戦いから離れた地点もきちんと塗る」というのは、(モードにもよりますが)それはそれで必要な仕事だったりするんですよ。

 つまり、「キルデス以外でもちゃんと仕事ができる、ないし仕事をした気になれる」。客観的に見れば死にまくりでチームの敗因になっていたとしても、「まあ仕事はできた」という形で自分のストレスを軽減できるんです。

 さらにチーム戦の特徴として、言い方は悪いですが、非常に「負けを他人のせいにしやすい」ということも挙げられると思います。

 スプラトゥーンのバトルは非常にスピーディで、チームの他の誰がどんな動きをしているのか、これまたある程度慣れないと分からないので、自分がどの程度足を引っ張ったのか、味方がどれくらい強かったのかも、初心者は良く分からないんですよ。

 つまり、負けたとき、「自分は仕事をしたけど味方が悪かったから負けた」という、自分への言い訳を極めてしやすい作りになっている。

 これ、もちろん熟練者の人から見れば「甘えるな」って話だと思いますし、「敗因を認識しないとうまくなれない」というのもその通りなんですけど。ただ、上述した通り「はじめたてのころのストレス軽減」って非常に重要であって、はじめさえ乗り越えればもっとうまくなれたのに、という人だってたくさんいるはずなんですよ。

 世の中、「お前は下手だ」「お前のせいで負けたんだ」と言われ続けながら、ずっとゲームを続けられる人ばかりではない。まずはとにかく、勝ち負け以前にゲームの面白さを知ってもらわないといけない。

 そういう意味で、「自分がどれだけ貢献できたか/足を引っ張ったかが、ある程度ゲームに慣れないと分からない」というこのデザインは、一つの理想だと思うわけです。

 ちなみに、スプラプレイヤーの皆さん、「リザルト画面の見方」ってどこで覚えましたか?

スプラトゥーン3

 この画面、塗りポイントにキル数にデス数にサポート数が人数分と、結構情報量多くって複雑なんですけど、実は「通常の導線では、リザルト画面の見方についてのチュートリアルが存在しない」んですよね。キャラクター作り直して確認しました。

スプラトゥーン3
スプラトゥーン3

 操作方法やらショップの機能やら、これだけ親切にチュートリアルが表示されるのに、対戦ゲームではかなり重要そうな「リザルト」の見方が一切説明されない。長女次女に聞いてみても、キルデスは知ってましたがサポートの意味は分かってませんでした。関係ないですが、「向きを戻すにはYボタン」ってことあるごとに言ってくれるのマジで有能。

スプラトゥーン3

 ゲーム中でも言ってますが、「習うより慣れろ」の精神。「2」ではキルデス数自体が表示されなかったんですが、今回はキルデスまでは表示しつつ、細かい情報についてはある程度慣れたあと自分で調べてね、というこれまたスプラトゥーンの一つのスタンスなのではないかと思います。

 もう一つ重要なところとして、「システムが非常に褒め上手」という点が挙げられます。

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スプラトゥーン3

 今回、リザルト画面で「表彰」が表示されるんですが、これ、どんなにコテンパンにされていても、行動さえしていれば大体何かしら表示されるんですよ。

 例えば「注目された時間No.1」とか「味方のジャンプ先No.1」とか、「冷静に考えるとそれは自慢になるのか?」といった表彰もあるんですけど、それでもまあ褒めてもらえるのはシンプルにうれしいし、なんだか「負けたは負けたけど何か成し遂げた」という気分になれる。

 「意味が分かってくると素直に喜べないものもある」という点で、これまた「初心者のうちの敗北ストレス軽減」に貢献していると思います。もちろん、「トドメ数No.1」あたりがとれると、それはそれでとてもうれしい。

 ちなみに今回、「負けBGM」「負け画面」というもの自体が存在しない、というのも、これまた指摘しておきたい点でして、リザルトでは例外なく「勝ったチームのメンバー」が表示されるんですよね。

スプラトゥーン3

 これも、慣れた人からは「自分を負かした相手が喜んでいるのをいちいち見せつけられるのがイヤ」という声も聞くんですが、初心者の私としては、あんまりそういう受け止め方をしていなかったんですよ。なぜかというと、「自分が誰に倒されたのか」というのもそこまできちんと把握できているわけではなく、個別のイカを「自分を負かした憎い相手」とは認識していないから。

 かわいいイカたちがぴょんぴょん喜んでいるところを眺めながら、自分はそこそこ活躍した気分でいられるという、これまた一つの「不慣れなうちのストレス軽減」として動作しているんじゃないかなあ、と。そんな風に考えるわけです。


気分転換の「サーモンラン」と「ナワバトラー」

 「バトルに疲れたとき、気分転換として逃げ場がちゃんとある、というのも重要です。バンカラ街をふらふら散歩しているのも楽しいのですが、メインはもちろん前作から存在する「サーモンラン」と、今作からの「ナワバトラー」。

 サーモンランは、対戦ではなく「完全な協力ゲー」というところが目先が変わって非常に楽しいですよね。戦う相手は人間ではなくシャケですので、対人戦のストレスから一時離れて、皆で協力して目標達成を目指すことができる。対戦で殺伐とした心を癒してくれるわけです。

 大体普段使わないブキを握ることになる、というのも気分転換要素として非常に大きく、サーモンランで初めて触ったら面白かったのでバトルでも使ってみるか、なんてこともあります。

 弓、サーモンランで使うまで自分で触ったことなくて、実際使ったら「めちゃくちゃ楽しいやん!!」ってなりました。ただパブロだけはどうにも使いこなせねえ。あれシャケのラッシュでどうやって立ち回ればいいんでしょう?

 一方ナワバトラー、「デッキ構築型ナワバリカードバトル」とでも言うべき内容なんですが、遊んでみるとこれまた見た目以上に良くできていて大変面白かったのでちょっと紹介させてください。

  • カード15枚でデッキを構築する(カードはヒーローモードなどで手に入る)
  • カードを出し合って空きマスを塗っていく
  • 塗る範囲がかぶった場合、塗るマスが少ない方が優先される

 というルールなんですが、見た目の単純さに比して駆け引きが熱い。

スプラトゥーン3
スプラトゥーン3

 高コストで一気に塗れるカードばかりキープしていると後半全然塗れなくなったり、相手の塗り範囲を予想してその範囲を邪魔するようにカードを使ったり、使い勝手が良さそうな直線範囲を後にとっておいたり、高コストカード対策に後背地を塗らずに残しておいたり。

スプラトゥーン3
スプラトゥーン3

 それぞれのカードにブキの名前がついていて、ちゃんとブキに対応したマスの塗り方になっているのも一つのポイント。スペシャルによる逆転要素なんかもあったりして、バトルの息抜きにもってこいのモードとなっております。

 最初よく分からなくって「これ一体どうやったら勝てるんだ……?」などと思っていたんですが、序盤と中盤以降のカードの出し方や、相手の出し方を予想しての塗り方なんかを工夫していったらだんだん勝てるようになってきまして、最近は結構こちらにもハマっています。

 カタログやらくじ引きやらヒーローモードやら、カードの入手方法は多岐にわたっておりまして、デッキ構築の楽しみもあるので、まだ手を出していない人はぜひ。

 ということで、長々と書いてまいりました。

 最後に簡単にこの記事で書いたことをまとめておきますと、

  • 対戦ゲームにおいて、「敗北時のストレス」をどう軽減するか、というのは一つのポイント
  • スプラ3は、「初心者の間はなるべくストレスを少なく」という点がとても良くできていると思う
  • リザルトの表彰の褒め方は無理やり感が漂うけれどなんだかんだでうれしい
  • 関係ないけど今回ヒーローモードのボリュームと展開もすごい
  • ネタバレは避けますがヒーローモードだけでもゲーム1本分くらいたっぷり遊べるので未プレイの方はぜひ
  • 1号2号がそろって出てくるとやっぱすごーくしっくりきますよね

 以上となります。よろしくお願いします。

 今日書きたいことはこれくらいです。

 

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