河童と天狗だらけの公園を、高齢者が電動カートで激走! “妖怪のまち”で開催された「ポルカーグランプリ」に行ってみた(3/3 ページ)
今回「POLCAR GP in FUKUSAKI」の主催者であり、普段は福崎町のすぐ横の加西市の職員として働く阿部裕彦さんはこう話します。
「小川さんとは中学高校の同級生で、お互い面白いことをやっては笑わせあってました。彼が役場に入って、ガジロウでPRに成功して実績を上げたのをみて『すごいな!』と思ってたんです。不特定多数の町民のための幸せを追求するのが役所の職員だけど、実績を上げても給料は別に上がらないし、でも彼は町のために文字通り命懸けで仕事をしていた。
それが風化していくのはどうなのかというか、個人的に友達だったこともあって、彼がやってきたことを忘れてほしくなかったんです。彼が盛り上げてきた町で彼と共有した時間を忘れず、これからもこの町を引っ張っていきたいという思いもあります」
とにかく「面白いこと」を町おこしにつなげようとしてきた小川さん。だから今回のイベントも、「OGAWA FESTIVAL(略してOGAFES)」という名前を冠しています。地方のゆるキャラとしては攻めまくったデザインのガジロウも、そんな小川さんの面白さに対するこだわりから生まれたキャラクターです。
「僕も加西市の役所務めですけど、同業者だからこそ彼の功績のすごさが分かるんです。公務であれだけエッジの立ったことというのは、普通は絶対にできない。
公務というのは誰からも等しくコンセンサスを得なくちゃいけないし、市町村というのはコンセンサス社会だから、『これは気に入らない』という声にも真摯に向き合わなきゃいけない。だからゆるキャラひとつとっても、普通だったら多少は賛否があるかなくらいの無難なかわいさに全部収めなくちゃいけないんです」
「ただ、ガジロウのエッジはすごいし、確実に攻めてますよね。あれを役所でやって、町の人が認めるまで持っていって、マスコミが話題にするところまで行った。恐ろしくパワーがあったと思うし、本当にすごいと思います。
失敗する可能性は当然あるし、やってもやらなくても給料が変わるわけでもない。リスクの方が多いのに0を1にすることにチャレンジするというのは、民間企業とは別の意味でハードルが高いんです。自分の思う面白さを信じて『これなら大丈夫』と本当にやってしまう、小川さんの突破力は本当にすごかった」
その「面白さ」へのこだわりを反映したのが、「ポルカーにのったじいちゃんばあちゃんがレースをする」というポルカーグランプリです。役所が考えたアイデアとしては、確かに攻めた内容です。
「小川さんとは面白いことをお互い見せあってきた仲だったので、彼が爆笑するようなことをやってやろうと。あと僕の考えで『攻めと守りは同時にやった方が合理的で効果的』というのがあって、福崎の地元のものを使って、活性化や福祉につながるという“守り”のアイデアも盛り込んだ結果です。
ポルカーって地元で作っているものだし、電動だからゼロカーボンだし、免許返納みたいな社会問題を解決できるツールじゃないかと。PRとしても面白い素材だろうってことで、それなら実際にじいちゃんばあちゃんがレースしたらめちゃくちゃ面白いかなと思って。笑わせながら面白いものを作ってるなとPRできたら、小川さんも笑うかなと考えたんです。それでいろんな会社とか、役場にお願いに行きました」
悪ノリすれすれみたいなポルカーレースですが、実は裏にはかなり合理的な考えが……! 来年度以降も、また9月に何かイベント開催を考えているのでしょうか。
「今日もテレビや新聞に来てもらえましたし、PRになると思うのでポルカーのレースは何回もやれたらいいと思ってます。また、来年はなにか違う企画も考えたいですね!」
小川さんの遺した仕事を受け継いで、まだまだ「面白いこと」で町おこしを続けていく阿部さんと福崎町。単純に町中に妖怪がたくさんいて面白いし、来年度以降もなにかしら胡乱なイベントが発生しそうなので、今後もこの町には要注目なのです。
(しげる)
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顧客が本当に必要だったものがまた1つ。
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