「コミケで将棋倒しは起きない/起きていた」論争が勃発 → 過去に雑踏事故が発生 女性に“面白いから踏んでいこうぜ”など暴言か(2/4 ページ)
4.女性を大勢の男が踏んで救急車が呼ばれた。「面白いから踏んでいこうぜ」という発言もあった → 事実の可能性はあるものの判定留保
「転んだ女性を大勢の男がわざと踏んで移動して救急車が呼ばれたことがあった。「『面白いから踏んでいこうぜ』と言いながら踏んだ男もいた」という投稿については、救急車が呼ばれたかどうか、発言があったかどうか、両方とも事実の可能性はあるものの判定留保とします。
ねとらぼ編集部では、東京消防庁に電話で問い合わせましたが、救急隊が作成した活動記録は過去5年間しか保存していないとのこと。コミケで雑踏事故が起きた2000年に、救急車が呼ばれたかどうかの事実も含めて調査はできないとの回答でした。
一方で、前述のレポート漫画では「救急車」という言葉は含まれていないものの、「そのまま病院に行った…」という記述があります。当時のインターネット上にも「倒れて動かなくなった人が1人、担架で運ばれていって 救急車で病院に行ったのはこの人」「救急車で搬送」という書き込みや、当時の準備会代表による「念のため救急車も呼んだのですが、 大事に至らなくてよかったです」との発言を聞いたという書き込みが見られました。
また、男性たちが集団で駆けつける「男津波」と呼ばれる現象の説明文に、「現実に巻き込まれて転んだ女性参加者が踏みつけられ、救急車で病院へ運ばれるという事態も発生している」という記述を確認できました。
準備会は医師が救護室で対応したと回答しているものの、当時複数の書き込みを確認できたことから、実際に救急車が出動した可能性はあると考えられます。ただし準備会や東京消防庁には詳細な記録が残っておらず、裏付けが十分ではないため、ここでは判定留保としました。
※雑踏事故以外で救急車が駆けつけたケースとしては、例えば、2019年には熱中症などの傷病者が発生し、5名を救急搬送したことがありました。当時、準備会はこの件について謝罪しています。イベントやチケット販売の際に開始前から待つ「徹夜組」から体調不良者が出て、救急車が出動したという報道も見られました
一方で、発言の有無については、準備会が「誰かの故意による行為があったかどうかについては、一部証言があることは事実ですが、その信憑性や事実関係について、準備会としては把握をしておりません」との立場を示しています。
ねとらぼ編集部では、前述のレポート漫画に「ジャマだからふんじゃおうぜ!! っていったらしいよ…ひどーい」「『面白いから押してやろうぜ』『面白いからふんでやろうぜ』とわめいて本当に女の子を押し倒してふみつぶしていった男共!!!」といった記述があることを確認できました。
また、「女並ぶなよ! 邪魔なんだよ!」という暴言を聞いた、という当時の書き込みも見られました。今回、「『面白いから踏んでいこうぜ』と言いながら踏んだ男もいた」などと投稿したユーザーは発言について、自分自身で直接耳にしたものとしています。
一部、発言について「都市伝説」だと否定する声もあるものの(※)、当時描かれたレポート漫画に記述があること、女性に対して同じような暴言があったとする当時の書き込みを確認できたことから、実際に何かしらの暴言があった可能性はあると考えられます。ただし裏付けが十分ではないため、同じく判定留保としました。当時を知る読者がいましたら、TwitterのDMから情報提供をお待ちしております。
※雑踏事故の約2年後の2002年には、2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)に「『踏んじゃおう』とか言う人間は当時は一人も確認されていない。都市伝説と思われる」という書き込みがされています
※公的機関や準備会による裏付けがないため、「可能性が高い」とする記述をより正確な「可能性がある」に変更しました【2023年3月9日追記】
5.長いエスカレーターの事故もあった → 誤り
最後に、コミケでの事故について「長いエスカレーターの事故もあった」とする投稿については、誤りであると考えられます。
すでに指摘も寄せられていますが、2008年の夏に東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催された「ワンダーフェスティバル2008[夏](ワンフェス)」で起きた事故と混同しているとみられます。
その際には、地上1階から4階直通の上りエスカレーターが乗客が乗った状態で逆走し、乗客約50名が転倒、10名が負傷しました。GIGAZINEの報道によると、救急車や消防車が駆けつけるなど、現場は騒然としました。
日経クロステック(xTECH)の記事によると、事故当初は雑踏事故と同じように大勢の来場者による乗りすぎが原因とする見方が強かったとのこと。しかし、その後の調査報告書では、乗客は「積載荷重をやや上回る程度」であり、安全装置が作動したことやボルトの緩みなどが原因だった、と分析されています。
事故が起きたのがコミケではないという点だけではなく、雑踏事故にあたるのかという点でも、誤りと言えます。
雑踏事故が起きた翌年のカタログには「将棋倒し」の記述
準備会は「コミックマーケットは、コロナ禍以前は1日約20万人が参加する同人誌即売会であり、準備会としては、混雑対応及び導線の管理には多大な注意を払っております。それでもなお、2019年夏の一般参加者導線の誘導トラブルなど、不手際が皆無ではないことを否定するものではありません」とコメント。
「その他のいわゆる『ヒヤリハット』事例を含め、トラブルについては各部署で情報交換を行い、大きな事故につながらないように、事実・対策の共有、ノウハウの蓄積に努めています」と述べています。
実際、ねとらぼ編集部では、雑踏事故の前後でコミケのカタログにある注意喚起についての記述に変化があることが確認できました。雑踏事故が起きた「コミックマーケット58」のカタログには、座り込み行為やエスタレーターでの重いカート(キャリア)の使用などを禁止する項目はあるものの、「将棋倒し」についての記述は見当たりません(※『コミックマーケットカタログ58』4頁〜21頁)。
一方で、雑踏事故の翌年に開催された「コミックマーケット59」のカタログには、「一人が転べば将棋倒しの危険性があります」「早く同人誌を買いたい気持ちは解りますが、走ったり押したりすれば、あなた自身の危険とコミケット開催中止の可能性に直結する事を忘れないでください」など、雑踏事故に関する記述があります(※『コミックマーケットカタログ59』に収録された「コミケットの禁止事項」に記載されています。ただし、該当ページには頁数の記載はありません)。
2022年に開催された「コミックマーケット100」の公式冊子にも、防災についての項目があり、「衝突・転倒事故に始まり、将棋倒しなどの二次災害につながりかねない大変危険な行為です。会場内および会場周辺待機列等では走らずゆっくり歩いて移動してください」との記述が見られました。
また、エスカレーターについても、「エスカレーターは急停止する場合があります。大勢の参加者が乗っている状態での急停止は、将棋倒しなどの事故につながる可能性が高く、非常に危険です」と注意喚起しています。
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