小名浜美食ホテルは、なぜ「駅弁屋さん」になったのか?:いわき「カジキソースカツ丼」(1000円)(2/3 ページ)
JRの皆さんの駅弁への情熱が生んだ「潮目の駅弁」!
―いわき駅弁の「空白の10年」……ありましたね。
鈴木:住吉屋さんはもともと、駅前旅館でした。住吉屋といえば「うに弁当」ですね。私が高校生のころも平駅(当時)が誇る地元の味として広く知られていました。特にJRの皆さんの駅弁への思い入れが強くて、特急始発駅のいわき駅にオリジナルの駅弁がないことを、気にかけていらっしゃいました。その熱量が1つの駅弁として形になったものだと思います。こちらとしては本当にありがたい話で、喜んで製造を受けることにいたしました。
―どうやって「駅弁」を作っていったんですか?
鈴木:開発に当たってはJRいわき運輸区の運転士さん・車掌さんをはじめ、若手からベテランまで多くの方がアイディアを出し合って、議論を重ねました。開発会議は面白かったですね! JRさん発案の企画ということもあり、駅弁を売る日本レストランエンタプライズ(当時、現・JR東日本クロスステーションフーズカンパニー)さんへもスムーズに話を通していただき、平成27(2015)年、「潮目の駅弁」を発売することができました。
普通の食べ物と「駅弁」は、全く違う作りの食べ物!
―「潮目の駅弁」の開発では、どんなご苦労がありましたか?
鈴木:駅弁ってご当地感が全ての存在だと思います。その場所で食べられるだけでなく、さまざまな形で、全国を「旅する」ものだと思うんです。だから何を入れたらいいかよく議論しました。例えば、いわきの魚・メヒカリを入れたいとか、(うに弁当の歴史やうにの貝焼きという郷土食もあるので)うにも入れたいとか。とくに「蒸しうに」は、食の安全を保つのが本当に難しかったです。(ノウハウのある)いまなら、どんな食材でも難なくできるのですが……。
―「駅弁」作りの洗礼を受けた感じですね。
鈴木:まちの飲食店をやっている立場からすると、「駅弁」は全く違うつくりの食べ物です。イートインでどれだけ美味しいものを出していても、それはそのまま「駅弁」にはなりません。もしも、お店と同様に作ったものをそのまま蓋をすると、汗をかいて(結露して)しまいます。惣菜の経験もなくて駅弁作りに入ったので、本当に試行錯誤でした。保存性を担保するのにいちばん苦労しました。老舗駅弁屋さんからしたら、ひよっこみたいな話ですけれどね。
小名浜美食ホテルの駅弁参入のきっかけとなったカジキメンチ。このカジキを使ったまちおこしは高く評価され、「フードアクションニッポンアワード2015」の普及啓蒙部門で、見事、優秀賞を受賞しました。その系譜を継ぐ駅弁が、「カジキソースカツ丼」(1000円)です。小名浜沖は暖流の黒潮と寒流の親潮がぶつかる「潮目の海」。この豊かな潮目の漁場には、300kgを超える大物カジキもやってくると言います。
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