細谷佳正「声優を志すようになってから23年」 山寺宏一と共演がかなった「ザ・フラッシュ」吹替インタビュー(1/2 ページ)
今では「ほそやん」と呼ばれる仲に。
DCユニバース映画シリーズ最新作「ザ・フラッシュ」が6月16日から全世界同時公開。日本語吹替版ではエズラ・ミラー演じる主人公バリーを細谷佳正さんが、そして30年ぶりにバットマン役を再演するマイケル・キートンの声を、過去作に引き続き山寺宏一さんが演じています。
「ザ・フラッシュ」は、DCコミックス原作の実写化作品で、エズラが同役を演じる作品としては2017年公開の映画「ジャスティス・リーグ」および同作のディレクターズカット「ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット」からの続編にあたります。主人公がスーパーパワーを使って悲しい過去を変えようとした結果、時空にゆがみが生じ地球滅亡の大ピンチと直面することに。マルチバースを舞台に繰り広げられるスーパーヒーロー共演作品です。
ねとらぼでは、「ジャスティス・リーグ」に引き続きフラッシュ/バリーの声を担当する細谷さんと、バットマン役でシリーズ初参加となった山寺さんにインタビュー。意外にもガッツリ絡むのは初めてという2人に、作品と同じく複雑だったアフレコ時のエピソードや役作りから、お互いの印象を聞きました。
「本当に不思議な感じです」 23年かかった“きっかけ”をくれた人との共演
―― 細谷さんは以前から、山寺さんの演技を見たことが声優を目指したきっかけと公言されています。山寺さんご自身はこのことをご存じでしたか?
山寺宏一(以下、山寺) はい。細谷くんとの共演はこれまでそんなに数多くなくて、プライベートで食事に行ったこともなかったんですけど、つい先日、音楽朗読劇でご一緒したとき「ちょっと飲み行こうよ」って。ほそやんからその話を聞いて「またまた〜。サービストークか?」と思ったらWikipediaにも書いてあるし、本当なんだなって今実感してる次第です。
細谷佳正(以下、細谷) 行かせてもらいましたね。
山寺 その時から僕は“ほそやん”と呼んでいるんです。
細谷 ありがたいです。
―― 今回ようやく共演がかないました。細谷さんは、山寺さんが出演すると最初に聞いた時の感想はいかがでしたか?
細谷 正確には「宇宙戦艦ヤマト2199」で同じ作品に出させていただいたことがあるんです(※加藤三郎役、山寺さんはデスラー役)。だけどせりふを交わしたことはなくて。今回バットマンが山寺さんと知って、バットマンともお芝居を交わすことができて、同じ映像で山寺さんと僕が吹き替えたキャラがしゃべっている。この仕事をやろうと志したのが18歳でそこから23年かかったんだなってすごく感慨深かったです。
僕が若手の頃、先輩が「山寺さんに会ったよ」「山寺さんって本当に優しいよね」っておっしゃるんですよ。でも山寺さんってそんな簡単に会える方じゃないだろうって。
山寺 めったに仕事しない人みたいにいうなよ。23年ずっと現役なんだから(笑)。
細谷 僕がまだそこに行けていないっていうか(笑)。藤沢文翁さん企画の「READING HIGH」という音楽朗読劇で一緒の舞台に立たせていただいたあと、「ザ・フラッシュ」の収録がすぐだったんです。だからすごく不思議な縁を感じました。23年かかったって思っていたら「ザ・フラッシュ」で今度は絡むことができて、本当に不思議な感じです。だって目指したきっかけですからね。
山寺 不思議だね。
―― 山寺さんほどになればご自身に憧れていた後輩と会うことも多そうです。
山寺 いやいやないですよ。きっかけになった100人のうちの1人くらいってことは今までもあったでしょうけど、ずばりピンポイントで言ってくれるのは本当にありがたいことです。
逆に僕が細谷くんを意識したのは僕が出演していたあるアニメ。オーディションで受かって、ストーリーの途中から出てくるキャラでした。打たれ弱いので普段はエゴサしないんですけど、この時は上手にできたなとみんなの感想をちょっと見たんです。もちろん褒めてくださる方もいる中で、「細谷くんにやってほしかった」という意見が多数あったんですよ。
細谷 たぶんたくさんのコメントのうちの2つくらいですよ(笑)。
山寺 当時はまだ共演歴もないから「あれ? 最近、細谷くんの名前をよく聞くな」と幾つか出演作を見てみたら、「これはいい」と。細谷くんくらいの世代だと少年役も多いけど、少年声じゃない。おっさん役もできそうな声質。聞いたことがない感じの声だなと思いました。
どうしても自分の声に酔っちゃう人って多いと思うんです。「いい声出してますよ〜」みたいな。僕もそういうときがあったと思うんですけど、細谷くんにはなくてスッとしてるっていうのかな。すごいいい声で、自分でもいい声って分かっているんでしょうけど。演劇をやっていたというからそのおかげなのかな。当時からちょっと意識してたんです。軽い嫉妬も覚えるくらい。
細谷 こんなことなかなかないですよ。でも飲み会でも山寺さんが本当にそうおっしゃってくださったんですけど、僕はただ汗が止まらなかった。そういわれても何も返せないですよ(笑)。
山寺 本当に。「これはしょうがない。魅力的な声と芝居、演技力を持ってる人なんだな。早めにつぶしておかなきゃ」と、そんなことも思うぐらいだったんですけど、同時に「共演してみたい」と本気で思いました。その後も共演は何度かありましたけども、生の舞台で共演して、今回はガッチリ絡めるしうれしいです。
細谷 本当にうれしいです、僕も。本っ当にうれしいです。
最初からクライマックス! 「ザ・フラッシュ」の良さ
―― 「ザ・フラッシュ」という作品の感想や印象を聞かせてください。
細谷 三好音響監督から、収録前に映像を見ておいた方がいいと聞いたので、試写会で映像を見たんです。ものすごい力が入っている映画と演出なんだと。
山寺 そもそも出演が決定して台本をいただく前に「相当面白いらしいよ」といううわさを小耳に挟んだんです。そこから出ることが決まったので「やった!」と思って。先入観を持って見てもなお想像を超える面白さ。細谷くんが言う通り台本を読んだだけでは分からない、本当にすごい作品だなと思いました。
細谷 CGもそうですけど描かれ方が現実的なんですけど、アニメーションにも見える。でもアニメーションではないし。客観的にCGもここまで来たんだなっていう感じがしました。冒頭からクライマックスでした。
山寺 実は僕、知ってる人は少ないけど昔、フラッシュの吹替※をやったことがあるんですよ。
細谷 そうだったんですね。
※「超音速ヒーロー ザ・フラッシュ」 …… 1990年から1991年にかけて米国で放送されたテレビドラマ。ジョン・ウェズリー・シップ演じる主人公バリー・アレン/フラッシュ役の吹替を山寺さんが担当
山寺 いま細谷くんもいったけど、映像のすごさでフラッシュがさらに面白くなっていて、そこでまずつかまれました。コメディー要素、アクションのすごさ、いろんなヒーローが出てくる面白さ、いろんな要素がいっぱいあるんだけど最終的には人間ドラマ。そこへタイムスリップまで入れちゃって。
タイムスリップものっていつでも難しい。だから面白くなるか、ならないかのどっちかだと思うんですよ。「速さでタイムスリップ? どういうことだよ、無理があるだろう」って思うところへ、無理じゃないように見せて、思わせて、面白くなっている。とにかくいろんな要素を詰め込んだのにエンターテインメントとして、すばらしい作品になっています。
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