「8人の女たち」仏俳優エマニュエル・ベアール、子ども時代の近親姦被害を告白 「闇は恐ろしい」「相手の身体も見えない」(1/2 ページ)
助けたのは祖母だったそう。
「美しき諍い女」(1991年)「ミッション:インポッシブル」(1996年)「8人の女たち」(2002年)などで知られる仏俳優、エマニュエル・ベアールが、10歳から14歳まで近親姦の被害者であったと告白しました。自身が製作した9月24日に国営総合チャンネルM6で放送されるドキュメンタリー「Un silence si bruyant(騒々しい沈黙)」では、同様の被害を受けた証言者らとともに自身の体験も明かしています。
同作はウクライナの映画監督でジャーナリストであるアナスタシア・ミコワと共同製作したもの。3人の女性と1人の男性が幼いころ近親者から受けた性的被害について語るうち、はじめはそのつもりではなかったエマニュエルも打ち明ける必要性を感じるようになり、自らも加わったといいます。
エマニュエルは約4年間の被害を受け続けたのち、14歳のとき祖母に助けを求めます。祖母は孫娘を全寮制の学校へ入れることで加害者の手が届かないようにしたとのこと。仏ELLE誌とのインタビューでエマニュエルは「なぜ14歳だったのか、それはわからない。でももう我慢できなかった」と当時の気持ちを振り返りました。彼女は加害者の名前は明かしていませんが、それは歌手で詩人の父ギイ・ベアールでもモデルの母ジュヌヴィエーヴ・ガレアでもないことは明言しており、両親は何も見ておらず、打ち明けたのは後年であるとのこと。
またエマニュエルは被害を受けていたときの記憶が残っており、「闇は恐ろしいもの。何が起こってるかわからない。例えば相手の顔も見えない。本当に暗闇の中だったから。でも相手の身体も見えないけど、感じることはできる」と当時の恐怖についても語っています。
同誌は仏市場調査コンサルティング会社Ipsosが2020年に18歳以上の国民を対象に行った調査で、約10%の人が未成年時に近親者からのレイプや性的虐待の被害に遭っていたとの発表を引用。被害者のうち78%が女性、22%が男性であり、これは女性の5人に1人、男性の12人に1人の割合となることをあらためて指摘しました。
愛らしく天使のような容貌でフランス映画界に輝き、ハリウッドにも進出したエマニュエル。俳優として十分に成功した彼女ですが、過去にインタビューで子ども時代について話そうとした際は、急に口を噤むといった場面が幾度かありました。
今回インタビューで、「加害者は“黙れ”と言わなくても、それが暗黙の了解になる」とこれまでの沈黙について話した彼女は、「過去と和解しているか?」と尋ねられると「20歳のとき、私は幸せではなかった。30歳のときはほんのちょっと幸せで、40歳はもう少し幸せを感じるようになった。そして今なら幸せでいられる。自分がどんな顔でも関係なくて、やっとここにいられるって感じなの」と60歳となった今ようやく平穏を手に入れたと回答しています。
またエマニュエルは7日、Instagramに同作のビジュアルを投稿して長文を添え、「近親姦が引き起こし、破壊するもの」として「虐待され、裏切られ、否定されたことによる身体的・心理的な痛み。そして家族、社会、組織による沈黙の輪」と数々の問題を挙げました。
さらに「“私も”と言うのはとても難しいことだった。内輪ではよく話していたことも、公の場ではまた別の話だった」と振り返り、「私の話が映画をむしばみ、他の証言者の正しい言葉を飲み込んでしまうようなことにはしたくなかった」と自身の告白が前面に出過ぎることを心配していたことも。続けて近親姦の被害者たちを巡る社会や法制度について「耳の聞こえない社会」「耳の聞こえない制度」などと呼び、被害者が声をあげることが困難であること、声をあげても取り合ってもらえないこと、また声をあげたときにはすでに時効であったり証拠がなかったりといった問題について、同作が考えるきっかけとなることを目指すとしています。
この投稿へは「この(被害を受けた経験との)戦いは永遠に続くもので、放置すると人生を破壊することになるんだよ。ありがとう、エマニュエル」「私はあなたと同じ年で、子どものころ、父によって屈辱を与えられました。父が亡くなって、ようやく少し眠れるようになりました……感謝します」「恥辱と沈黙の壁を粉々にしてくれることを願っています」「保育士ですが、子どもたちに簡単な言葉で説明する必要があるなと感じます」など、自身も被害者であったという人の声や、同作がタブー視されがちな近親姦へ一石を投じることになればと願う声などが多数寄せれらています。
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