「大阪リサ」を知っていますか? 役所への申請書類に登場する架空の名前を調べてみたら…… ニッチすぎる同人誌が興味深い元司書みさきの同人誌レビューノート

全国版にも期待です!

» 2025年03月16日 12時00分 公開
[みさきねとらぼ]
同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 春の訪れも近づき、今までとは違った環境に進む準備をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。新しい土地や人に触れるのはわくわくしますね。それぞれの土地にはいろんな人が暮らしていますが、今回の同人誌はそんな中でも街にそっと潜む“人物”に着目されています。

今回紹介する同人誌

『「大阪リサ」を知っていますか?』A5 24ページ 表紙、本文モノクロ

著者:青山正仁


同人誌『「大阪リサ」を知っていますか?』 あなたのお近くに大阪リサさんがいらっしゃる?

さまざまな土地に出没? 「大阪リサ」さんの痕跡

 タイトルでも掲げられている「大阪リサ」さんをご存じでしょうか。実はこのお名前、自治体の提出書類の見本に使用されている架空のお名前です。ご本の作者さんは仕事で届け出を行う中で、各地のちょっとした違いに気付き、大阪府の市町村の見本を比べてみることにしたのだそうです。

 取り上げられているのは建設リサイクル法の届け出(様式第一号)です。ご本の冒頭では、届け出の持つ意味や、大阪府内の18の自治体の届け出見本を調べたこと、取り上げる項目について説明がなされたのち、いよいよ本文へ。おお! 工事を行う元受け業者さんのお名前が大阪リサさんです。大阪府も堺市も守口市も……場所は違えど、次々出てくる大阪リサさん。大活躍です。

同人誌『「大阪リサ」を知っていますか?』 まずはご本のきっかけから

同じとは限らない。太郎さんもいれば椎也さんもいる

 しかし比べてみると、先に挙げた大阪府も堺市も守口市も元受け業者さんの名前は大阪リサさんで共通しているのに、発注者さんは大阪一郎さん、堺太郎さん、守口一郎さんと微妙に違います。この微妙な違いはあちこちにあって、リサイクルの元受け業者さんのお名前も大阪リサさんに限らず、寝屋川市は解体太郎さん、八尾市は解体椎也さんなどバリエーションが見られ、先に挙げた大阪府と全く同じ様式を踏襲しているのは3自治体にとどまったのだとか。

 おそらく用紙の見本には定型があり、自治体ごとにアレンジされているのではと想像しますが、それにしてもまるまる同じ見本を示しても良いところなのに、各々の自治体で個性がにじみ出るものですね。地域を名字に使ったり、言葉遊びのようにしたり、意外と自由で、ご本の紙面は文字を転記したシンプルな画面ながら、作者さんも感じたという「ちょっとしたユーモア」がじわじわ浮かび上がってきます。

同人誌『「大阪リサ」を知っていますか?』 一番スタンダードと思われる大阪府にはしっかり大阪リサさんが

申請用紙から間違い探しのような楽しさを見つけ出す能力

 ご本に示されているのは誰でも見ることができる自治体の申請様式見本なのに、いくつも比べてみれば、小さな部分が引っ掛かります。主任技術者名を大仙はにわさんにしている堺市には「はにわに特別なご縁がある土地かしら?」、発注者の氏名も元受け業者名も大阪府と同じなのに工事の規模だけ小さめに変更している豊中市には「120m2から100m2にした意図は?」と、何を思っての変更かと思いを巡らせてしまいます。

 ご本は申請の解説書ではなく、事例が文字で示されたページが続きます。けれど、調べて並べられたからこそ見えてくるささやかな差、それは各地の小さな主張のようで、ひとつひとつを自分で発見する楽しさを感じました。この面白さに気付き、淡々と並べて見せるのはすてきな能力ですね。それぞれの土地の気配はほのぼのとさせてくれ、見本にこんなかわいらしさが潜んでいるの? と新鮮な気持ちになりました。

『「大阪リサ」を知っていますか?』 解体椎也さんと解体志多代さんはご兄弟かも? なんて妙な興味もふつふつと湧いてきます

サークル情報

サークル名:鯉素庵

次回イベント予定:コミックマーケット106


今週の余談

 今回のご本、なんと今後は全国版を予定されているそうで、果たしてどんなリサさんたちが登場されているのか……楽しみです!

みさき紹介文

 公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。

関連キーワード

同人誌 | 図書館 | コミケ


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2504/16/news024.jpg 飲み終えた“コーヒーかす”→捨てずに石と混ぜると、1カ月後…… 「感動」目からウロコの裏ワザに「やってみよう」
  2. /nl/articles/2504/16/news023.jpg 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  3. /nl/articles/2504/16/news016.jpg たった1輪の“小さな小さなバラ”の刺しゅう→1年後…… 「うわー!」驚きの仕上がりに「根気に脱帽」「尊敬します」
  4. /nl/articles/2504/17/news044.jpg 「盛大に邪魔してきた」 撮影中のカメラマン、偶然とらえた“奇跡の一瞬”が310万表示 「決定的瞬間」「狙っても撮れないって!」
  5. /nl/articles/2504/17/news166.jpg 俳優の板垣瑞生さん死去 「東京都内にて遺体で発見」と家族が報告
  6. /nl/articles/2504/16/news113.jpg マクドナルド、次回ハッピーセットコラボに「争奪戦すごそう」 品切れや転売の懸念も「1個でいいから欲しい」「たくさん作って」
  7. /nl/articles/2504/16/news035.jpg 「ウソだ…」「言葉が出ない」 幼少期から絵を描き続けた少年→15年後…… 大人になって描いた絵が100万再生【海外】
  8. /nl/articles/2504/17/news023.jpg ダイソーのレース糸をまぁるく編んでいくと…… “ぷっくり”かわいい完成品に「挑戦してみます」「アフガン編みステキ」
  9. /nl/articles/2504/11/news157.jpg 47歳で一戸建てを建てた1人暮らし女性、“最高のズボラご飯”をのぞくと…… 「私もこう言う暮らししたいな〜」「憧れます」と340万再生
  10. /nl/articles/2504/17/news033.jpg 1児のママに突如違和感「足の裏が痛い」→敷物をめくったら…… “まさかの原因”に「怖っ」「なぜそこにw」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小学生時代「こんなプラモ誰が買うんだよw」→40年後…… “大人になった”を実感するエピソードに「分かる」「特大ブーメランw」
  2. パパに、保育園へ行く娘のヘアアレンジを任せたら…… ママがひっくり返った“仕上がり”が400万表示「重力どこ?」「頑張った感がいい!」
  3. 「神パンツきた」 ユニクロ新作“3990円パンツ”が品切れラッシュの大人気 「過去イチかも」「本当にこれは買い」
  4. なんとなく捨てにくい紙袋→2カ所切り込みを入れるだけで…… 目からウロコの“活用術”に「これすごくいい!」【海外】
  5. 「見習うことばかり」 80代おばあちゃんの春服&収納術がステキ! 上品かつオシャレで「憧れです」「尊敬します」
  6. ファスナーに直接毛糸を編み付けていくと…… 完成した“便利でかわいいアイテム”が100万再生「天才だ」「これ大好き」【海外】
  7. 「尊厳を踏みにじる行為」 八代亜紀さんの“物議のCD”は「流通会社がすでに流通を中止」 タワレコが回答
  8. 古くなったジーンズは捨てないで! 目からウロコの“アイデア”に大反響「なにこれかわいい!」「こんなの作れるんだ」【海外】
  9. 指先サイズの小さな器に木を植えて、育てたら…… 「芸術だ」「半端ない」鳥肌モノの“神盆栽”に反響
  10. 義母「ランドセル代を振り込みました」→銀行口座を見ると…… 2児ママ絶叫の“神対応”が1520万表示「凄すぎる!」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  2. 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  3. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  4. 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
  5. 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  6. 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
  7. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  8. 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  9. Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
  10. 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】