令和5年(2023年)から始まる「インボイス制度」。「適格請求書」の提出が求められ、フリーランスで働いている人にも大きな影響が出るこの制度を、元国税局員のさんきゅう倉田が前後編に分けて解説します。
後編の今回は、「適格請求書」を発行する具体的な方法についてです。
さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて東京国税局に入庁。法人税の調査などを行ったのち同退職、芸人となる。芸人活動の傍ら、執筆や講演で生計を立てる。好きな言葉は「増税」。公式サイト、Twitter
「適格請求書」は、今までの請求書と何が違うの?
適格請求書には、消費税の税率や消費税の額を書く必要があります。具体的には、下記の6つが必須の項目となります。
- あなたの名前と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 消費税が8%になる取引と10%になる取引を分けて計算した取引金額の合計
- 8%と10%を分けて計算した消費税の合計
- 取引先の名前
なお、上の方に「請求書」と書いてある必要はありません。納品書でもいいし、領収書でもレシートでも構いません。取引先は、あなたからもらったそれらを大事に保管し、毎年国に納める消費税の金額を計算することになります。
ただ、適格請求書を書く前に、管轄の税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録して、登録番号をもらわなければいけません。課税事業者向けのこの登録は、令和3年10月1日から開始され、e-Taxでも申請が可能です。
課税事業者と免税事業者ってなに?
フリーランスも法人も、売上が1000万円を超えると「課税事業者」になり、2年後から消費税の確定申告をして、消費税を納めなければいけません。所得税と違って、消費税は赤字でも納税する必要があるからです。
逆に、1000万円以下なら「免税事業者」として確定申告や納税を免除されます。だから、バイトで生活をしている若手芸人は、みんな消費税の確定申告と納税をしていません。
ただし、適格請求書には登録番号を記載する必要があって、この登録は課税事業者しかできません。そのため、登録番号が欲しいのなら、売上が1000万円を超えていなくても課税事業者を選択する必要があります。
そう、売上が1000万円を超えている人が、免税事業者を選ぶことはできませんが、免税事業者であっても、課税事業者を選んで積極的に消費税を納税することは可能なのです。
では、消費税を納税すると、なにか良いことがあるんでしょうか? 率直に答えを言うと、社会保障が充実する以外になにもありません。ではなぜ、課税事業者を選択しなければならないのでしょうか?
それは、前編で述べた通り、あなたが免税事業者だと、あなたと取引する相手が納める消費税が多くなってしまうからです(相手の売上が5000万円以下で簡易課税を選択している場合を除く。よくわからない人は、今度一緒に勉強しよう)。
すると、取引先は、あなたと取引するのをやめて、課税事業者である別の人と取引をするかもしれません。同じ能力の人なら、払うお金が少ない方がいいと考える企業は少なくないでしょう。
こうしたことから、今後は自分の今受けている仕事を守るために課税事業者を選択する必要が出てくることが考えられます。
知識をつけた上での選択が大切
もちろん、フリーランスのみなさんが適格請求書等保存方式の登録を申請するかどうかは任意ですし、課税事業者の選択をするかどうかも任意です。
ただぼくは、こうした知識を知らないままではなく、インボイス方式が採用されたらどうなるかを知った上で判断してほしいと思っています。ちなみにぼくが売上500万円くらいの免税事業者だったら……課税事業者を選択して、適格請求書を発行するかな。
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