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「シン・ゴジラ」へと至る、庵野監督・実写作品の系譜 エヴァ完結に備え「ラブ&ポップ」「式日」「キューティーハニー」を見る(1/3 ページ)

「シン・ゴジラ」後だからこその発見がある。

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 庵野版「ゴジラ」の製作が報じられた2015年4月。12年ぶりの和製ゴジラ復活に寄せられた声は、その全てが好意的なものではなかった。

 前年に公開されたハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」の世界的な成功と、監督・樋口真嗣が手掛けた実写版「進撃の巨人」に漂う不穏な気配。そして「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」に対する風当たりの強さとエヴァ完結編公開の見通しの立たなさに、庵野秀明への批判もかなり強かった時期である。


 エヴァンゲリオンが、ついに完結する。庵野秀明は、今再び、何を作ろうとしているのか? それを探るには過去作を見ていくしかない。本連載では「シン・エヴァンゲリオン劇場版」公開まで約2カ月、これまでの庵野監督作品を一気に振り返る。


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 庵野が実写映画作品を撮っていたこと自体は、「エヴァ」ファンの間でも広く知られていた。2004年までに実写長編3本の監督をつとめており、それらは「シン・ゴジラ」公開直前に「庵野秀明 実写映画作品集 1998-2004」としてあらためてBlu-ray BOXとしてリリース。「ラブ&ポップ」「式日」は2020年7月にオンデマンド配信も開始され、12月5日現在、Amazon Primeビデオ見放題対象にもなっている。


 これらは「エヴァ」並みに、または「エヴァ」を超えるほどに、庵野ファンの中でも評価が分かれる作品だ。いずれも普通の作品ではなく、言ってしまえば非常にクセが強い。

 しかし「シン・ゴジラ」を経て彼の作家性が改めて評価された今のタイミングで見直してみると、これら3作品がいずれも「エヴァ」の、そして今の庵野秀明に通じるところが多いと分かるはずだ。

 女子高生の日々を奇妙に切り取る「ラブ&ポップ」、男女の虚実が入り乱れる「式日」、ポップな特撮コメディー「キューティーハニー」。連載第2回では、これら庵野秀明の実写作品を振り返る。


渋谷を“第四惑星”に変える「ラブ&ポップ」(1998年)

 「時代の寵児・村上龍が援助交際を題材に選んだ原作を映画化」「女子高生のリアルな姿を描いた青春ドラマ」という情報につられて本作を見始めたなら、大半の視聴者は面食らうことになるだろう。


 強く歪んだレンズで切り取られるリビングルーム、主観での洗顔シーン、スカートの隙間から床を見下ろしたり、ワイシャツの隙間からネクタイを見上げる奇妙なアングル。目まぐるしく切り替わるこれらのカットをつなぐのは床を縦横無尽に駆け回るプラレール……。

 被写体の前に遮蔽物を多用し、絵にぎょっとした印象を与えるのは、たびたび影響を公言している実相寺昭雄のオマージュ(通称・実相寺アングル)だ。ウルトラセブン「第四惑星の悪夢」にて大仰なセットを用いることなく、地球を未知のロボット惑星に演出してみせたその手腕を用い、女子高生の日常を不気味な非日常に変質させてみせている。そこに同じくウルトラマン 「地上破壊工作」にみられる矢継ぎ早のカットをもたせ、112分の上映時間で観客を未知の感覚に包み込む。

映画「ラブ&ポップ」より。独特なアングルが多用される

「ウルトラセブン」第43話「第四惑星の悪夢」より。実相寺昭雄監督が手掛けた名エピソード

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