「酷道(こくどう)」をご存じでしょうか。道幅が狭かったり、路面が舗装されていなかったり、そもそも通行止めだったり……。一般的な国道(国が政令で指定した主要道路)というイメージからはかけ離れた国道のことを愛情と敬意を込めて示す言葉です。それと同様に、そんな状態の県道(都道府県が管理する道路)にも愛称があります。「険道(けんどう)」と呼ばれます。
これまで筆者は「地図に載っていない県道」「普通車が通るのさえ困難な幅1.7メートル制限の県道」「平均勾配13.4%、鳥居のある激坂県道」などの険道を紹介してきましたが、日本には愛すべき険道がまだたくさんあります。
今回は険道ファンの筆者が、“千葉県最狭県道”といわれる県道「千葉県道269号大鷲木更津線(以下、県道269号)」を、2020年10月までに訪れた記録とともに紹介します。
千葉県最狭県道といわれる「県道269号」をゆく
京葉工業地域の一角を形成し、千葉県第2位の面積を持つ「君津市」と、東京アクアラインの着岸地で交通の要所にもなりつつある「木更津市」。県道269号はそんな県内有数の都市同士を結ぶ一般県道です。“一般”県道とは何か、詳しくは「ご存じでしたか? 県道、実は“2種類”ある」をご覧ください。
大きな都市同士を結ぶ道路ならば、しっかり整備されているはずなのでは……? と思うのですが、県道269号は「千葉県で最も狭い県道」といわれる険道です。
では、木更津側の国道16号と交わる桜井交差点から県道269号を愛でていきましょう。
ロードサイド店舗が立ち並ぶ国道16号の「アオカン」(関連記事)にも左折方向が県道269号と書かれていました。険道は標識などに記載がなく、存在を隠されていることが多くあります。これはちょっと意外でした。
険道は、県道とは思えない険しさもある愛すべき道路のこと。旅行者などが「県道だからちゃんとした道のはず。こっちに進もう」と進んでしまうと困ることもあり得ます。そのため、あえて案内標識に記載しないケースがあるのです。
最初は片側2車線(4車線)の整備された快走路。正面に大きなトンネルが見えてきますが、県道269号はその直前で右折。中央分離帯もある道を進みます。そのまま住宅街の中を突っ切っていきます。
住宅街を抜けると「館山自動車道」と交差します。この辺りの道は2009年に新道へ切り替えられたそうです。まだ険しい要素はありません。千葉県で最も狭いと聞いて訪れたのですが、もしかしてもう過去の話なのでしょうか……?
古い集落を通る、のどかで心が落ち着く風景がすばらしい
もしかしてもう険道ではなくなってしまったの……? こう心配した矢先に少しずつ現れてきました。館山自動車道と2回目の交差をした直後、整備された2車線道の右カーブに差し掛かるところに左に細い枝道が。そう、整備された太い道を道なりに進むのではなく、県道269号はこの枝道へ行くのです。
この枝道に入ると急に車線が狭くなり、行き違いに気を遣うくらいの道幅になります。
でも、この程度の狭さの道はどこにでもあります。路面の舗装もちゃんとしていますし、生活道路として全く問題はありません。県道の標識もちゃんとありました。
県道269号は歴史のありそうな集落の中を通ってゆきます。田畑など緑が多く、心が落ち着く風景です。
集落を過ぎると、カーブの先で丁字路に。右折方向が県道269号です。小さいながらもアオカンがあり、ここにも「(県道)269」の文字が記載してありました。これまで何度か各地の険道を巡りましたが、ここまでしっかりと存在が記されてある険道はやっぱり珍しいかもしれません。
右折すると再び走りやすい2車線道路に。さすがは千葉県(?)、県内で最も狭いと言っても、他の険道からするとフツーの道路じゃないか……と思っていました。そう、この時までは。
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