令和元(2019)年の東日本台風(台風19号)で大きな被害を受けたJR水郡線。茨城県内の袋田〜常陸大子間で運転を見合わせ、バスによる代行輸送が続いていましたが、今年(2021年)3月27日、約1年半ぶりに全線で運転を再開しました。この運転再開を祝して、駅弁と途中下車を楽しみながら、のんびり水郡線の旅を楽しむことにいたしました。
水郡線全線運転再開! 新緑まぶしい茨城・福島の駅弁旅(第1回/全3回)
水郡線は、常磐線の水戸を発って久慈川沿いを北上、茨城から福島に入り、郡山の1つ手前・安積永盛(あさかながもり)で東北本線に合流する約140kmのローカル線です。全線非電化ですが、水戸・郡山などの通勤通学輸送もあるため、3ドアのキハE130系気動車が活躍。とくに水戸から支線の常陸太田までは比較的列車本数も多く、気軽に途中下車して、駅周辺の散策が楽しめる区間でもあります。
2年前の東日本台風で大きな被害を受けてしまったのは、風光明媚な久慈川に沿って走る区間です。とくに袋田〜常陸大子間に架かる第6久慈川橋梁は豪雨の増水のため、流出してしまいました。有名な袋田の滝の最寄り・袋田駅のそばに架かる橋ということで、私も何度か訪れたことがあり、とても残念に思いましたが、当初、今年の夏と見込まれた運転再開も、工事が順調に進んだことで、この春に前倒しとなっていました。
新たな第6久慈川橋梁は、河川内の橋脚を1本としたトラス橋となりました。これは東日本台風と同じくらいの河川増水が発生しても被災しないように、より安全な形で復旧工事が行われたことによるものです。確かに、平成24(2012)年に撮影した1つ前の画像と比べてみると、川のなかに建っている橋脚が減っているのがわかります。まだ橋の周辺は工事中ですが、自然いっぱいの奥久慈に真新しい緑のトラスが映えますね。
さあ、水戸駅から水郡線の旅を楽しもうというとき、駅弁を買うなら「奥久慈しゃもべん」(1100円)がお薦めです。この駅弁、水郡線の全線運転再開を記念して、3月27日から販売が始まったばかりの新作。水戸駅弁の「しまだフーズ」が製造し、水戸駅・勝田駅のNEWDAYSはもちろん、東京駅の「駅弁屋 祭」でも販売があります。掛け紙にも「奥久慈しゃも生産組合」公認の文字が躍っていますね。
【おしながき】
- 炊き込みご飯(茨城県産米)
- しゃも焼き
- 玉子そぼろ
- しゃも肉そぼろ
- 山菜醤油漬け
- 金平ごぼう
- 長ねぎ焼き
- 桜漬け
炊き込みご飯の真ん中には、メインとなるご当地ブランド「奥久慈しゃも」のしゃも焼きが載っていて、そのコリコリとした食感とともに肉のうま味を楽しむことができます。これに合うのが長ねぎ焼き。これらでアクセントを付けながら、しゃもと玉子そぼろを炊き込みご飯と一緒にサラサラッとかき込んでいけば、水戸から袋田・常陸大子まで約75分の鈍行旅も、美しい車窓と時間があっという間に過ぎていきそうです。
真新しい第6久慈川橋梁を水郡線のディーゼルカーが軽快に走り抜けて行きます。水郡線の列車は、鉄橋の向こう側にある常陸大子駅が運行拠点となっており、水郡線の「要」のポイントにある橋。その意味でも、待ちに待った運転再開と言えましょう。
(初出:2021年4月23日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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