2度の挫折を経て「FFXI」にハマりつつある独身男性の物語(その6):ヴァナ・ディールをもう一度(2/2 ページ)
NMとの交戦で今までにない満足感を体験
剣を交えたとき、すぐに僕は敗北を感じた。というのも、こちらが与えるダメージ値があまりにも少なく、それに反比例するかのように被ダメージ値が多き過ぎる。4人の前衛のうち、僕を含めた3人が忍者をサポートジョブにしていたので、いわゆる「蝉回し」(忍術による分身で敵の攻撃をかわせる複数の前衛がターゲットを回して被ダメージを抑える戦術)で何とか攻撃を凌ぎつつダメージを与えていたが、全滅するのは時間の問題だろうと思って諦めていた。しかし時間が立つにつれ、最初は唐突過ぎてぎこちなかった蝉回しが安定し始め、徐々にではあるがNMのHPが減り始めたのだ。
20分以上戦っていただろうか。1体のモンスターに対してこれほど長く交戦したことは一度もない。そしてついに、長きに渡るバトルに勝利したのである。NMを倒した瞬間、メンバーからそれぞれ安堵のコメントが流れてくる。何の合図も出さず、それぞれがそれぞれの役割を120%発揮して勝ち取ったバトルだった。この充足感は今まで味わったことがない。最初に襲われてしまったメンバーはしきりに謝っていたが、今となってはそんなことはどうでもいい。むしろこのバトルを味わわせてくれて感謝したいくらいだ。それほど緊張感があり、楽しい経験だったのだ。
ヒーリングを終え、再び僕たちはBFを目指して移動を始める。突然のNM戦以外は特に危険な状況に襲われることもなく、ようやくBF手前まで到着。ボス戦に向けての作戦会議が行われた。ボス戦で重要なのがアニマを使う順番のようで、手練のプレーヤーたちが率先して使用順、ボスが使う特殊技の注意点、最後に追い込みをかけるタイミングなどをレクチャーしてくれる。僕はそれを細かく手元に用意したメモ用紙に書き記し、頭の中でシミュレーションした。これほど綿密な打ち合わせは、実際の仕事上でもなかなか行ったことがない(関係者の方々、申し訳ありません……)。作戦会議がようやく終わり、いよいよBFへ突入することになった。ここまで来れば、あとは自分たちの力を信じるのみだ。
難解なプロマシアストーリーで得たものは――
各プロミヴォンでのボス戦で共通している戦術は、序盤はTP(テクニカルポイント。これが100%以上になると強力な技が使える)がたまってもWSは発動せずに、ボスのHPが残りわずかになった状態まで待つこと。そして前もって決めておいた順番で各種アニマを使うことだ。「さっきのNMを倒したこのメンバーならボスも絶対倒せるはずだ!」と全員が意気込み、それぞれのジョブを生かしつつバトルを展開。プロミヴォン-デムのボスは特殊技の「フィション」で敵を最大4体まで呼び出すのが特徴なのだが、このときは幸いにも1体しか呼び出さずボスのみに集中できた。そしていよいよボスのHPが残りわずかになった瞬間、前衛はSPアビリティ(各ジョブが1つだけ持っている特技で2時間に1回しか使えない)とWS(ウェポンスキル。TPが100%以上になることで使える、武器固有の特殊技)を発動。長い旅路を経てボスを撃破することに成功したのである。ちなみに、ボスとの戦闘時間は約5分余り。NMと戦った時間に比べればかなり短く、そしてあっけない。
「歯ごたえがなかったね〜^^」などと各々が余裕のコメントを残し、プロミヴォン-デムをクリアしたのだ。かなり大変な道のりだったが、それだけにクリアしたときの満足感は何物にも変えがたいものがある。何よりLSのメンバーと一緒にやり遂げたうれしさは、知らない人とパーティを組んでいるときでは味わえないものだった。以降、残ったプロミヴォン-メアとプロミヴォン-ホラにもチャレンジし、そこで僕がとんでもない失敗をしでかすのだが、それはまた次の機会に……。
念願のアトルガン皇国へ、いざ行かん!!
初プロミヴォン攻略で勢いに乗った僕は、そろそろ新大陸「アトルガン皇国」を目指してもいいんじゃないか? と思い始めた。何といっても、あのNM戦とボス戦でかなりの自信がついている。プレイヤースキルも以前とは比べ物にならないはずだ。そうと決まれば向かうはジュノ大公国。アトルガンへ行くには、ここで発生するクエスト「アトルガン皇国へ」をクリアすると入手できる「渡航免状」が必要になる。
クエストをクリアするには上級、中級、下級のどれかを選んで要求されるアイテムを揃えるか、50万ギルを用意することが条件だ。当時の僕には50万ギルなんて大金はもちろんなく、上級、中級でそれぞれ必要なアイテムも揃えられない。ソロで挑戦するとなると、サポートジョブ取得クエストで必要になったアイテムを計6種類揃えることが条件の下級が適していたので、それらを落とすモンスターを倒すためにバルクルム砂丘とブブリム半島へと向かった。
レベル40以上ともなると、これらのモンスターはもはや「練習相手にならない」ものばかりで、すべてのアイテムを揃えるのに少々時間はかかったものの、苦戦することなく撃破できた。そしてついにジュノのNPCから渡航免状を譲り受け、マウラの港からアトルガン皇国へと旅立ったのである。
初めてアトルガンを訪れて驚いたのはシャウトがものすごく多く賑やかで、ジュノ以上にプレーヤーの密度が濃く、活気づいていたことだ。ミッションの勧誘やら聞いたこともないイベントの勧誘など、とにかく常に誰かがシャウトしている。NPCの数も多く、全員と一通り会話するだけでもかなりの時間を費やした。その際にイベントもいくつか発生したが、現段階ではよくわからないので、とりあえず後回しすることに決め、別の港口からナシュモへ向かうことにした。特に意味などなく、何となくいろいろな街を見てみたかったのだ。
そのときに乗った船の乗客は僕1人だけ。これは豪華なクルージングになるぞ、とナシュモに着くまでの時間を満喫しようとデッキに出てみると、もう1人(正確にはもう1体)お客さんがいた。頭足族(通称タコ)のNMだった。頭の中では絶対に勝てないとわかっていながらも、初めて訪れたエリアで浮かれていたこともあり、「計り知れない相手」の強さを計ってみたくなった。とは言え、何の作戦も練らずにいきなり攻撃をしかけるほど、僕も愚かではない。ナシュモに着く約1分前に攻撃をしかければ、たとえピンチになっても寸前のところで画面が切り替わってナシュモに到着するはずだ。そんな浅はかな考えを胸に、今か今かと時間が過ぎるのを待った。
触らぬNMに祟りなし……
NPCと会話して到着時間が1分前になったのを確認したのち、僕はデッキにいるNMに対して攻撃を始めた。まずは手始めにアシッドボルトを発射。ミス。ここまでは想定範囲内だった。次の瞬間、NMが僕に対して攻撃を始めたときに思わず声を上げてしまうほど驚愕した。その当時の僕はHPが900弱はあったのだが、一度の攻撃でその半分以上を削られてしまったのだ。
「ちょっと待ってくれ……!!」と僕の願いを聞き入れるはずもなく、NMの2発目の攻撃が僕にクリーンヒット。1分どころが10秒も持たずに戦闘不能になり、そのままナシュモの港に上げられてしまったのである。
強いと思っていたがまさかここまで……。「計り知れない相手」は伊達ではなかったことを身を持って体験した僕は、すごすごとホームポイントに設定していたジュノへと戻ったのである。さすがアトルガン皇国。一筋縄ではいかないエリアだ。もう少し経験を積んでから訪れたほうがよさそうだ。
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