ショパンがいまわの際に見た夢とは?――実在した音楽家をモチーフにした異色のRPG「トラスティベル 〜ショパンの夢〜」レビュー(2/2 ページ)

» 2007年06月27日 00時00分 公開
[小泉公仁,ITmedia]
前のページへ 1|2       

さまざまなアイデアが盛り込まれたバトルシーンが新鮮

 ゲーム自体は至ってオーソドックスな作りで、モンスターを倒して経験値を稼ぎ、それに応じてキャラクターのレベルがアップしていくところや、武器、防具、アクセサリーなどを装備してキャラクターの性能を高めるなど、古典的なファンタジーRPGと変わりない。

画像 画面の左側にあるゲージが行動時間を示すもの。初めは5秒に設定されていて、その間だけ移動や攻撃ができる。通常攻撃がヒットするとわずかながら行動時間が戻るので、実際にはもう少し長く動ける

 反面、バトルシーンには独自性が強く感じられる。この「トラスティベル」では、ターン制RPGとアクションRPGを掛け合わせたような「タイムシェアード リアルタイムバトルシステム」というものを採用している。基本はターン制で、敵・味方とも速さを表す「Spd値」の高い順にターンが回ってくるが、移動や攻撃はアクションゲームと同じようにプレイヤーが操作する。1回のターンに付き、行動できる時間は5秒と決まっていて、それが過ぎると次のキャラクターに順番が回る。Aボタンが通常攻撃、Yボタンが必殺技になっているが、いわゆるMP値のような概念がないので、行動時間内であれば何度でも必殺技を出せるというのも大きな特徴だ。

 また、RPGでよく見られる「火・水・風」といった属性がない代わりに、“光”と“闇”という要素があり、これが敵・味方の双方に影響を及ぼすという点も一風変わっている。例えば、同じモンスターでも明るい場所と暗い場所では姿形が変わり、攻撃力や耐久力も違ってくる。味方キャラクターの場合は、立ち位置の明暗によって必殺技が変化する。おもしろいのは、地形による影だけでなく、キャラクターに光が当たってできる影に入った場合も“闇”の状態になること。アイテムなどを使うことで、自分の周囲を明るく(暗く)することもできる。敵の特性を考慮しながら光と闇の効果をうまく使うと、戦闘が有利に進められるというしくみがおもしろい。

画像画像 影になった場所から日向に出ると、モンスターの姿がモーフィングする

画像画像 味方のキャラクターでは、必殺技が変化する。ビートの場合、明るいところなら「ビビッドショット」、暗いところでは「ソリッドシューター」が発動

 さらに、個々のキャラクターのレベルとは別に、パーティ全体の能力を示す「パーティクラス」の存在も特徴的だ。パーティクラスは経験値に依存せず、特定のボスを倒すことでアップする。そして、パーティクラスが上がると戦闘時のルールがどんどん変化していく。例えば、Lv.3になると必殺技の装備可能数が2つから4つに増え、Lv.4になれば敵の攻撃をいなして反転攻勢に出る「反撃」が使えるようになる。また、Lv.4以上では異なる必殺技をつなげて繰り出す「ハーモニーチェイン」も使用可能になる。序盤は単調に思えるバトルも、パーティクラスが上がるほどできることが増えて、爽快感も増幅されていく。なかなかおもしろいアイデアだ。

画像 攻撃のヒット回数が「エコー」(画面右下のゲージ)として蓄積され、これを多く溜めてから必殺技を発動すると、その効果が増幅される。エコーはパーティ全体で共有するので、例えば通常攻撃が速いキャラクターでエコーを溜め、攻撃力の高いキャラクターに引き継いで必殺技を出す、といった使い方ができる
画像 パーティクラスLv.4からは、エコーが24以上の状態で「ハーモニーチェイン」を出せるようになる。1つめの必殺技を発動後、画面に「Harmony Chain!」と表示されたときにもう一度Yボタンを押すと……
画像 2つめの必殺技が続けて出せる。このハーモニーチェインが使えるようになると、バトルが俄然おもしろくなってくる

意表をついた物語は興味深いが、最後は若干駆け足気味

 そのほかの目新しい要素としては、「エネミーフォト」と「スコアピース」があげられる。「エネミーフォト」は、ビートが持っているカメラでモンスターの写真を撮り、それを道具屋などで売却できるというもの。よく撮れている写真には高い評価が付き、高値で買い取ってくれる。「スコアピース」は、4小節の短い楽譜で、フィールド上の宝箱などで見つかることがある。これを集めて特定のNPCに話しかけると、セッションを行うことができる。といっても、音楽ゲームのように自分で演奏するわけではなく、相手が持っているスコアピースに調和すると思われるスコアピースを手持ちの中から選ぶだけだ。そして、セッションによってきれいなハーモニーができると、相手からレアアイテムをもらえることもある。

画像 バトル中にビートの必殺技「ビビッドショット」を発動すると、モンスターの写真を撮ることができる。これをショップに持ち込むと、買い取ってくれる
画像 スコアピースを持っていれば、特定のNPCとセッションが楽しめる。セッションがうまくいって高評価を得られれば、レアアイテムがもらえる

 また、フィールド移動、バトル、イベントシーンがほぼシームレスにつながり、ローディングで待たされる場面がほとんどないのは実に快適。画面上に「Now Loading」と表示されることは滅多になく、あってもほんの数秒で完了するのはすごい。

画像 ゲームはあくまでフィクションだが、一部にショパンの生涯に基づいたエピソードも盛り込まれている。例えば、彼の末の妹エミリアは結核で14歳のときに亡くなっているが、ゲーム中のショパンはポルカにエミリアの面影を重ねている節がある

 物語については、一言でいえばシンプル。伏線をいくつも張りめぐらせたものではないし、昨今の海外ドラマによく見られるような複雑系でもない。ただ、前半はゆったりと、これといった盛り上がりもなく淡々と進むのに、後半に入ると途端に駆け足になってしまい、なぜそうなったのか、そうしなければいけないのかという部分が若干説明不足に感じた。

 ただ、ゲームの難易度はかなり低めなので、RPGをあまりプレイしない人でも気軽に楽しめるはず。セーブポイントも多めに設置されているため、毎日少しずつ進めることができる。ストレスのないロードや操作の分かりやすさも含めて、遊びやすさという点ではXbox 360のRPGでナンバーワンの出来だろう。ラストシーンを見る限り、続編というのはちょっと難しいように思うが、次回作でも奇抜な着想と豊かなアイデアをふんだんに盛り込んだ新感覚のRPGを見せてほしい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/15/news106.jpg 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」
  2. /nl/articles/2405/16/news184.jpg どういう意味……? 高橋一生&飯豊まりえの結婚発表文、“まさかのタイトル”に「ジワる」「笑ってしまう」
  3. /nl/articles/2405/16/news185.jpg “ジョジョ婚”じゃん! 結婚報告の「岸辺露伴」高橋一生&飯豊まりえ、“連名サインの本名”に集まる驚きの声「直筆見て初めて知った」「これが正解」
  4. /nl/articles/2405/17/news026.jpg トリミングでシーズーを「ハムスターにしてください」とお願いしたら…… インパクト大の完成形に「可愛いーーー」「なんて愛おしい鼻毛カール」
  5. /nl/articles/2405/17/news019.jpg リモート会議中の“マナー違反”に共感の声が殺到 「全く同感」「マナー講師はなぜこれを教えないのか」
  6. /nl/articles/2405/16/news123.jpg “1K8畳”の新居を一人暮らし男子が模様替え→“ホテル”みたいに大変身する様子に「シャレオツ」「センスよー!」と称賛
  7. /nl/articles/2405/17/news054.jpg 「これは罠」「本当に紛らわしい」 現役清掃員が教える「保冷剤」を捨てる際の“落とし穴”が話題
  8. /nl/articles/2403/21/news104.jpg 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. /nl/articles/2405/17/news046.jpg 北陸新幹線に空のペットボトルを持って乗ると…… “あるもの”が見える実験に「知らなかった」「教科書よりわかりやすい」
  10. /nl/articles/2405/16/news194.jpg 牛丼チェーン「松屋」、深夜料金を導入 一部の店舗で
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評