平井一夫氏基調講演リポート――原点を見つめ直し、楽しいゲームを提供することが最優先課題東京ゲームショウ2007(2/2 ページ)

» 2007年09月20日 17時08分 公開
[平澤寿康,ITmedia]
前のページへ 1|2       

振動機能付きPS3コントローラ「DUALSHOCK 3」が発表される

 最後にPS3。まず始めに平井氏は、「残念ながら、全世界で同時発売ができず、一気呵成の立ち上げというわけにもいかなかった。」と語り、当初の予想よりも立ち上げが鈍く推移していることを素直に認めた。そのうえで、「我々はここで今一度PS3を『ゲーム機』であると位置付け、原点を見つめ直し、いかに楽しいゲーム、いかに楽しいインタラクティブエンターテインメントをユーザーの皆様に提供できるかに注力し、ゲーム機として十分に楽しんでいただけるように、PS3ならではのソフトや周辺機器を充実させることを直近の戦略の軸とする。」と、ゲーム機としてのポジションを明確にすると明言。そして、そのために何をすべきなのかが語られた。

 平井氏が挙げたポイントは4点。まず「パートナーとの対話を通じてよりよい関係を構築する」という点。ソフトウェア同梱パックのようなパートナーとのコラボレーションで行うマーケティング戦略や、開発環境の充実などが要素となる。このうち開発環境の拡充としては、ワールドワイドスタジオが持つPS3ソフト開発のノウハウの共有、開発者側の意見を吸い上げる機会の用意、開発効率を向上するための施策などが実行されることになるとしている。

 次に「タイトルの内部製作の一層の強化」。既にワールドワイドスタジオの設立によってタイトルの内製は強化されてきているが、外部のゲーム開発スタジオを買収するなどしてさらに強化していくとした。その一環として、「モーターストーム」を開発した「evolution studios」およびその子会社の「bigBIG」という2社のゲーム開発スタジオを買収したことが発表された。

画像 PS3発展のための4つのポイント。対話やリソースの共有、内製の強化、コストダウン、ユーザーの声の汲み上げなどが柱となる
画像 タイトル内製強化の一環として、「evolution studios」と「bigBIG」という開発会社2社が買収された

 3つめに、「半導体のシュリンクや部品点数の削減による積極的なコストダウンの実現」。プラットフォームホルダーとして、ハードウェアのコストダウンはビジネス上非常に重要な戦略であるが、当然PS3についても今後積極的なコストダウンが進められることになる。ただし、コストダウン実現の結果である販売価格の値下げなどについては、今回の基調講演では語られることはなかった。

 最後に「ユーザーの要望に真摯に耳を傾け、積極的に応用を検討していく」というもの。このポイントについて平井氏は、「他に勝るとも劣らない、最も重要な要素である」と語っていたが、その成果としてある周辺機器が発表された。それは、PS3用の振動機能付きコントローラ「DUALSHOCK 3」だ。PS3発売以降ユーザーから寄せられていた要望の中で最も多かったのが、PS3用コントローラ「SIXAXIS」への振動機能の搭載だったそうだ。当初技術的に困難であった6軸モーションセンサーと振動機能の同時搭載が技術的に解決されたことで、ユーザーの声に応える形で搭載が実現されたそうだ。DUALSHOCK 3の発売時期は、日本が2007年11月、北米およびヨーロッパが2008年春とされている。

 加えて、DUALSHOCK 3対応タイトルも発表されたが、それら対応タイトルはTGSのSCEIブースなどに展示されるとともに、実際にDUALSHOCK 3を利用して体験できるようになっている。TGSに足を運ぶのであれば、各タイトルの試遊だけでなく、DUALSHOCK 3の振動機能がどういったものなのか、という点もじっくり体験してみてもらいたい。さらに、発売済みタイトルについても、ネットワークアップデートによってDUALSHOCK 3に対応していくことになるそうだ。

画像 振動機能搭載PS3用コントローラ「DUALSHOCK 3」。振動機能が搭載されている以外は、形状・仕様ともSIXAXISとほぼおなじ。重さは若干重くなっている
画像 基調講演で発表されたDUALSHOCK 3対応タイトル。この他、既に発売されたタイトルもネットワークアップデートによって対応されることになるそうだ

ネットワーク時代に即した新しいビジネスチャンスを創出する

 各プラットフォームの戦略に続き、ネットワーク戦略についても語られた。

 現在、プレイステーションプラットフォームのネットワーク戦略における中核的存在である「PLAYSTATION Network」。PS3のネットワークユーザーは270万アカウントを超え、日々増えているが、今後もさらなるコンテンツの充実が不可欠。そう指摘した上で、「グランツーリスモ 5 プロローグ」が、12月13日にディスクメディアだけでなくネットワーク配信でも販売されることが発表された。そして、ネットワーク配信によるクルマ番組「GT.TV」の配信、自動車メーカーによる「オンライン・ディーラー」といった、ゲームの枠組みを超えたライフスタイルの提案を行っていくそうだ。

 また、PS3内での仮想空間によるユーザーコミュニティスペースとなる「PLAYSTATION Home」についても、「dress」という新しいサービスの提供も発表された。こちらは、SCEIブースでのデモンストレーションおよびムービーによる紹介が行われるので、取材次第別記事で紹介したいと思う。また、ゲーム内広告やヴァーチャルモールなど、ネットワークの世界に対応した新たなビジネスモデルも模索しているそうで、実際にノンゲーム企業との話し合いなども行っているそうだ。ただし、PLAYSTATION Homeのサービス開始時期が2007年から2008年春へと変更された。これは、さらなるサービス拡充を目指してのことだそうだが、楽しみにしていた人にとってはやや残念な発表であった。

 さらに、PLAYSTATION Network上のコンテンツ配信サービス「PLAYSTATION Store」についてのアップデート情報も語られた。その内容は、体験版やムービー、ゲームアーカイブスなどの基本となる配信コンテンツの拡充と、PCからPLAYSTATION Storeへアクセスしコンテンツダウンロードが可能になるというもの。PLAYSTATION StoreのPCへの対応により、PCにPSPをUSB接続し、PC経由でPSPで利用できる様々なコンテンツをダウンロードできるようになった。PLAYSTATION StoreのPCへの対応は、本日9月20日から開始されている。

画像 PLAYSTATION Homeのサービス開始は2008年春に延期された
画像 PLAYSTATION Homeの新サービス「dress」。名前からアバター関連の機能と思われる
画像 9月20日よりPLAYSTATION StoreがPCに対応。PCにPSPを接続し、直接コンテンツダウンロードが可能になった

PS3の圧倒的な処理能力や最先端の技術を活かし新しいエンターテインメントの世界を提供していく

 スタンフォード大学が推進している分散コンピューティングプロジェクト「Folding@home」。この演算能力が、先日1ペタFLOPSを超えたと発表されたが、この演算能力の8割はPS3が担っているそうだ。

 ネットワークで接続されたPCやPS3のCPUを活用し、膨大な演算能力を得て難病の解明を目指すというプロジェクトだが、接続されているPS3の台数はPCの約1/6ながら、全体の8割の演算能力を実現していることからも、いかにPS3が持つ演算能力が優れているかが分かるだろう。そして、この圧倒的な演算能力こそが、SCEIが目指すリアルタイムインタラクティブエンターテインメントのバックボーンになると平井氏。

 また、PS3が搭載するBlu-rayフォーマットも、膨大なデータを記録し、最高の画質・音質を楽しめるHD時代に欠かせないものであるとも指摘。その上で、「コンピュータエンターテインメントの世界は、今後ますますリアルな方向に進んでいくのは間違いなく、PS3は、半導体、フルHD、Blu-rayなどの最先端の技術を活かし、新しいエンターテインメントの世界を提供していきます」と語り、基調講演が締めくくられた。

 今回の平井氏の基調講演では、昨年の久夛良木健氏の基調講演のような大きなサプライズはなく、どちらかといえば、現状と将来の展望が淡々と語られたという印象であった。そういった中でも、DUALSHOCK 3の発表やPLAYSTATION StoreのPCへの対応など、ユーザーの要望に応えたり利便性を高める施策も実現されており、PS3の現状についてかなりの危機感を抱き、PS3のさらなる普及に向けて様々な施策を講じようとしていることはしっかり伝わってきた。PLAYSTATION Homeのサービス開始が延期されたことは残念だが、こちらも内容充実を目指しての延期ということなので、前向きに捉えたい。

 そして我々ユーザーも、今後の展開をしっかり見守るだけではなく、SCEIに様々な要望をぶつけていくべきだろう。今回の基調講演で語られた内容が確実に実行されていくのであれば、それこそがPS3を発展させる最大の原動力になるのだから。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/18/news004.jpg 「現場を知らなすぎ」 政府広報が投稿「令和の給食」写真に批判続出…… 識者が指摘した“学校給食の問題点”
  2. /nl/articles/2405/18/news066.jpg 「なぜ今になって……」 TikTokで“15年前”の曲が大流行 すでに解散の人気バンド…… ファン驚き 「戸惑いが隠せない」
  3. /nl/articles/2405/18/news055.jpg ガチ“別人級”……凄腕メイク術駆使したビフォアフが「日本の頂点」と話題、“フォロワー数580万人”の美容系インフルエンサー
  4. /nl/articles/2405/18/news003.jpg 0歳娘がはじめて歩けた瞬間、パパの顔を見て…… 号泣必至の“表情としぐさ”に「やったねえ!すごいねえ!」「かわいくて涙が」
  5. /nl/articles/2405/15/news106.jpg 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」
  6. /nl/articles/1611/04/news117.jpg 「ヒルナンデス!」で道を教えてくれた男性が「丁(てい)字路」と発言 出演者が笑う一幕にネットで批判続出
  7. /nl/articles/2405/18/news023.jpg 死んだはずのスズメバチ、お尻をよく見てみると…… 「亡者の執念発動してますね」「だから怖いんだよな」油断できない生命力におののく声
  8. /nl/articles/2405/17/news026.jpg トリミングでシーズーを「ハムスターにしてください」とお願いしたら…… インパクト大の完成形に「可愛いーーー」「なんて愛おしい鼻毛カール」
  9. /nl/articles/2405/17/news022.jpg 妻が作ったキャラ弁にフランス人夫と3歳娘が大爆笑! 「怖い」と言われた完成形に「蓋開けた瞬間w」「一緒に笑っちゃいました」
  10. /nl/articles/2405/18/news068.jpg 『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博がXで怒り 立て続く“誤配”で「三度目です」「次はもう知らん」
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評