CESA常任理事・辻本春弘氏に聞く「コンテンツ分野から見た東京ゲームショウの未来」(2/2 ページ)

» 2008年10月08日 15時52分 公開
[松井悠,ITmedia]
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カプコンとしてのCoFesta的展開

北米で先行して発売されたXbox 360タイトル「デッドライジング」

―― それでは、続いてカプコンの辻本社長としてお話をうかがいたいと思います。CoFestaの目的として「日本のコンテンツを海外でセールスする」というものがあります。そんな中で、以前からカプコンでは「バイオハザード」、「デッドライジング」や「ロストプラネット」シリーズなど、国内はもちろん、海外でも非常に好調なセールスを記録されています。

辻本 CoFestaが存在する前から、「海外という大きな市場で成長を見出していかなくてはならない」、または「いかに世界の人達に受け入れられるゲームを作っていくか」が、グローバルゲーム企業としてのカプコンのあり方として重要なポイントとなっています。

 昨今の東京ゲームショウを見ても分かるとおり、出展タイトルのうち、海外のメーカー、ディベロッパーのものが非常に多くなってきています。そして、それをゲームユーザーの方々は違和感を持たずに遊んでいる。つまり、日本のゲームだから、北米のものだから、欧州だから、アジアだから、というのは関係なくなってきているわけですよね。

 すでに、世界中のゲーム企業から有力なゲームタイトルが出てきています。発想力、企画力、技術力、そういったものが非常に高い水準にまで到達している。現行ハードの世代では欧米の技術力は日本メーカーに比べても遜色がありません。CoFesta本来の目的は日本側のコンテンツを世界に配信していくことになりますが、逆に「世界がこういうコンテンツを持っている」という現実を日本のゲーム業界内の人達に見ていただいて、いかに日本と欧米は違うか、日本が劣っているものは、それを克服していく必要がありますし、優れている点についてはそれをもっと伸ばしていかなくてはいけないということになってくると思います。そういった発想から、カプコンは常に日本が優先であるわけではなくて、各々の戦略に応じて海外に先にゲームを発売することもあります。

―― カプコンでは、今後、映像の事業にも乗り出していくということですが。

辻本 はい。私たちカプコンはゲームから発生したコンテンツをいかに多面的に展開していくかというミッションを推進しています。それは「ワンコンテンツ・マルチユース」という戦略ですね。

 映像事業展開は、カプコンがゲームのライセンスを映画制作側に許諾してきましたが、今後は更に積極的に推進していきます。現在制作中の「ロストプラネット」の実写映画は製作費用が相当かかるということですが、「カプコンも映像事業を始めますから、出資しましょう」というのはなかなかリスクが高いですよね。我々の本業は“魅力的なゲームコンテンツを世に送り出す”ことですから、やはりゲームに対して投資を行うのが優先です。ですが、今回の「ストリートファイター」実写映画と、バイオハザードのフルCG映画の「バイオハザード ディジェネレーション」への出資は、ライセンス契約だけでは分からない、映画の取り組みへのノウハウなどを体得するために行っています。今後、こういったやり方を継続するかどうかは今回の結果次第ということになります。「バイオハザード ディジェネレーション」は10月18日から、2週間限定で劇場公開されますが、ぜひみなさんに見ていただきたいですね。

―― そういった映像事業とゲーム事業を含んだコンテンツというところでは、まさにCoFestaのイメージに合致するとこがあると思います。

辻本 そうですね。例えば「ロストプラネット」はE3で実写映画化の発表もしましたし、今回も東京ゲームショウでバイオハザードのフルCG映画「バイオハザード ディジェネレーション」の試写会も実施しています。つまり、CoFestaの思想である「コンテンツを融合していく」ということをやっている。こういったことを率先して実践することによって、コンテンツ業界のみなさんに対してご提案できれば幸いです。

 今回のゲームショウでは、「バイオハザード ディジェネレーション」だけではなく、「ストリートファイター」もプロモーション映像を流す予定ですから、そちらもぜひ注目していただきたいです。

 将来的には、東京ゲームショウで出展されるゲームタイトルの映画が、東京国際映画祭のオープニングで上映される、あるいはその逆も生まれてくると面白いでしょうね。

TGSでの試写イベント後、10/18から東京・大阪・名古屋で2週間限定でデジタル上映される「バイオハザード ディジェネレーション」。アンブレラ事件から7年後のクレアとレオンの活躍を描いたフルCG映画だ

日本から海外へ、海外から日本への架け橋

―― 海外への展開という点から見ますと、日本ではまだあまりメジャーではない、ゲームの開発情報、技術情報についてもカプコンは積極的な開示を行っていますね。

辻本 積極的かどうか、と言われると他社との比較になるので、そこは分かりませんが、カプコンとしてSIGGRAPH(アメリカで開催されるコンピューターグラフィックスの会議・展覧会)などさまざまな開発者会議に参加しております。諸種ご協力いただいた会社さんに対しカプコンの新技術をそういう場で発表して、みなさんからまたフィードバックを頂きたいと思っています。

 そもそもの企業文化として、開示することは大事だと思います。それは海外企業ではそうやっているからではありません。もともと、カプコンの技術者自身、自分たちの技術が世界に対してどこまで戦えるのかを調べるために、国際会議に出て自分たちの力量と他社のレベルを測っているというのはあると思います。

―― カプコンでは自社タイトルを海外に送り出すだけではなく、海外タイトルを日本でもローカライズされていますね。代表的なところでは「GTA(グランド・セフト・オート)」シリーズなどがあります。こういったビジネスを行う理由としては、もちろん国内でのセールスが見込まれることもあるでしょうが、その他にも何か理由はあるのでしょうか。

辻本 ビジネス上の利益が上がることはもちろんですが、もう1つの理由としてあるのは、日本のゲームユーザーの皆さんに、海外で売れているゲームを認知、体験してもらうことですね。それによって、私たちがやろうとしていることの本質を認識してもらえる。日本のゲーム業界はこのまま行くと鎖国になる、北米・欧州に対して、日本のゲーム産業のあり方がいびつなものになる可能性があるということです。

 そこで、もっともっと海外の素晴らしいゲームを日本側の皆さんに紹介することによって、ゲームは国際的なものであることを理解してもらう、つまり相互の架け橋となりたいのです。例えば、映画や音楽は産業としては海外からスタートしましたが、洋画、洋楽は問題なく日本で受け入れられていますよね。そう考えていくとゲームだけ海外のものがヒットしないいというのはやはり不思議です。日本で生まれた家庭用ゲームのファミコンから25年が経って、欧米企業も十分に開発力が高くなりました。そこで「海外で売れているものというのは、こういうものである」、「海外のゲームプレイヤーはこういうものを楽しんでいる」ということを私たちが常にアピールしていれば日本のゲームプレイヤーも先入観なく遊んでもらえるようになると思っています。

 こういったゲーム文化に対するアプローチこそが日本のゲーム業界が今後やっていかなくてはいけない「世界に適応したゲームの開発」につながっていくわけです。

―― 日本で売れているゲームが海外で売れない、海外で売れているゲームが日本で売れない、そういう状況がこのところずっと続いています。その理由の1つとしてローカライズの問題が挙げられますが、カプコンではどういった対応を行っているのでしょうか。

カプコンは自社で採用している新技術についてのカンファレンスを行っている。写真はロストプラネット

辻本 カプコンの対応はかなり早かったと思います。プレイステーションで発売した初代の「バイオハザード」(1996年発売)ですが、開発時点で音声は英語、日本語字幕の形式に決めていました。その頃から海外市場を認識していたのです。映画の場合、日本人は吹き替えよりも字幕を好んで見る方が多いですよね。そういう文化も考えていました。

 あの当時、そういったアプローチを試みた結果、「英語の言い回しがおかしい」とか、フランス語、スペイン語で字幕をつけていくと、そのまた訳がおかしい、とゲーム雑誌に書かれてしまいました。こういった海外での洗礼も早くから体験できたことで、得られたものは多かったです。例えば、ローカライズチームの拡充を行って、各種言語に通じたネイティブの方を多数採用しています。今後、カプコンのゲームがもっといろいろな国で楽しまれるようになっていくと思います。

「デッドライジング」(C)CAPCOM CO., LTD. 2006 ALL RIGHTS RESERVED.
「ロストプラネット」Character Wayne by (C)Lee Byung Hun/BH Entertainment CO., LTD, (C)CAPCOM CO., LTD. 2006 ALL RIGHTS RESERVED.
「バイオハザード ディジェネレーション」(C)2008 カプコン/バイオハザードCG製作委員会


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