二次元と三次元が交わる場所 実在のメイドさんが描くメイドマンガ「私設図書館シャッツキステへようこそ!」:虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第30回
実在する私設図書館カフェ「シャッツキステ」の総メイド長・エリスさんが店内で起きたエピソードや、個性豊かなメイドたちとのやりとりを描きます。
ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。
「71万円はたいてiPhone 6 Plusを検証した」とか、わけのわからん記事もまれによくあるネット系ニュースサイト「ねとらぼ」ですが、この連載が始まる前から一読者だった社主にとって「ねとらぼ」は、アニメやゲームを扱うけれど直球で秋葉原を扱った記事は少ないな、という印象でした。
理由はさまざまあるのでしょうが、その1つはネットの普及によって「アキバ系文化」がもはや秋葉原という土地だけにとどまらなくなり、さほど特殊なものでなくなったことがあるのかもしれません。滋賀の山奥に居を構える社主でも、その気になればネット経由で秋葉原と同じ品物を買うことができてしまいます。
それはモノだけでなくサービスも同様で、その代表格とも言える名物「メイド喫茶」も今ではちょっとした地方都市なら必ず1件見つかるほどにまで広まりました。ただ、その割に「メイド喫茶に興味はあるけど、何とも入りにくい」というのが、実際のところではないでしょうか。その気持ち、よく分かります。実は社主もメイド喫茶に行ったことがありません。
興味本位で入ったはいいものの、じゃんけん大会に強制参加させられたり、愛想の悪いツンデレキャラのメイドに無言でオムライス出されたり、挙句の果てには有料ビンタを提供する下剋上なメイド様がいたらと思うと、怖くて後ずさりしてしまうかも。森薫先生の「エマ」や、先日11年ぶりに第2巻が発売された「シャーリー」、瑚澄遊智(こすみゆうち)先生の「Dear Emily…」といった素敵なメイドマンガを通じて、その世界を知った社主としては、どうしても「萌え萌えきゅん♪とか、それメイドじゃないだろ!」と言いたくなってしまうわけです。
マンガを通じてメイドに抱いてきた「本格派」のイメージと、テレビなどを通じて知る偏った情報のギャップのせいでメイド喫茶には足を運んだことがないのですが、実は行ってみたいお店が1件だけ、秋葉原にあります。それが今回紹介するマンガ、有井エリスさんの「私設図書館シャッツキステへようこそ!」(エンターブレイン)に登場するメイド喫茶「私設図書館シャッツキステ」です。
「私設図書館シャッツキステ」は実在する私設図書館カフェ
秋葉原の情報を現地から毎日発信しているブログ「アキバBlog」さんにて連載中の4コママンガを収録した本作は、実在する私設図書館カフェ「シャッツキステ」の総メイド長・エリスさんが店内で起きたエピソードや、個性豊かなメイドたちとのやりとりを描いた作品。「屋根裏部屋のメイドたち」として始まった第1章(2006年〜2009年)と、「私設図書館のメイドたち」として現在も続いている第2章(2009年〜2011年)からなっています。
本作最大の特徴はやはり実在するお店での出来事をメイドさん本人がつづっているということに尽きるでしょう。メイド喫茶を舞台にしたマンガ、あるいはメイドを主人公にしたマンガはたくさんありますが、登場するメイドさん本人に直接会える作品というのはそうそうありません。
そんな特殊性をひとまずおくとしても、「シャッツキステへようこそ!」は1つのマンガとして見て、十分に優れた作品でした。まさに「コミカル」という言葉が似合う、楽しい作品に仕上がっています。
「屋根裏部屋のメイドたち」という舞台から始まる第1章には、作者のエリスさんはじめ9人(人形含む)ものメイドさんが登場するのですが、全員キャラが立っていて実に個性的。新しいメイドとしてクールビューティーな外見のダナさんを雇うエピソードでは、エリスさんが履歴書をに目を通しながら、「えーと今居るのは、チビッ子、ボクっ子、魔女っ子、メガネっ子、ロリっ子、天然っ子… キャラかぶりナシ! 採用!!」とギャルゲー基準で採用を決めているあたりからも、その一端がうかがえると思います(ちなみにダナさんはそのクールな見かけとは裏腹に「お笑い系&極貧キャラ」だったそうです。まあキャラかぶりはしていないので、結果オーライなんじゃないでしょうか……)。
そんな個性豊かな面々の日常を2章にわたってユーモアたっぷりに描いており、読んでいて実に微笑ましかったです。あと本連載を通じて少女マンガだけでなく、あわよくば百合マンガの普及をも目論んでいる社主としては、作品の端々から淡い百合テイストが感じられたこともぜひ強調しておきたいところ! ほぼオールカラー、描き下ろしありの223ページで1000円(税別)は本当にお買い得だと思います。
二次元と三次元が交わる場所に
最初にも書いたように、作中のメイドさんが実際にお店で働いているという試みは本当に面白いと思うのです。特に本作の場合、現場のありのままを描く「実録もの」と似ているようで、全く逆のことをしているのが面白い。先に「シャッツキステ」という物語(作品世界)があり、その物語に沿うようにして、メイドさん達が日々働いているのです。
エリスさんは「あとがき」でこのように書いています。
「二次元大好き!」な人たちがたくさん集う街で、その魅力をどうやったら伝えられるのか……私の出したひとつの答えが「シャッツキステ」です。
二次元世界の物語の楽しさを現実の三次元にいながら触れることができる場所。
二次元と三次元が交わる場所になるように……と、今でも日々試行錯誤の毎日です。
すばらしいマンガを読んで「この世界に入りたい」と憧れた人は多いことでしょう。かく言う社主もこの10年ずっと「蟲師」の住人になりたいと願ってきました。それゆえ「二次元と三次元が交わる場所」というエリスさんの理念には、大変共感できるものがあります。
「シャッツキステ」というお店はこの物語に共感を覚えた人にとっては、まさに夢のような時間が過ごせる場所ではないか、そんなふうに社主は思います。
一刻も早く「絵本入り込みぐつ」が発明されないかと日々ニュースをチェックしつつ、今日はこれにて筆を置きます。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
関連記事
- 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第29回:“四者四様”の恋愛模様が奇跡の連鎖を起こす オムニバスマンガ「今日の恋のダイヤ」の秀逸な構成にうなった
月が変わって、季節はもう秋ですねえ。女心と秋の空……そんなわけで女心をテーマにした大人向けのマンガをご紹介します。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第28回:読んでるこっちが照れるだろ! 隣の女子にちょっかい出されて焦りまくる中2男子がかわいいマンガ「からかい上手の高木さん」
ところで席が隣っていうシチュエーションいいですよね。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第27回:アイドルのピンチを救うのは“同じ声”のお笑い芸人 ダブルヒロインのドタバタコメディマンガ「O/A」
ダブルヒロインの作品といえば映画「アナと雪の女王」や「思い出のマーニー」が話題ですが、社主のおすすめはこの「O/A」です。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第26回:ウソから始まる二重恋愛にひやひや――マンガ「ライアー×ライアー」の金田一蓮十郎先生に虚構新聞UKが会いにいってきたぞ!
本連載のテーマの1つは「男性読者にとってなじみが薄いものの、読んでみると実はおもしろい少女マンガへの綱渡し」なのですが、金田一蓮十郎先生はまさにそのテーマにふさわしいマンガ家さんです。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第25回:泣いて笑ってデビュー夢見て 漫画家アシスタント漫画「アシさん」を読めば漫画がもっと好きになる
作者は「たいようのいえ」で「第38回講談社漫画賞」を受賞したタアモ先生です。 - 虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第24回:「じゃ 吐こっか」(にっこり) マンガ「シュガーウォール」でアブノーマル青春ラブの世界へ旅立ってみないか
甘〜い青春ラブコメかと思いきや、不穏な空気が流れます。そして……社主、思わず声を上げるの巻。 - 「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」バックナンバーはこちら
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
-
誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
-
小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
-
娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
-
プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
-
1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
-
メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
-
子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
-
巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
-
ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
- 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
- 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
- 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
- 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
- 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
- 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
- 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
- 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
- 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
- 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」