問題を4文字しか読んでいないのになぜ答えられる? 競技クイズの裏側と青春を描く「ナナマルサンバツ」
「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」第73回。高校生クイズ出場を目指す高校時代を送っていた社主が、競技クイズの世界を描いたマンガ「ナナマルサンバツ」の魅力を熱く紹介。
ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。
さて、今回もいきなりクイズから。
【問題】「なぜ山に登るのか」という質問に、「そこに山があるから」と答えたことでも知られる有名な登山家は?
……答えはジョージ・マロリー。こうして最後まで問題を聞けば答えられる人は多いかもしれません。けれど、もしこれが対戦相手のいる早押しクイズなら、読まれているどのタイミングでボタンを押すべきか――。
今回紹介するのは、そんな戦うクイズ=競技クイズの世界を描いたマンガ、杉基イクラ先生の「ナナマルサンバツ」(~12巻、以下続刊/KADOKAWA)。やはり夏といえばクイズですよ。
早押しは「わかってから押してたんじゃぜんぜん遅い」
そもそも「競技クイズ」とは何か? 簡単に言えば、クイズで勝つことを目的として日々練習に励む知的スポーツの1つ。少しなじみの薄い世界かもしれませんが、競技クイズサークル「○○大学クイズ研究会」などの名前くらいなら聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
本作「ナナマルサンバツ」は、ふとしたきっかけで、その競技クイズの世界に足を踏み入れた高校1年の文学少年・越山識(こしやま・しき)と、彼が所属する文蔵(ぶぞう)高校クイズ研究会を中心に、クイズガチ勢の世界を描いた作品。高校時代、高校生クイズ選手権出場を目指す期間限定のクイズ同好会に参加していた社主(毎年予選落ち)にとって、本作に出てくるクイズのあれやこれやは「そうそう、分かる!」のオンパレードでした。
競技クイズが単なる知識の発表会と違うのは、それがバトルだということ。「どうすれば相手より0.1秒でも早くボタンを押せるか」「どういう作戦を取れば最短で勝てるか」という戦略があるから競技なのです。識と同じクイズ研究会のヒロイン・深見真理が、早押しクイズ初体験の識に語りかけた「答えがわかってから押してたんじゃぜんぜん遅いのよ」というセリフはまさにその通り。
ここで相手より早くボタンを押し勝つ競技クイズならではの戦い方を1つ紹介しましょう。例えば、冒頭に紹介したクイズなら
【問題】「なぜ山/
ここで「答え:ジョージ・マロリー」が確定です。「なぜ山に登るのか」まで聞いているようでは全然遅い。
答えは知ってて当たり前。その上で解答の確定ポイントをいかにして見極めるか。これが競技クイズの戦いなのです。どうして「なぜ山」でジョージ・マロリーが確定するのかは読んでのお楽しみとしておきますが、他にも早押しボタンが反応するギリギリまでボタンを半押し状態にしておく「押し込み」なんていうテクニックもあります。
クイズの女帝は「ですわ」口調のメガネ女子 個性的な競技者たち
また、挑むクイズも早押しだけでなく、○×問題、答えを書き取るボード問題など多種多様。知識・技術・駆け引きだけでなく、設問に合わせて臨機応変に対応していく適応力、さらには反射神経まで、持てる能力を総動員してたった1つの正答を導き出す戦いだと考えれば、これがれっきとしたスポーツだということが分かってもらえるかと思います。
本作の魅力は技術や戦略だけに留まりません。文蔵高校や全国模試文系1位の部長・大蔵率いる東の王者・開城学園など、全日本U-18クイズ選手権「SQUARE」優勝を目指す各校の人間関係と、彼らが繰り広げる熱いドラマも見どころの1つ。負けた悔しさで涙し、ギリギリの接戦をものにして歓声を上げ、ライバルと切磋琢磨し、そして恋が芽生えたりもする。青春ってステキですね(遠い目)。
主要な登場人物だけでも20人近くとかなり多いにもかかわらず、インテリメガネにチャラい系、質実剛健、残念美人、弱電女子、女装小悪魔中学生まで、満漢全席、よくぞここまで集めたと言わんばかりに個性あるキャラが出揃っている点にも注目。なおメガネ女子好きとしては、最新刊の表紙を飾った麻ヶ丘女子高校クイ研部長、「女帝」こと苑原千明様は絶対に外せません。語尾が「ですわ」とか最高じゃないですか!
とまあ、ここまで大まかに紹介してきましたが、クイズ番組で2度優勝した親のもとで、幼い頃から「アメリカ横断ウルトラクイズ」を見て育ち、クイズ番組の小学生大会予選に何度も連れて行かれ(落ちたけど)、大人になったらウルトラハットをかぶってニューヨークの摩天楼を飛ぶ日を夢見た者として、読んでいてこれほど心がムズムズするマンガってなかなかないのですよ。解けた問題にドヤ顔、知らない問題にぐぬぬ、読みながら心の中の早押しボタンを何度連打していることか。
「なりたかったけどなれなかった自分と主人公の重ね合わせ」が、マンガなどの物語が持つ充足感だとするなら、本作の主人公・識はまさに自分の分身のような存在です。競技クイズを通じて分かり合える仲間やライバルを作り、「SQUARE」という大目標に打ち込む少年少女のひたむきな姿を見ていると、90年代後半、クイズ番組氷河期の直撃に見舞われて叶えられなかった「クイズと送る青春」を疑似的に体験しているような気になれるのです。あの悔しさを味わった全ての氷河期世代にぜひ読んでほしい。
“クイズに賭ける青春もある”を知るのにうってつけ
近頃ずいぶんクイズ番組の数が戻ってきたのは喜ばしいことですが、解答席に座っているのはインテリタレントばかり。こうなった裏には「セミプロの出現によるクイズの高度化」という過去の歴史があります。確かに「なぜ山……」→「ジョージ・マロリー!」では、ちんぷんかんぷんで楽しくないと言われても仕方ない。競技クイズの洗練はスピード感ある戦いという光を生むと同時に、視聴者置いてけぼりという影も落としました。
では「ナナマルサンバツ」のようなガチ勢による競技クイズは、内輪のクイズ大会というタコツボにとどまるしかないのか?
そうではない、と社主は思います。何より本作が6年12巻と続いている事実そのものが、クイズに対する世間の好奇心が衰えていない証拠です。本紙誤報記事「森永グロス」が問題に採用されたこともあるゲーム「クイズマジックアカデミー(QMA)」の人気ぶりを見ても、工夫次第で一般参加型クイズ番組が復活する可能性は十分あるように感じます。そしてそのためには、やはりまず若い人たちに足を踏み入れてほしい。
本作は「こんな青春が送りたかった」というクイズ氷河期世代の懐古と理想の世界であると同時に、将来のクイズ界を担う中高生に、知る喜び、知識で戦うカッコよさ、そして「クイズに賭ける青春もある」ということを知ってもらう最良の作品だと確信しています。
まさに「知は力なり」を肌で感じられる作品といったところですが、最後にこの格言で知られるイギリスの哲学者の名前を【問題】として、今日はこれにて筆を置きます。ハムじゃないよ。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
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