VRChatの住人に聞く「現実は不便」のリアル(前編) バーチャルはリアルと置き換えられる(2/2 ページ)

» 2018年03月15日 16時59分 公開
[Minoru HirotaPANORA]
PANORA/株式会社パノラプロ
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「リア充」ならぬ「バーチャ充」

 最初に話を聞いたのが、メディアアーティストの坪倉輝明(@kohack_v)氏。以前、PANORAでも3Dスキャンしたアバター同士でVRChat内でVRオフ会を開いた際に紹介し、2月末の「VTuberハッカソン」ではVRChatで使える動画撮影スタジオのワールドを制作した人物だ。







 ほかにもVRChat内に自分の事務所をワールドとして開設して、作品を展示したり……。



 自分のアバターをVR空間に出現させてラジコンのように操作するなど、まさにアートな試みを展開している。



 そんな坪倉氏に聞いて出て来たのが、「リアルが不便になる」という言葉だった。

 坪倉氏が、VRChatを知ったのは先のインタビューでもピックアップしたねこます氏がきっかけだったという。昨年12月にバーチャルYouTuberでねこます氏がブレークし、彼がVRChatを強力に押したので興味を持った人々が数多く流れ込んで来たという経緯がある。

 坪倉氏は、それよりも前からTwitterでねこます氏をフォローしていた関係でVRChatの存在は知っており、すでに3Dスキャンした自分の全身データがあったので、「バーチャル空間にリアルアバターで入ってみた」ネタをやりたかったとか。しかし、いろいろあって放置していたところ、12月の大ブレークで危機感を覚えて本腰を入れて参加するようになった。

 最初の2、3日は、ハブやワールドを巡るだけで特に何もせず、何をしていいかもわからなかったが、日本人に会えたことをきっかけに話しかけたら遊びかたをいろいろ紹介してもらえた。

「今でこそアバターやワールドを制作していますが、最初はつくれることすら知らなかった。そこでまず引かれたのが、独自の文化だったんです。カワイイキャラがいっぱいいて、非日常的なところもあり、何もしなくても楽しい。キャラと戯れているだけで満たされるものがあって、癒された」(坪倉氏)

 VRChatの彼(彼女?)らは、とにかくカワイイの研究に余念がない。VRゴーグルとセットで使うハンドコントローラーに割り当てている表情の出し方、耳やスカートのキレイな動かし方など、細部に渡って考え抜かれている。

「やってることが新人類なんです。この前、Twitterでアンケートをとったら、300人中4割以上は毎日4時間以上VRChatにログインしているとか。みんなで一緒に寝る『VR睡眠』や、スポーツ大会を開いてみたりとか、新しい文化がここで生まれている」(坪倉氏)



 最近では「リア充」ならぬ「バーチャ充」なので、生活の軸をVRに移したいという。

「VRは現実と置き換えられる。世界が3次元で見られるうえ、手足もきちんと動くので、スキンシップが取れたり、普通に手でものを持ったりと、ネットゲームをデスクトップ上でやるのと感覚が全然違う。今では現実よりバーチャルの方が充実しているので、全部バーチャルに移せないかと思っている。食事や排せつさえなんとななったら、ログアウトする必要がなくなるなと。現実というワールドが不便になってきたので、みんなバーチャルで過ごそうよと」(坪倉氏)

 MMORPGなどのネットゲームや、「Second Life」に代表されるメタバースで夢見られてきたバーチャル世界への移住が、身体性を伴うVRで今、現実味を帯びてきている。


※中編の「女の子の寝顔がカワイイ『VR睡眠』の魅力」はこちら


(TEXT by Minoru Hirota



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