アフリカで最も希少な動物の一種として知られるケニアボンゴ(マウンテンボンゴ)が、長らく姿を消したと考えられていた森林で再び確認されました。
撮影された場所は、研究者たちが主要な生息地とみていた地域から約200キロも離れた森林地帯。絶滅への懸念が高まる中で飛び込んできた朗報に、保全関係者からは喜びの声が上がっています。
野生個体は40頭未満か。危機的状況にある“森の幻影”
ケニアボンゴは、ケニアの山岳森林にのみ生息する大型のレイヨウです。赤褐色の体に白い縞模様が入り、オス・メスともに長い角を持つ美しい動物ですが、警戒心が非常に強く、人前に姿を現すことは滅多にないといわれます。その希少性から“森の幻影”とも呼ばれており、野生個体の減少が深刻な問題となっています。
イギリスのチェスター動物園がケニア野生生物公社などと協力して実施したAI活用調査では、主要生息地であるアバーダレ山脈周辺で確認された個体は、わずか28頭。マウンテンボンゴ・プロジェクト(MBP)のレンジャーも、野生個体は40頭未満である可能性が高いとみています。
かつては複数の地域に分布していましたが、狩猟や生息地の減少によって生息域は大幅に縮小。過去5年以上にわたり、野生個体群はほぼアバーダレ山脈に限られると考えられていました。
生息地から200キロ離れた森で撮影。保全関係者も驚き
そんな中、2026年5月31日の「世界ボンゴの日」に合わせて公開されたトレイルカメラの映像が大きな注目を集めました。カメラが捉えたのは、ケニア西部のマサイ・マウ森林を歩く野生のケニアボンゴです。
マサイ・マウはアバーダレ山脈から約200キロ離れており、近年ボンゴの存在はほとんど確認されていませんでした。そのため、この地域では局所的に絶滅した可能性も指摘されていました。
ところが今回、設置されたトレイルカメラが決定的な瞬間を捉えたのです。
MBPのオペレーション・ディレクターを務めるオスカー・ダイアー氏は、「最初に写真を確認した時の興奮は信じられないほどだった」と振り返ります。
さらに模様の分析から、この個体は2018年にも確認された年長のオスである可能性が高いことが判明。その後の追加画像からは、若いオスと若いメスも確認され、この地域に複数の個体が生息している可能性が浮上しました。
保全の重要性が改めて浮き彫りに
今回の発見は保全活動にとって大きな希望となりました。もしマサイ・マウに安定した個体群が残っているのであれば、アバーダレ山脈以外にも重要な遺伝子集団が存在することになります。
マウント・ケニア・ワイルドライフ・コンサーバンシー(MKWC)のロバート・アルホ氏は、「マウの個体群はマウンテンボンゴにとって重要な遺伝子プールであり、長期的な保全に極めて重要だ」と説明しています。
一方で課題も少なくありません。現在、世界の動物園や保護区には約900頭のケニアボンゴが飼育されていますが、野生個体は依然として極めて少数です。森林伐採や農地開発による生息地の縮小も続いています。
ボンゴは水が豊富で肥沃な森林を好みます。しかし、そのような土地は人間にとっても利用価値が高く、開発圧力を受けやすい地域でもあります。そのため、保全団体は飼育下繁殖による個体群の維持だけでなく、野生個体が暮らす森林そのものを守ることが不可欠だと訴えています。
長年にわたり「もうこの森にはいないのではないか」と心配されてきたケニアボンゴ。今回の発見は、失われたと思われていた個体群が今も生き続けている可能性を示しました。森の奥深くでひっそり暮らすこの希少なレイヨウが、今後も野生のまま生き続けられるかどうかは、これからの保全活動にかかっています。
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