一歩先を行く「アフォーダンスデザイン」を意識したのがXbox 360:プロジェクト「Xbox 360」(5/5 ページ)
――村田さんは工学部応用物理学科のご出身ですが、なぜデザインの世界に入られたんでしょう。
村田 わたしは単純にエンジニアであっただけではなくて、美術部の部長もしていたんです。絵を描いていました。
――では、三洋電機に入られたときも、デザインセンターの希望だったんですね。
村田 いいえ、もちろん最初はエンジニアとしての採用でした。研究所に行く予定で面接を受けたんですが、その場で「インタフェースをやりたい」と言ったんです。そうしたら「インタフェースって何?」と聞かれまして。そのころはまだインタフェースという言葉は日本には浸透していなかったんですね。インタフェースの中でも、マンマシンインタフェースに興味がありました。コンピュータの存在が大きくなるに従って、人間との隔たりが大きくなっていくだろうと考えていましたので。Windowsが出てくるまでは、実際そうでしたよね。PCを扱うのは大変でした。Windowsの登場によって、インタフェースが格段と進歩したんですが、そういう仕事をしたかったんです。しかしそう言うと「うちにはないな」と(笑)。強いて言えばデザインかな、となってデザインセンターに配属されました。
いまではどこの会社にも、デザイン部門にインタフェースを担当する部署はあります。ハーズ実験デザイン研究所でも、携帯電話のインタフェースなどを扱っていますし、Xbox 360の「Xboxダッシュボード」も一部は担当しています。
ただ、エンジニアリングが分かっているデザイナーであったので、かなり得をしたと思います。難しい仕事があったとしても、「この基盤をこっちに動かしたら?」と言えるのは強みでしたね。ふつうのデザイナーでしたら、言われたとおりにやるしかないと思うんですが、わたしの場合はエンジニアに提案ができるわけです。初めはエンジニアも反発するんですが、そのときに専門用語をいくつか言うんですよ。「ここループするぞ」とか「ハウリング起こすぞ」とか。そうするとエンジニアも「そっちのほうがいいかも」と納得します(笑)。そのうちに、エンジニアとも仲がよくなり、いいスペックの製品ができあがりました。「世界最小・最軽量」といった製品をたくさん作ることができました。
――それが、三洋電機の「It's」につながっていくわけですね。
村田 デザインは担当していませんが、ニューベーシックというIt'sのコンセプトは作りました。ふつうエンジニアだったら、ハイスペックに行くと思うんですよ。でもわたしは逆のことをやりました。「そいじゃえ」と。みんなオーバースペックのものばっかりだったので、機能をどんどんと削っていって、シンプルなものにしようと作ったのがIt'sのコンセプトでした。それが当たりまして。作ってから20年くらいたちましたが、いま家電メーカーで残っているブランドは、It'sくらいだと思います。
――今度「Xbox 360 LOUNGE」でMETAPHYSの展示会が行われますね。
村田 2005年12月19日〜2006年1月6日の期間で「METAPHYS展」を行います。そこでは、現在発表している作品以外にも、TVやCDプレーヤーなど、アフォーダンスデザインを取り入れた作品を発表します。いままでにないデザインで、ギミックインタフェースが取り入れられています。きっと皆さん驚かれると思いますよ。こう来たか、と。
新しくできる表参道ヒルズにあるIDEAギャラリーでも、同様にMETAPHYS展を開きます。2月11日からを予定しています。そこではボードゲームや扇風機も展示します。そのころには、掃除機も発売されているでしょう。掃除機は「Gマーク金賞」にノミネートされていたんですが、実機ではなくモデルだったので金賞を逃してしまいました。
現状では、技術力のある中小企業でも、自分のところでは販売ができませんから、十分な利益を上げることができないんです。低い利益率で商品を納めなければならない。加えて、価格の安い海外製品に押されてしまいますし、自分たちの技術力を生かせずにもんもんとしているわけです。そこで、協賛企業を募って、新しいビジネスモデルを追求したのがMETAPHYSなんです。先日説明会を開いたら70社程度集まりました。安価な製品ではなく、大手メーカーが作らないような、高付加価値の製品をどんどん作りたいですね。
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