インタビュー
» 2006年02月13日 17時51分 公開

寒い冬をさらに寒くする!? ホラーアニメ「地獄少女」に迫る (3/3)

[ひろいち,ITmedia]
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 「地獄少女」の基礎、地盤を追ってきたが、ここからはその内面に迫っていこう。まずは、本作のテーマについて伺ってみた。

 大森氏は「人を呪わば穴ふたつという、本作の象徴的なセリフがあるのですが、やはりこれに尽きますね」とひとこと。わかりやすく言うと喧嘩両成敗ということらしい。阿部氏も「実は企画の段階では、“依頼人も地獄行きになる”という設定はなかったんです。あくまでも必殺仕事人のように“地獄少女が依頼人の怨みをはらしてくれる”というシンプルなものでした。けれども、今の世の中の価値観で考えるとこれは違うんじゃないかなと。自分はリスクを負わずに、他人にお願いするだけで悪者を倒してもらえて大団円なんてありなのかなって。それが現在のパターンの始まりでした」とのこと。

 この疑問から生まれたパターンにより、本作はより深みを増していく。悩み、悲しみ、強さや弱さなど、人の様々な感情がそこに集約されてくるからだ。たとえば第6話では、遙という少女の一家が、父親の上司の一家から家族ぐるみの嫌がらせを受けている。そんな状態に悩み抜いた遙は、家族を救うため地獄少女に依頼をする。ところが、あいは遙に「その優しさを強さに変えることはできないのね」とつぶやくのだ。

 そこには、他の方法も存在したのに、もっとも簡単な“仕返し”という方法を選んでしまった被害者の弱さを感じるあいの姿がある。遙にとっての苦渋の決断も、他者から見ると弱さに見えてしまうのだ。

凄惨ないじめにあう遙。しかしその決断には心の弱さが見え隠れする

 しかし、ここに1つの疑問が残る。遙は間違っていたのだろうか。

 阿部氏は語る。「この作品の根底にあるのは、怨みや復讐というものに対する疑問符の投げかけなんです。私たちから形を示すのではなく、さまざまなシチュエーションにあわせた疑問符を投げかけていく。どれが正解ということではないんです」。

 たとえば第4話。悪徳獣医のいい加減な治療により、愛犬のキャンディを失ってしまった純子が地獄少女に依頼をするという話なのだが、大森氏曰く「この話は人物の立場によって受ける印象が大きく異なる」という。「悪徳獣医にしてみれば、“悪いことだとしても、犬を殺したくらいで地獄に流されてはたまらない”だろうし、純子にしてみれば、“犬とはいえ、悪質な診察で大切な家族を失った”わけですから。どちらが正しくてどちらが間違っているという問題ではないんです。怨むか怨まないか。本作の物語はそれに尽きるわけです。そして、その答えはそれぞれのキャラの、そして視聴者のみなさんの胸の中にあるのではないかと」。大森氏はじつに深みのある言葉で、この話題を閉めてくれた。

愛犬を失った悲しみが純子に決断を迫らせる

 では、今後の物語はどのようになっていくのだろうか。「基本的には怨みの物語です」と大森・阿部両名が口をそろえるように、1話完結形式の「ホラー版必殺仕事人的な」形は変わらないようだ。しかし、その背景には1つの謎が隠されている。閻魔あいは何者であり、地獄通信とは何なのかということだ。その謎への鍵を握るのは、第8話から登場している柴田親子だろう。

 「地獄少女」の噂を聞きつけ、独自に取材をしているフリーライターの一(はじめ)と、自らに備わる不思議な能力でその手助けをしている娘のつぐみ。この2人が8話以降たびたび登場しては、地獄通信の真相に迫るべく奔走している。その2人とあいの今後を大森氏に問いかけてみると、「う〜ん」と悩んだ後、「もちろん核心に迫っていくのは彼らですが……、あまり多くは話せません」と、残念な結果。しかし、「ただひとつ、一には、あいに感情移入するような過去があるんです」とヒントをくれた。その過去が、2人の関係にどのように影響していくのか興味深い。

 また、閻魔あいは何者なのかと阿部氏にうかがってみた。気になるのは、あいは地獄通信に依頼がくるたびに、つらそうな、悲しそうな表情を見せていること。あるいは先述したように、依頼人の心の弱さに触れることもある。そこにはやはり、彼女なりの悩みがあるように思えるのだ。阿部氏もやはり「詳しくは言えませんが……」と前フリをしたうえで、こう語ってくれた。「これまでの表情などからもわかるかもしれませんが、彼女は決して地獄少女という仕事を望んでしているわけではないんです。そして、それは彼女の生い立ちに関わる話になってきます。そのあたりにぜひ注目していただければと思います」。

大森・阿部両名にカッコイイポーズをお願いしたところ、腕組みでクール(!?)に決めてくれた。無理な注文にも快く応えてくれたお2人に多謝!!

 こうしていろいろとお話をうかがってきた「地獄少女」だが、さまざまなチャレンジの部分であるとか、3年も温めていた作品であったなど、実に興味深いお話を聞かせていただくことができた。アニメ放映を見ている際には「おいおい、何もそこまでしなくても」とか、「被害者が地獄に堕とされるなんて腑に落ちないよ〜」なんて思ったりもするのだが、2人の話を聞くにつけ、どうやら製作側の“思う壺”のようだ。本作には“感情”が“動かされる”という意味での“感動”が詰まっている。

 そんな「地獄少女」のDVD第1巻が1月25日に発売された。テレビアニメの第1話から第3話のほか、声優・能登麻美子さんが歌うエンディングテーマ「かりぬい」のビデオクリップも収録されている。また、2月22日には第2巻が、3月29日には第3巻が発売される。本記事を見て「地獄少女」興味を持たれた方は、お手にとっていただければ、大森・阿部両名を始めとする製作スタッフの情熱を感じることができるはずだ。

DVD第1巻パッケージイラスト
DVD第2巻パッケージイラスト
DVD第3巻パッケージイラスト
(C)地獄少女プロジェクト/スカパーウェルシンク・アニプレックス
原案/わたなべひろし 原作/地獄少女プロジェクト 監督/大森貴弘 シリーズ構成/金巻兼一 キャラクターデザイン/岡 真里子 美術監督/菱沼由典 音楽/高梨康治/水谷広実 アニメーション制作/スタジオディーン 製作/スカパーウェルシンク・アニプレックス
閻魔あい/能登麻美子 一目漣/松風雅也 骨女/本田貴子 輪入道/菅生隆之 柴田一/うえだゆうじ 柴田つぐみ/水樹奈々


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