事後分析:「ワンダと巨像」における情緒的キャラクターコントロール:Game Developers Conference 2006(1/2 ページ)
「ワンダの巨像」(英題:「Shadow of the Colossus」)の開発チームは、本作を形成するゲームデザインの特徴を挙げ、それに伴い開発現場でどのような作業分担が行われたのかをGDC 2006においてセッションを行った。開発者の視点から哲学的かつ感覚的に取り組んだ経緯を振り返る。
プログラマーとしての存在理由を知る
「ワンダと巨像」が「Game Developers Choice Awards」で5冠制覇した同日の現地時間22日、米国サンノゼで開催されているゲーム開発者を対象とした「Game Developers Conference 2006」(以下、GDC 2006)にて、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)より発売済みのプレイステーション 2用ソフト「ワンダと巨像」の開発チームによるパネルディスカッションが行われた。
このセッションでは、「ICO」を開発したチームが本作を製作するにあたって特徴的だったと思われる状況を事後分析ものであり、リードプログラマーの杉山一氏とリードゲームデザイナーの細野純一氏、そしてアニメーターの田中政伸氏と福山敦子氏が登壇。本作プロデューサーの海道賢仁氏とディレクターの上田文人氏に見守られながらのパネルディスカッションが展開された。
「ワンダと巨像」といえば、独特で絶妙なバランスで構築された世界観を背景に、さまざまな技術的挑戦が施された意欲作。キャラクターと16体の巨像にまつわる技術的挑戦は、簡単に見えてアート、キャラクター、そして衝突システムの開発と、見た目ほど簡単なものではなかったと語る。今回はそれらの開発事例を挙げての哲学的アプローチを試みるとのこと。開発に携わることで、どのように開発環境が変化し、独自なものへと構築されていったのか、それがどのように自分の分野に影響を与えたのかが挙げられた。
冒頭、杉山氏は過去数タイトル担当してきた中でも、本作は特殊な制作環境にあったと切り出す。それというのも表現の質の追求が、極めて優先順位が高いというのだ。通常、コスト面から切り捨てられるであろう箇所でも容認してくれる開発環境――。杉山氏がこの開発チームにいる存在理由を嫌がおうにも考えさせられる挑戦が、ふんだんに組み込まれているのだとか。通常は既存のシステムを活用するものを、本作チームはあえて使わないスタンスを選択する。それらの挑戦はプログラマーとしてのモチベーションを上げさせるひとつの要因になっていたと振り返る。
杉山氏自身、具体的に例を挙げ、“変形コリジョン”においての事例を説明する。これは、動いている巨像に登るために開発されたシステムなのだが、このような本来ならばプログラマーが嫌がる面倒なことでも、それを処理することができれば自分のアドバンテージにつながるのではないかと考えられたそうだ。こう考えることでプログラマーおよびプログラマー以外の能力や引き出しが必要とされ、成功した時にはチームとしての存在意義と成り得るのだと思うようになったのだとか。それは「ICO」で言うところの“手つなぎ”やヒロインの“AI制御”でも同様だったとのこと。
こういった考え方は、プログラマー以外のセクションにも適用されていた。プログラマーが“ある”システムを作ったとしても、クオリティーアップのためにゲームデザイナーやアニメーターに託される場面も多々あったと明かす。クオリティーアップに関わることをパラメーター化する――つまり、データコントロールをプログラマーの以外のところに置くことで、作品のクオリティーアップが循環していったというのだ。その際、ディレクターもゲーム上、不自然なものを排除(クオリティーアップ)しようと積極的に追求していったのは言うまでもない。
これは、以下の6つのキャラクター制御に関する例で説明すると理解できる。
- 1:大型キャラクターのモーション制御
- 2:マルチレイヤーのモーション再生
- 3:キャラクターの地形適合
- 4:足のすべりの解決
- 5:大型キャラクターの移動到達性の確保
- 6:モーションとダイナミックスの融合
どのようにモーションのデータをつなぎ、操作性と美しく再生できるかを両立させること。本作チームでは概ね、これらの仕事はアニメーターやゲームデザイナーのものとなっている。プログラマーは、必要な“制御の命令”、“制御のパターン”、“制御の禁止フレーム”、“制御の互換フレーム”の指定ができる環境を構築できれば、あとは極力関与しない状況にしていたそうだ。杉山氏は、上記の1つ目に挙げた「大型キャラクターのモーション制御」にそれは顕著に現れていると話し出す。
プレーヤーのリアクションのダイナミックス計算というのは、ほぼアニメーターが手でつけた巨像に対するリアクションだった。実はこれが非常に困る状況に陥る要因となるらしい。アニメーターは、得てして物理法則どおりにアニメーションをつけないことがあるからだ。
動きを印象的にしようとするのが仕事のため当然とも言えるが、このような状況で挙動を違和感なく見せるには、アニメーターやゲームデザイナーに早い段階ですべてを委ねる必要がある。とはいえ、プレーヤーにとって床となる巨像が、異常な速度や急加速をしないよう、最低限プログラマーからの注意を受けてのこと。
2つ目の「マルチレイヤーのモーション再生」においても、巨像の動きや馬の挙動に合わせて体重移動する(主人公はこれらの挙動に12レイヤーを必要としていた)処理は、アニメーターやゲームデザイナーの仕事となった。このような取り組みは随所に見られるようになっていく。
2〜4足歩行のキャラクターが複雑な地形に置かれた際、どのような姿勢をするかという「キャラクターの地形適合」も、アニメーターに姿勢をアレンジしてもらうよう、比較的数字に強い人間に計算式を入れてもらい実現した。ある特定の場所に置かれたキャラクターが、どのような姿勢になればいいかを知っているのは、プログラマーではなくアニメーターだろうという考えからだ。これは巨像の足のすべりにも適用されており、アニメーターからの情報で算出している。小さいキャラならばそれでも問題はなかったのだが、本作では巨像が画面いっぱいに登場するゲームのため、複雑な処理をアニメーターへお願いすることになったのだそうだ。
巨大ゆえの問題はこれだけではない。巨像が極めて小さい台に足をかける行動を成立させるために、かなり面倒な巨像をその場所へ導く方程式を解いてあげて、そこへ数字を入れてこみ解決せざるを得なかったと明かす。それくらいアニメーターの作った素材とゲーム性の両立を大事にしたのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
-
「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
-
「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
-
餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
-
毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
-
「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
-
放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
-
脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
-
父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
- 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
- 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
- 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
- コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
- 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」