「BLOOD+」×「One Night Kiss」――藤咲淳一×須田剛一(6/6 ページ)

» 2006年08月29日 13時57分 公開
[今藤弘一,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5|6       

――須田さんにとっても、原作があるゲームを作るときには苦労された部分もあると思うんですが、原作ものをゲーム化するときの目標ってありますか?

須田 今回はアニメと同時進行でしたので、いろいろなものが変化していきました。わたしにとっては毎週のTV放送が教科書なんですね。そこで気づくこともありましたし。そのライブ感はおもしろかったですね。ただ、お互い忙しいとは思いますが、どこかで会って意見を交換して作っていくことができれば、よりおもしろいことができるような気がします。本来、ゲームとアニメって相性がいいはずなんで。1年間のアニメだとできるんじゃないでしょうか。半年とか、1クールでの放送だと無理があるかもしれませんが。

藤咲 ゲーム自体を作るのにも最低1年はかかりますからね。スタートから同時に開始すれば間に合うでしょうね。

画像

――どのあたりに相性の良さを感じますか?

須田 ゲームではアニメでも流せますし、ポリゴンという表現もありますし、ゲームにはどのような表現も乗っかるんですね。わたしの場合は、自分たちでシナリオを書いているというのもありますし、アニメも当然シナリオありき、ですし。相性がいいと思いますね。

藤咲 アニメとゲームの違いが唯一あるとしたら、アニメの場合は内容を決めてからコンテを作りますけど、それは設計図で、ほとんど変更されないですね。ただしゲームの場合はそこからさらにプログラムが必要になりますので、その段階で無理が生じる場合もあって、変わったりすることもあります。そこがゲームのおもしろさでもあるんですけど。代案をその場で考えなければならないという。そういう意味ではライブ感はゲームの方がありますね。ゲームとアニメの、一番の違いはそこでしょうね。

 ゲームの場合は彫刻と一緒ですよね。削りながら考えていく。アニメは逆に、骨組みがあって、その上から粘土を重ねていく作業なので、作り方としては180度違うかもしれません。わたしが一番戸惑ったのはそこでした。「やるドラ」にアニメーションを入れるというときに、ゲームは作りながら考えなければいけないのに、アニメでは作ったものは動かせない。アニメの演出を解体するところから始めなければいけなかったんです。

 この違いが分かっていれば、いろいろなものができると思います。キャラクターものであれば、キャラクターだけをピックアップして、シューティングゲームだろうがアクションゲームだろうが作れると思うんですが、そこでストーリーを生かそうと思うと、そういう構造を知らないといけないんです。そうでないと絶対に失敗しますね。

須田 制作期間の違いもあると思いますが、かかわっている人数が圧倒的に多いですよね。アニメの場合は。最初が変化してしまうと、全部に影響を与えてしまう。

藤咲 アニメ制作現場の方が、システムとしてできあがってるんでしょうね。ゲームの方はハードが変わるたびにシステムが変わるので、そのたびに臨機応変が求められます。それに業種が増えてますよね。最初はプログラマーとデザイナー、企画、グラフィッカーに加えてサウンドを担当する人がいればよかったので、4つの構成要素がそろえばゲームが作れました。

須田 企画だけを担当する人もいなかったですよね。

藤咲 ええ。プログラマー兼企画という人がいればよかったですね。アニメも最初は、絵を描く人兼監督、といったペーパーアニメの世界に近い状態だったんだと思いますが、それが細分化されていって人が増えていくにしたがって、システマチックになったんでしょう。ゲームも細分化されるにつれてシステマチックになるんでしょうけど。

 ただ、最近アニメの本数が非常に増えてきて、昔のゲーム業界のように感じますね。質・量ともに下がっていったような。本数が多く出ているのに作り手がいないので、劣化していくだけですね。このままではアニメはやばいと思います。どこかで本数を絞ってくれないかなと。クリエーターは量産されませんので。ゲームはハードが世代交代して、一極集中になってますね。大作主義というか、売れるものは大作に絞られていて、ライトユーザーはほかを見なくなっているという。アニメもそうなってしまうのかなあと。いまもメジャーなものしかみんな見ませんよね。ジブリのアニメは見るけどほかを知らない、みたいな。マニアですら全部追えません。

須田 深夜アニメは確かに見ないですね。

藤咲 前は、全国ネットで放送しているものに加えて、NHK BSとWOWOWくらいをチェックしておけばよかったのが、CSやケーブルTV系に加えて地方U局もありますし。

須田 地方U局だけというアニメもありますよね。それがまた結構おもしろい、という。

藤咲 ただしクリエーターはいないので、2年後くらいには崩壊しているかもしれない。正直な話。何か考えないといけないでしょうね。特に週間で放送しているものは厳しいでしょうね。来年動いているアニメは3ケタを超えるというウワサもありますが、そんなにクリエーターどこにいるんだろう、という。

須田 我々が中学生くらいの時って、新作アニメなんて10本なかったですよね。

藤咲 金曜日の4時半くらいに帰ってきて、2時間くらいTV見るだけで十分に追えた。いまは選択肢が多すぎてダメですね。

――「BLOOD+」はいよいよクライマックスが近づいていますが、終わったあとは何をされるとか決まっていますか?

藤咲 本を1冊書く時間くらいあるのかなぁ。時間を見つけるのが大変ですが。ただ、自分でもアニメ作品から離れたものを作っていかないと活性化されないですね。1つのことに凝り固まっちゃうんで。企画を作りながら次の仕事に入っていこうかなと思っています。

――須田さんの今後についてはいかがでしょう。アニメーションとのコラボのようなゲームとか……。

藤咲 ガンダムのゲームを出してくださいよ(笑)。

須田 実はこの前、(機動戦士Zガンダムに登場する)ヤザン・ゲーブルを主人公にしたガンダムゲームの企画書を出したんですが、却下されました(笑)。アニメはすごく好きな世界ですので思い入れはありますし、いつか担当したい分野ではありますね。ロボットものを作りたいんですよね。オリジナルで。

――では最後に、アニメの「BLOOD+」そしてゲームの「One Night Kiss」の見どころなどを語っていただけますか。

須田 「One Night Kiss」は、Production I.Gのタイトルをゲーム化する、ということを意識していました。先ほど監督も述べられたとおり、どんな内容を作っても許されるところもありましたので、逆にこちらが見られているな、という感じは受けていました。ですのでProduction I.Gへのラブレターではないですけど、ゲームからオリジナルシリーズへのラブレターの役割を担っていると思いますので。肉体的にも精神的にも、青山がどれくらい小夜に迫れるのかを見てほしいですね。そこを楽しみにしてください。

藤咲 脚本は50話終わっていて、絵コンテが上がってくるのを待っている段階ですが、予想外にキャラが立ってきているので、どうやって送ってあげるのがいいのかなあと。そこで悩んでいます。シュバリエですとか。キャラクター全部にとは言えませんが、一応ゴールは作ってあげられたと思っています。見ている方の中には納得できない人も出るかもしれませんが、わたしとしては、最初に作ろうと思っていたことからは変えていませんので。「BLOOD+」の物語としては、50話で完結です。

BLOOD+ One Night Kiss

画像

ジャンル:アクションアドベンチャー

発売日:2006年8月31日

価格:7140円


(C)2005 Production I.G・Aniplex・MBS・HAKUHODO
(C)2006 NBGI


前のページへ 1|2|3|4|5|6       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  6. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/21/news005.jpg 藤本美貴、晩ご飯に手料理7品 多忙でも野菜とお肉たっぷりで反響 「お疲れ様です」「凄く親近感」【2024年の弁当・料理まとめ】
  10. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」