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» 2006年10月31日 15時44分 公開

くねくねハニィの「最近どうよ?」(その3):次世代機発売前夜――小売り店の反応は? (2/2)

[くねくねハニィ,ITmedia]
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パブリッシャーの価格戦略と苦悩

 ここで触れておきたいのは、PS2やXbox/Xbox 360、ゲームキューブなどのプラットフォーム向けにゲームソフト製品にを販売する際にROMに焼く製造費や、マニュアル代なんかの他に、パブリッシャーは、SCE、MS、任天堂に対して、「お宅のゲーム機をベースにソフトを作って販売させてもらいまっせ」っていう使用料を払うのであ〜る。これがPCソフトとの違いで、タイトル1本当たりに支払うんだけど、ゲーム機によってロイヤルティが決まってて、これがなかなか大きいのさ。

 これは、ゲーム機メーカーによってテーブルが準備されていて(中身は出せません、ゴメンね)、タイトルの希望小売価格(SRP)またはパブリッシャーの出荷価格であるWhole Sale Price(WSP)に応じて、スライド式にロイヤルティ金額が決まっているの。高く売る場合は高いロイヤルティを、安く売る場合は安いロイヤルティをってことなんだけど、最初設定されたロイヤルティは基本的に変更できないの。

 ってことは? プライスプロテクション等によって値段が下がった場合でも高いロイヤルティを払い続けなきゃいけないの??? そうそう、そういうことがあるのよね。一部だけどゲーム機メーカーさんによっては半年毎に見直しをするとか是正措置を図ってくれるところもあるみたいだけど。

 ちなみに任天堂さんの携帯ゲーム機のロイヤルティは、製造自体も一緒に任天堂さんにお願いするので、カセットROMに乗っけるメモリの容量に応じて「製造費+ロイヤルティ」として設定されているので、価格には関係ないところで決められているの。これも詳細は出せないんだけどね、ごめんね。

 いずれにしても、ソフトパブリッシャーからするとタイトル1本を発売するにも、値下げリスクという不確定要素を負いながら固定ロイヤルティを支払って、それまでにかかった開発費、製造費、広告宣伝費を回収しなければいけないわけで、た〜いへ〜ん。

 「値下げをしたら、ロイヤルティや製造費を考えると赤字じゃん?」ってことも現実としてあるわけ。「でも在庫にして返品されても、現金化できないし、どうすりゃいいんじゃぁぁぁ!」って声がタイトルの製品サイクル末期になるとあるんですよ。9.99ドルまで値段が落っこちたタイトルなんてまさにそんな感じ。パブリッシャーはこんなリスクも折り込んで最初の価格を設定しなくてはいけないの。

 最初にいっぱい売れて利益が出たから、タイトル全体の利益を見ると製造しちゃった在庫分はしょうがないよね〜っていうのが一番理想的な形だけど、競争が激しい中、順風満帆なタイトルばっかりではないので、難しいところではありまする。出荷数とのバランスや、広告宣伝とのコラボも含めて、値下げのタイミングはプロの出来る技。これらのリスクヘッジを乗り越えて店頭の棚に並べられるタイトルたちは、いろんな苦難を乗り越えて発売されているのよ〜。涙もん。

 パブリッシャーは小売店とゲーム機メーカーの間でいろいろな価格戦略を迫られているのだよ……。お察しいたしやす。

 

そんな海外市場での対策は?

 日本と違うってのはわかっていただけたかしらん? 日本なら、評判がよくないとか、売れ行きが悪いとかだと値段が下がっちゃーう! なんてシビアなことはないから、衝撃的だよね。さらに、発売日になっても棚に並ばないってタイトルだってある。小売店のバイヤーさんが「これは売れそうもないからいらない」って言っちゃえば終わりなんだもん。

 世界を視野に入れると、日本のゲームもこのシビアな状況に目を向けなきゃいけないの。バイヤーさんのお眼鏡にかなう、それでいて価格の下がらないゲームを作らなきゃいけない。しかも継続的に。あるタイトルで在庫に懲りた小売店が、そのタイトルの続編を取ってくれないとか、よく聞く話なんですよ。ある意味「おイタ」が許されないきっびしぃ世界。

 ユーザー視点を持って作ったり売ったりするのはもちろんだけど、海外では小売に売ってもらうためにってのが重要になってくるの。海外の小売は、敵ではないけど常に味方ではないから、開発するチームとパブリッシャーが一体になってアピールしなきゃいけない。「このタイトルはね、こんなにすばらしい開発チームがこうやってタイトルを作って、さらにこんなにすばらしい人たちがこんな風にイケてるプロモーションするんですよ。だから、棚に置いて損はしないよぉ!」ってね。

 作った人は日本にいて、実際にパブリッシュする人が海外にいる、って言う意味ではタッグを組むってのもなかなか難しいと思うけど、ハニィの経験では、誠意は言葉を超えるの。まずはタッグを組むパブリッシャーと心が触れ合って初めて小売を動かす力になると思うのね。怖がらないで語り合おうよ、海外のパブリッシャーと! なんなら、ハニィがお手伝いしますから!

ハニィのあとがき

 海外市場は売れないタイトルだと小売価格が簡単に値崩れを起こしてしまうマーケット。開発費は減らないのに、1本当たりの収益が減れば、それだけ多くの数を売らなきゃ回収できなくなることになるよねぇ。うぅぅぅ苦しぃ〜。さらに次世代に至っては、開発費はすご〜く上がってるのに、販売価格はそんなに上げられていないからね〜。

 売れるプロパティだけではなく、売れる「品質」も求められているにも関わらず、価格が上げられない、という現実。大作ゲームを作って、その回収を1テリトリーだけに委ねることはもはやできないでしょうな。世界全体市場を視野に入れないと生き残れなくなってきてる。きついこと言うと、パブリッシャーもデベロッパーも「品質」と「価格」のスキルとそのバランスを上げていかないとこの競争の中自然淘汰されていくことは間違いないでしょうねぇ。

 オンラインでいかに堅実なビジネスモデルを構築できるかが、北米で生き残りをかけた闘いの鍵でもある!と、まとめたいところだけど、もうひとつ。ソニーさぁん! PS2のプラットフォームロイヤルティを下げてくださぁい! なんだかんだ言って世界で一番出回ってるハードだし、まだまだ実用性の高いハードなんだから、これはこれで生かすべき。だとすれば、このハードを殺す必要はないと思います!

 任天堂のゲームボーイアドバンスとその周辺ソフトがいまだに北米で売れているという事実を考えると、ソフト戦略で言えばPS2だってまだまだイケるはず。ただ、ユーザーにとっては過去のゲーム機になってしまうから、ソフトの価格も今までどおりってわけにはいかないはずで、下がっちゃうよね。とはいえ、ソニーさんにとっては過去のプラットフォーム。PS2のロイヤルティ、下げてあげましょう。パブリッシャーにとって、不安定かつハイコストな次世代機市場への参入をスムーズに行うためにも、継続的に支援して欲しいもんです。ユーザーにとっても、安くていいゲームが手に入るPS2と、ハイエンドでカッティングエッジなゲームがプレイできる次世代機の両方があってもいいと思うんですけど……いかがかしらん?

 ゲーム性が評価される日本のゲームソフト。必ずしもハイスペックなものばかりじゃなくてもいいんですよ。世界のたくさんの人たちに手にとって遊んでもらえれば、再び「さすが日本のゲーム!」と言われる復権の日は来るはず。ハニィはその日を夢見ているのだ。

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコダ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくって育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の口調ですが、慣れてください。


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