世界標準に後れを取る日本ゲーム市場なんて見たくないくねくねハニィの「最近どうよ?」(その4)(2/2 ページ)

» 2006年12月05日 15時21分 公開
[くねくねハニィ,ITmedia]
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マルチプラットフォームはさらに進む

 何度も言っているけど、次世代機向けのタイトル開発コスト高騰はすさまじいものだけど、いよいよ本格化するオンラインもいろいろと頭痛の種。Xbox Liveのようにきちんとした課金システムを持っている場合もあるから、だいぶ整備はされてきたけど、個々のパブリッシャーは試験的に無償でネット機能を提供していることが多いのね。このサーバ運営費用は月額課金やDL従量課金などのインフラが整備されない限り、パブリッシャーの単純なコスト増となるのであ〜る。その分パッケージ価格をむやみに上げることもできないし、だからと言ってコスト増にしかならないサーバ運営をずーっと提供し続けるのはとてもシビアなこと。ますます大手しか生き残れなくなってきちゃうよね〜。

 このコストのリスクに対してヘッジしてくれる1つの方法としてマルチプラットフォーム対応。いわゆる「ワンソースマルチユース(1つのプログラムを複数で利用すること)」! カッコいい〜。これは、パブリッシャー側にとってはコスト回収リスクの低減やマーケティングのシナジーという大きな理由があるけど、ユーザーにとってもプラットフォーム(ゲーム機)の種類を問わずゲームが遊べるというメリットがあるので、「喜んで!」な状況だよね〜。

 でも、たまに大型タイトルで特定のゲーム機専用ソフトってのがあるけど、なんで? 全部で展開すればいいのにって思うでしょ? これは、ゲーム機メーカーとの関係や条件交渉の過程があって実現するもの。たとえば、ゲーム機メーカー側が開発費を一部負担するとか、広告宣伝を派手にやってくれるとか、何らかの「握り」があって行われていることなの。しか〜し! 欧米は、日本と違ってPS2だけがメインハードではなくて、Xbox陣営のマーケットもそこそこ大きいので、独立系パブリッシャー(ハードメーカーではないパブリッシャー)は企画の段階でマルチプラットフォーム(PS2/PS3とXbox/Xbox 360、ついでにゲームキューブで同じタイトルを発売すること)のが多いの。

 ただ、まったく同じものをスペックの違うものに供給するってのはちとナンセンスなので、各ハードにあわせて若干のカスタマイズ(機能の付加とか特典がついてるとか)も求められていて、発売日というタイミングも絡めて、どういうカスタマイズをするのかというのも、ゲーム開発者とマーケティング担当者の間で詰められるものなの。ここでいう、タイミングの話だけど、スポーツタイトルや映画タイトルを多く手がけている世界ナンバー1シェアのゲームパブリッシャーであるエレクトロニック・アーツ(EA)は、全世界、全ハードで同時発売(日本は含まれないことが多いのはご愛敬)というものを徹底しているの。映画の封切りやスポーツシーズンに乗り遅れてしまったら、マーケティング効果がなくなる、っていう発想だよね〜。そういった意味では「納期」の概念も徹底されていることを物語っているよね。さすが、世界イチ。

 もうひとつ最近加わった難しいことは、ネット。前も言ったように、プラットフォーム間のインフラの違いがあるから、異なるゲーム機間での対戦や協力プレイなどはムリだし、地域によるネット環境の差異までも考えてカスタマイズの企画をしなくちゃイケナイので、これはこれで結構なノウハウではありますわな。

 マルチプラットフォームで展開するということは、ある程度の「クオリティ」があって、マーケットを知るプロによる「カスタマイズ」があり、さらに「納期」を守って効果的な「マーケティング」を行っていくことが問われるの。簡単に言うけど、実はこれが難しい。特に「納期」と「クオリティ」に関してはバランスをどこで取るのかが最重要だからね〜。

マルチプラットフォームとオンライン時代のトータルコーディネート

 マルチプラットフォームという意味ではPCとか携帯ゲーム機はどうなんでしょ? XboxはPCと、PSはPSPと、WiiはニンテンドーDSとそれぞれ連動が可能なはずだけど、スペックがちが〜う!! さすがにすべてのゲームを携帯ゲーム機の仕様に合わせるわけにも行くまい、ってことで、別階層のプラットフォームとして見なされることが多かったのね。いえいえ、ここで言いたいのは、階層の違うプラットフォームに向けた「移植」をがんばってしていこう! ではなくて、同じタイトルでプラットフォーム特性に合わせて「連動」しよう! なのよ。携帯ゲーム機とは言え、今となってはニンテンドーDSもPSPもブラウザを積む時代なんだから。

 これは、ユーザーさんに同一タイトルをいろんな階層の機種でとことん遊んでもらおうということね〜。つまり、同じプロパティでプラットフォーム別に開発して、連動させる。うぅぅ、難しい。例えばあるゲーム機のサッカーゲームの選手を、外出中に携帯ゲーム機(ニンテンドーDSとかPSPとか)で育成しておいて、家に帰ったら戻す、みたいなことでしょうかね? 発想がチープなハニィ(涙)にはこれくらいしか思い浮かびませんが……。

 この、オンラインとマルチプラットフォームの構想の中には、モバイル(携帯電話向け)ゲームも含まれているの。日本ではゲームの市場が冷えた理由として、モバイルコンテンツを敵視する分析もあったけど、欧米ではまた違った見解があるの。ある大手ゲーム会社のモバイル部門のトップが「同一タイトルを他階層プラットフォーム間で競争させるのではなく、それぞれのプラットフォームにあわせたものを供給し、連動していく、つまり“競争ではなく協働”するんだ」と名言を残してたのよ〜。今年のE3でもMSがLive Anywhereでマルチプラットフォームにおけるゲームを声高に語ってたけど、これにも携帯電話が含まれているの。簡易ステージ版をユーザーにモバイルで遊んでもらっておもしろさをわかってもらってからゲーム機の豪華バージョンも買ってもらおうとか、モバイルで遊んでクリアした人だけにアンロックされる仕様とかいろんな意味でのコーディネーションも可能だよね〜。

 今後は「ワンソースマルチユース」に加えて「ワンプロパティマルチユース(1つのタイトルをいろいろなプラットフォームに展開していく)」が問われているんだとハニィは思う。

パートナーシップが鍵

 日本では、家庭用ゲーム機向けのオンラインゲームは主流にならなかったし、しばらくPS2の独壇場の市場だったから、日本向けの開発にはネット要素やマルチプラットフォーム化なんてほとんど必要なかったけど、世界は一歩ならず何歩も先んじているのよ。だとすると、海外のゲームソフトを遊んでみる、ってのも手だけど、独りよがりな思い込みをしてもしょうがないから、欧米で経験値をあげているパブリッシャーと企画段階から詰めていくってのが望ましいよね。早い段階でマーケットのプロである欧米のパートナーと話をすべし。だって、実際に販売してオンラインを運営するのは彼らなんだもんね。

 スタンドアロンであり、マルチプラットフォーム化を考えていないまま完成してしまったソフトは、欧米の市場ではそのままではもはや受け入れがたくなってきているの。開発側が海外の意向に対応できる時点で、実際に欧米で販売して運営するパートナーと相談していくのが理想だね〜。完成してしまったものを作り直すってのは、なかなか難しいと思うのよ。パートナー(海外のパブリッシャー)を信じて、チャレンジする価値はあるはずで、ノウハウを勝ち取る意味でも成功例を踏まないといけないと思うの。そういう意味では協業は不可欠なのだよね〜。

 「虎穴に入らずんば虎児を得ず」とはよく言ったもんで、飛び込んでみて初めて分かることもあるはず。日本ではまだその環境が整ってないのだから、海外に教えをこうことは何も不思議ではないよね〜。日本のゲームコンテンツは「コンテンツ」として海外のものに負けちゃいないけど、市場性やインフラに影響される部分では、そこに住んでいない以上考えてもしょうがないこと。その道のプロとアライアンスしましょう! 教えて教えて海外パブリッシャーさん! 「日本のゲームコンテンツと欧米の市場展開ノウハウの融合」でWin-Win関係を作りましょ? そのノウハウを日本にも持ち込みましょう。

ハニィのあとがき

 大容量ハードディスクを積んでて、ブロードバンドネットワーク対応のゲーム機は、パッケージビジネス時代からダウンロードビジネス時代への移行を物語ってるようにも思えるけど、一気にはいかないねぇ。だって、メーカーさんやパブリッシャーさんもいろんな意味で流通とのしがらみはあるし、インフラもまだまだ整備されてないし、もう少し時間はかかる。その間にとっとと日本もネットワーク対応を進めていかないと、取り残されちゃう。

 まぁ、どんなにキレイごと(簡単に購入できるユーザーメリットがあるとか、ROMを使わないのでエコロジーに貢献するとか)を言ってもしょうがないので、ぶっちゃけて本音を言うと、欧米のパブリッシャーは家庭用ゲーム機といえども、ダウンロード時代の到来を望んでいるよね。発言力の強い小売を通さなくていいんだもん(笑)。ビジネスの思惑と言う意味でも、ダウンロード時代は必ずやってくる。一部始まりかけているから、日本が遅れてしまうことがないようにしないと! そのダウンロード時代を見据えると、すでにオンラインダウンロードをPCで実現しているマイクロソフトさんは経験値で先行してるし、日本のSCEさん、任天堂さん、頑張ってくださいましっ! うーん、そう考えると、やっぱりXbox 360が日本で売れていない罪は大きいなぁ。日本のデベロッパーがダウンロード経験を積むのにも、マルチプラットフォームの企てを積極的に思案できる最適なハードでしたのに……涙。マイクロソフトさんもう少し日本市場でがんばってくださいよぉ。

 世界の標準についていけない日本のゲーム業界なんてハニィは見たくないぞっ。でも、実際には、日本のゲームソフト開発は、技術的にもビジネス的にも、もう海外に先行してはいない、ということはここで言っておきたい。だからこそ欧米のパブリッシャーと組んで、ノウハウを融合させてほしいなぁ。欧米では、日本だけ特殊な市場と言われてしまっているんだけど、もはや日本の市場だけで勝負するなんてつまらないから、もっと海外市場にチャレンジしようよ。道具を持たないでチャレンジするのは無謀、でも道具をイチから作ってるのも時間がかかる。だから、そこにいるプロに道具を借りて指南してもらいつつチャレンジするってのが一番早道だと思うんだ。競合する時代じゃないよ、協業するの!

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコダ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくって育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の口調ですが、慣れてください。最近、風邪を引いたそうです。


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