インタビュー
» 2007年05月17日 00時36分 公開

高みを目指しつつも、初心者でも楽しめるシミュレータ──「Forza Motorsport 2」インタビュー (1/2)

クルマ好きからの注目を集めている、リアルドライビングシミュレータ最新作「Forza Motorsport 2」。Xbox LIVEで体験版も配信され、ファンは首を長くして発売日を待ったことだろう。そんな中、国内での開発に携わったマイクロソフトの谷口潤氏に、思うところを聞いてみました。

[千早秀生,ITmedia]

こだわりのエンジンサウンドは実車からすべて録音

マイクロソフト ゲーム制作本部 グループシニアマネージャ 谷口潤氏

―― まずは、開発に約2年を費やしたという本作のウリを教えていただけますか?

谷口潤氏(以下、敬称略) 実車の再現ですね、ここに徹底的にこだわっています。まずはグラフィックですね。対応ハードがXbox 360になったため全体的にクオリティが向上し、秒間60フレーム描画も実現できました。フレームはTurn 10(開発チーム)のスタッフがもっともこだわった部分でもあります。サウンドにも相当気合いを入れており、スタッフのマイカーや各方面からお借りしたクルマを集め、シャシーダイナモ(クルマのパワーなどを測定するための装置)に乗せて実車から録音してます。これらの部分は前作でも相当こだわったのですが、前作からの流用は一切せず、新たに作り直しています。

―― 先日プレイされていただいたのですが、確かに音はリアルだなあと感じました。

谷口 エンジン音やタイヤの音(スキール音)はもちろん、実車を実際にクラッシュさせて、クラッシュ音を録音しました。もちろん事故ではなく、クラッシュテストを行って録音したのですが、使用したクルマは廃車です(笑)。本物の音ですから、実際にプレイしてると、クラッシュする音が怖くてクラッシュできない、という恐怖感がありますね。ゲーム中でクラッシュすると、ゲーム内のクルマもちゃんと壊れますし。普通のレースゲームだと、例え500km/hのスピードを出しても恐怖感はさほど感じないと思いますが、「Forza2」は怖いと思いますよ。

シャシーダイナモに乗せられたロータス エリーゼからサウンドを収録している場面
こちらはクラッシュテスト中の様子。クルマは見るも無惨な姿に……

筑波サーキットのダンロップコーナーのアーチを撮影。テクスチャとして使うためには正面から撮る必要があるため、こんな体勢に

―― 確かに3画面でのプレイでは十分恐怖感を味わせていただきました(笑)。まあ、それだけリアルということですよね。それと、前作でレースゲームファンを驚かせた“タイヤの摩耗”も健在ですね。

谷口 そうですね、ほかのドライビングシュミレータでもタイヤは摩耗すると思うんですけど、「Forza2」では、タイヤは内側、中央、外側で摩耗の度合いが変わるところまでこだわっています。クルマのキャンバー角(クルマを正面から見たときのタイヤの傾き角)ほか、さまざまな要因によって、内側、外側のどちらが早く摩耗するか変わりますし、コーナーにバンクが付いたオーバルコースなんかを走行していても変わりますね。正直、我々日本人にしてみたら「そこまでこだわらなくてもいいじゃん!」って思うところもありますが、向こうの人はそこまでのリアリティを求めるんです。深さの追求度合いが違うのかな、って思います。

―― 日本と北米で、ドライビングシミュレータの違いってあるんですか?

サーキットもリアルに再現するべく計測。地味で大変すぎる作業だ

谷口 う〜ん、そうですねえ。向こうのスポーツ中継って、レースにしてもアメリカンフットボールにしても、常に数字のデータが出てくるんですよ。例えばパス成功率とか、1位を何回、2位を何回取ったとか、その人は春に強いとか……データって出そうと思えばいくらでも出せるじゃないですか。僕が思うに、向こう人たちってデータ重視でスポーツを楽しむ傾向が日本人より強いのかな、と思います。シミュレーションではそういう数字って非常に重用されるんですけど、ゲームでも数字が非常に多く出てきてるような気がします。しかも彼らが出す数字はきめ細かい。

人工知能を用いたチューニングシステム

―― 多くのユーザーが気になるところだと思うのですが、車種はどのくらい登場するんですか?

谷口 300弱ですね(編集部注:現在発表になっているのは310車種)。今回は、ランボルギーニやポルシェの車種も新たに登場します。発売後も、Xbox LIVEのマーケットプレースで、新しい車種を配信する予定です。どうやら開発チームに日本車好きが多いようで、日本車が90車種くらい収録されています。例えばインプレッサを例に挙げても、年式が異なる5タイプくらい用意されています。逆に不思議なのは、北米のクルマが意外と少ない点ですね。

―― 今回は、車種のクラス分けを行う上で新しいシステムが導入されているとお聞きしましたが。

谷口 パフォーマンスインデックスですね。前作でもクルマをチューニングすることでクラスが上がっていましたが、単純にターボを付けたら何ポイントアップとか、軽量化したら何ポイントアップとか、そのような計算方法だったのです。この方法だと現実にそぐわないことが結構起こりまして、前作では一番下のクラスのCR-Xが異常に速くなってしまう、ということがありました。このような問題を避けるため、今回は人工知能を用いて、性能を数値化しています。ニューラルネットワーク(いわゆる人工知能。脳機能の特性を計算機上のシミュレーションによって表現することを目指した数学モデル)のデータベースを使っていまして、クラス分けがより細分化されています。

―― そうしますと、パフォーマンスインデックスの数値が近いクルマ同士のバトルは、かなり接近したものになるということですか?

谷口 性格が大きく異なるクルマでも、数値が同じであれば、ほぼ同じラップタイムが出せる仕組みになっています。軽くて速いクルマと、重いけどパワーがあるクルマが、同じレベルで並べるように、という考え方です。古いクルマと新しいクルマのバトルでも、テクニックにて勝敗を決める純粋な勝負が楽しめるわけです。

―― 具体的な数値が出ると、クラスが上がらないギリギリのところまでチューニングする、といったユーザーも出てくるでしょうね。

谷口 そうですね。上限までチューンして、あとはセッティングで勝負、という感じですかね。セッティングを行っても、パフォーマンスインデックスの数値は変化しませんし。

―― クルマにあまり詳しくない人には敷居が高そうですが、走りに関しては今回ももちろん、アシスト機能が用意されていますね。

谷口 アシスト機能はやはり気をつかっています。前作でお馴染みのABS(ブレーキング時にタイヤをロックさせない機能)、TCS(加速時にタイヤが空転しないように調整する機能)、STM(極限のコーナリング状態でもクルマのコントロールを維持する機能)という3つの機能を搭載しています。コーナリング時の推奨ラインを表示させる機能も、前作に引き続き搭載していますよ。

 推奨ラインはコーナーを曲がるときの推奨速度も表しています。これは矢印の色で表していまして、自車のスピードによって、緑から黄、赤と変化します。黄色だとそれなりに減速が必要、赤ならかなり減速が必要という感じですね。初心者の方が最もおろそかにしやすいのはブレーキングの操作だと思いますので、慣れないうちはこのラインに合わせるようにして走るのがいいでしょうね。

―― アシストのセッティング画面では、AIドライバー(敵車)のレベルも変更できますね。AIについては前作で「Drivatar」という学習システムを使われていましたが、今回はAIに性格付けがなされたとか。

谷口 いままでのAIドライバーって、普通にブレーキングが間に合う距離でも、平気で追突することが多かったと思います。それは、彼らが計算された場所やラインを走るように制御されてるからなんです。でも今回のAIは、例えば僕がコース上で立ち往生していると、止まったり、避けて走ろうとするんですよ。こんなに頭のいいAIは今までいなかったと思います。

 それと、敵車によって、賢さのレベルがそれぞれセッティングされています。なので、敵車の中でも、速く走れる連中と速く走れない連中が出てきます。今までのレースゲームでよくやられていたのが、シミュレーションなしで敵車を走らせる、ということです。例えばどんなコースレイアウトであっても、レールに乗った汽車のように走るAIカーっているじゃないですか。減速もせずに一定速度でコースを走ってしまうという。要するに、何も考えずに走っているワケなんですよ。

 でも、本作のAIはちゃんと考えながら走っています。AIカーのタイヤも摩耗しますし、摩耗したタイヤだとコーナリングスピードがダウンします。そういった駆け引きまで計算して走っていますので。ここまで賢いAIなので、シングルプレイでもAIと競う楽しさを味わえると思います。ちなみにシングルプレイのキャリアモードでは、このAIドライバーを雇ってレースに参戦できます。速いけれど高給取りとか、いろいろなタイプを用意していますよ。


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