個性的なミニゲームの数々。“鍛”えるのではなく“楽”しもう「タシテン +たして10にする物語+」レビュー(1/2 ページ)

タイトルだけ見ると、エデュテイメントソフトに思えるかもしれない。確かにその一面もないではないが、実際のところ、その比重はかなり少ない。重視されているのは教育性ではなく娯楽性。タッチペンというインタフェースと数字が作り出した、ユニークなエンターテイメントをご賞味あれ。

» 2007年11月02日 00時00分 公開
[ITmedia]

10の倍数を作ろう

画像 最初にプレイすることになる「おれたちタシテン?」。2つ以上の組み合わせが10の倍数になっているかを判断する。倍数なので10だけではなく、20や30もアリなのに注意

 1、2、3、4。これを全部足すと10になる。これは誰にでも分かるだろう。では、4つの数字で20になる組み合わせは? これを聞かれて咄嗟に答えられる人はどれぐらいいるのだろう。機転の利く人なら「5が4つで20」と言うかもしれない。では、同じ数字を2度使うな、というルールが入ったら? この場合、おそらくほとんどの人は10になる組み合わせを2つ考えるのではないか。1、9、2、8、あるいは3、7、4、6といった具合だ。では数字4つで30になる組み合わせは?

 と、こういうのをひたすらやっていくゲームが、この「タシテン +たして10にする物語+」(以下、タシテン)である。これだけ聞くと、そんな単純なもの面白いの、と思うかもしれない。いやいや、心配御無用。面白いのだ。よくできたゲームの原則のひとつに“間口は狭く、奥行きは広く”というのがある。最初に覚えなければならないルールはわずかで、そこから生み出されるバリエーションは無限に広い、という意味だが、このソフトはまさにそれを地で行く内容なのだ。

 物語は、街の図書館で居眠りをしていた主人公が、不思議な妖精に導かれ、“タシテン国”というファンタジーワールドへ連れて行かれることから始まる。そこで待っていたのは、タシテントなる、ちょっと頼りない王様。主人公はこの王から、9人の“タシテンマスター”に会うように頼まれる。タシテンマスターというのは、この世界のエライ人(といっても妖精だが)ぐらいに思っておけばいいだろう。かくして主人公は案内役の妖精とともにタシテン国の各地を旅していくことになるのだ。

画像 ガイド役の妖精・ナムナム。タシテン国の事情に詳しく、役立つアドバイスもくれるが、主人公にヘンな通り名をつけるという困った(?)クセがある

 ところで、この導入部の設定がちょっと興味深い。このゲームは数字を使った遊びを楽しむことが目的だから、別に世界がどこであろうと基本的には変わらない。現代でやってもいいだろうし、現代を異世界風に変えてもいい。いっそのこと遠い星の物語にしてもいいだろう。だが、ここでは主人公が異世界へ召喚される、というスタイルを採っている。これは、それこそ古くは、バローズ(注1)の“火星シリーズ”に始まり、ムアコック(注2)の“エレコーゼ・サーガ”を経て、現在の脈々と受け継がれている正統派ファンタジーの構成だ。たくさんある選択肢の中から、このアプローチを採っていることは見逃せない。ここには制作者側のある意図を感じるのだが……それはいったん後回しにして、もう少しストーリーの話を続けよう。

注1:エドガー・ライス・バローズ。1920年代を中心に活躍したアメリカ人小説家。ターザンの創造者。
注2:マイケル・ムアコック。1960年代後半に登場し、一世を風靡したイギリス人小説家。その後のファンタジー小説に多大な影響を及ぼした。

タシテンゲームあれこれ

 さて、タシテン国の旅を始めた主人公は、まず「ハジメノ村」というエリアにやってくる。各エリアには、その地域を束ねている妖精がいて、これがタシテンマスターだ。だが、王命とはいえ、よそ者の主人公は簡単にはマスターたちに会えない。だいいち、会おうにもどこにいるかもわからないのだ。そこでナムナムのアドバイスを聞きながら、住人の妖精たちに話を聞いて回ることになる。中には、マスターほどではないにしろ、そこそこの実力を持つ者もいて、主人公の実力を見せないと話をしてくれない、なんてことも起こる。超マイペースというか電波系というか、そんな感じの妖精もいるので、彼らと話をしようと思ったら、彼らの世界に行ってあげないといけない。そんなこんなで、主人公はさまざまな“タシテンゲーム”に挑むことになるのだ。

 タシテンゲームは全部で30種類以上あり、中には非常に凝った手強いゲームも存在する。しかし、いずれのゲームも大原則は同じ。すなわち、10の倍数を作ることでクリアしていくのだ。いくつか紹介してみよう。

石のせテン

画像 タッチペンを使って石をスライドさせる。全部の数字を足し、そこからいらない数字を推測するとやりやすい

 余計な数字を消してタシテンを作るゲーム。例えば、8、4、2とある。4を消せば8+2=10となるから、4が余計、ということになる。まあ、この程度ならさして問題ではないだろうが、石が2個以上あるバージョンになってくると、結構ややこしい。

モゾモゾファイト

画像 虫が画面外に行ってしまうとアウト。節を消せば一瞬動きが止まるので、とりあえず先頭の節だけ消し、その間に暗算を済ませて残りをまとめ消しすることもできる。

 数字が書かれた、尺取り虫のような生き物が出現。それぞれの数字に対して足して10になる数字をタッチペンで書いていく。例えば節が4つで、数字が2、3、4、5とあれば、8、7、6、5と書けばOKだ。やり込み派はまとめ消しで高得点を狙ってもいい。これは全部の節の数字を足し、それをタシテンにするための数字を答えることで行う。例の場合なら、2+3+4+5=14なので、6と書けばOKだ。

ナンバー狩り

画像 計算するだけではなく、こういう純粋なパズルに近いゲームも結構入っている。

 木の枝に隠れた数字を探し出し、タシテンを作る。逆さまになったり、反転したりした状態になっているので、なかなか紛らわしい。10ならともかく、4つで20にするといった問題になると該当する数字を探すだけでもひと苦労。

10秒フィッシング

画像 10秒だ、と思ったタイミングで糸を引き上げる。多少のズレは許してくれるが、ひらめきや暗算力とはまったく違った能力が問われる。

 10を数えるゲーム。画面に数字が表示され、それが一定間隔で消えていく。これがその時に用いるリズムになる。このゲームがキビしいのは、途中から数字が無表示になること。つまり、それまでのリズムを参考にしてジャスト10秒になるタイミングを計らねばならないのだ。

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