汎用兵器ヴァンツァーを駆って勝利をつかめ――人気シミュレーションRPG、DSに推参「フロントミッション 2089 ボーダー・オブ・マッドネス」レビュー(1/2 ページ)

自ら死地に身を投じ、明日を生きるために今日を戦う傭兵たち。最高の仲間たちとともに戦い、ともに泣き、そしてともに笑え。キャラクターはユニークで、掛け合いはポップ。だが、その底に流れているのは紛れもなく戦場のリアリズム。

» 2008年06月20日 17時00分 公開
[清水英行,ITmedia]

ケータイから携帯へ

ゲーム画面の端っこを押すと高速でマップが移動する。マップ全体を把握する作業が楽になり、うーん、実に快適

 「フロントミッション 2089」は、一度携帯電話用のアプリゲームとして2005年にリリースされている。リアルな描写が売りの戦術シミュレーションゲームが携帯電話で遊べる(しかも戦闘シーンなどはそのまま!)ということで、当時非常に驚いたことを覚えているが、そのニンテンドーDS移植作が本作というわけ。それに合わせて 「ボーダー・オブ・マッドネス」というサブタイトルも付けられている。

 ケータイアプリから携帯機へのプラットフォーム変更と聞くといぶかしげに思う人もいるかもしれない。確かに据え置き機などに移植する場合と比べ、グラフィックや容量が劣る分、グレードアップの幅は小さい。まして、もともとケータイアプリとして場所を選ばずどこでもプレイ可能なわけだから、一見メリットは薄いように見える。ところが、この移植はとても素敵なチョイスだったのだ。

 ニンテンドーDSに移植してよかった点、それは非常にレスポンスが快適になったということ。中でもタッチスクリーンでの操作が可能になったことを強くプッシュしたい。といっても、タッチペンはあまり使わない。じゃあ何を使用して画面をタッチするというのかって? それはプレイヤー自身の親指。本作はメニュー表示のボタンがタッチスクリーンの左下と右下に用意されており、親指をもっていきやすく作られているのだ。ターン終了するためにポチッ。セーブするためにポチッ。ついでに画面中央まで親指をもっていって決定をポチッ。慣れてくるとついついほかの画面でもメニューを押してしまう。さすがにマップ上のユニット選択を行うのは難しいが、武器の選択くらいなら簡単にできてしまう。親指でぺたぺた画面を触ってのプレイはまさにニンテンドーDSならではの操作といえるだろう。ただ問題がひとつ。それは画面が指紋だらけになってしまうこと。まあ、こればっかりは仕方ない。常にクリーナーやティッシュを持ち歩いて対処しよう。

物語を彩る個性豊かなキャラクターたち

 今回の舞台はハフマン島。記念すべきシリーズ第1作の舞台だが、本作の時代設定はそれより以前の西暦2089年。ハフマン島の地下資源をめぐり、超大国O.C.UとU.S.Nが争う中、主人公であるストームはO.C.U軍の傭兵として戦場に身を投じることになる。それまでに培ったキャリアを買われたストームは傭兵隊の隊長に抜擢され、4名の部下を預かることになる。

 ここまでを見れば、ミリタリーものの王道を行くようなストーリーに見えるだろうが、そう一筋縄ではいかない。まずは、この部下たちのことを紹介しよう。こいつらがとてつもなくユニークなのだ。

 まずは最初に部下になる女性副官のレイン。理知的な彼女はよき参謀としてストームを支えてくれる。まさにクールビューティーという表現がぴったりの女性だ。ところが、周囲があきれるほどの大酒飲みでおまけに滅法強い。アルコール度96度を誇るスピリタスを飲んでも普段と何も変わらないのだから、ほとんどバケモノである。結構面倒見のいいところがあって、酔いつぶれた仲間がいれば部屋まで運んでくれるし、他の傭兵が戦場で見捨てられたという話を聞かされれば激昂するし、なかなか熱いところもある。

 レインに続いて隊に入ってくるのがチャンプ。その名の通り、かつて立ち格闘技の世界大会でチャンピオンになったほどの格闘家なのだが、登場するなりブリーフィングルームで爆睡したり、突然筋肉トレーニングを始めたりと、あまりチャンピオンの威厳はなく、どちらかといえばただの筋肉バカ。ガタイはいいくせに、自分がチャンピオンだったことを知らなかったストームの態度を見てへこんだりと、意外に打たれ弱かったりする。

 チャンプと同じタイミングでオッドアイという女性パイロットも登場してくる。コードネームの由来は両目の色が異なる“オッドアイ”だからと、とてもストレート。明るく人当たりのよい彼女は、部隊のマスコット的な存在だ。パソコンオタクでサブカルチャーに関する造詣が深く、特にシューティングゲームでは世界屈指の腕前。インターネットの世界ではかなりの有名人らしい。一方で多国語に堪能であるなど、多彩な才能を持つ。

 4人目はグレイ。彼は入隊が少し遅く、序盤が過ぎた頃に現れる。O.C.U.の特殊部隊出身で、以前にいた部隊ではスナイパーとして高い評価を得ていた。彼はいたって普通の人間なのだが、まわりのメンバーが個性派揃いなので、すっかりそれに振り回されてしまう。ある意味、気の毒なヤツだ。

 こういう一癖も二癖もあるメンバーをストームがどうやってまとめているかというと、基本はスルー。別に性格が悪いわけではないのだが、忠実な軍人気質で他人のことに無関心な性格ゆえ。しかし、まわりが放っておかない。何だかんだと絡んできて、知らぬうちにリーダーっぽくなっている。

 プレイヤーはこの5人を操作して戦いを続けていくことになるのだ。

主人公のストーム。戦場では頼れるリーダーだが、軍事以外のことに関心が薄いため、時々周囲から浮いてしまうことも
序盤が過ぎると参加してくるグレイ。特殊部隊の狙撃チームに所属していた経歴を持ち、遠距離戦を得意とする
懇切丁寧にチュートリアルをしてくれる“ユウジ・キノシタ”。基地には他にも個性的なスタッフがいっぱい
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