汎用兵器ヴァンツァーを駆って勝利をつかめ――人気シミュレーションRPG、DSに推参「フロントミッション 2089 ボーダー・オブ・マッドネス」レビュー(2/2 ページ)

» 2008年06月20日 17時00分 公開
[清水英行,ITmedia]
前のページへ 1|2       

ミッションは開戦前から始まっている

 ストームたちはヴァンツァーと呼ばれる人型の汎用兵器に乗って戦っていく。どんな悪条件でも戦闘を行うことができる強力な陸上兵器だ。

 ヴァンツァーはボディ、右腕、左腕、脚という4つのパーツで構成されている。ボディはヴァンツァーの中枢部。左右の腕は銃器や接近戦武器を持つために不可欠だし、脚部は移動力の要――。このように各部位にはそれぞれ役割がある。機体の耐久力は部位ごとに個別にカウントされる。例えば、左腕のHPが0以下になれば、左腕が破壊されたことになり、装備していた武器も使用不可能になってしまう。

 脚部が壊された場合は、移動力が大幅に減ってしまう。完全に動けなくなるわけではないが、お話にならない遅さなので非常に困る。そして一番気をつけなければならないのがボディで、ここが破壊されたらそのヴァンツァーは強制的に戦場からリタイアとなる。他の部位にいくらHPが残っていても意味はない。なお、敵のヴァンツァーも同じ構成になっているので、運良くボディを破壊できれば戦闘がかなり楽になる。

 攻撃がどこに命中するかは基本的にランダムに決まる。キャラクターが修得できるスキルで多少狙う場所を調節できるが、それでも100%の保障はない。だから例えばマシンガンなどを装備して無数の弾丸を撃ち込んだのに、ダメージが全身に散ってしまって相手の攻撃力がまるで低下しない、なんてこともある。反対にスナイパーライフルやミサイルなどの破壊力の大きい武器がヒットして一発で腕をへし折ってしまうこともある。このあたりの運不運が勝負のアヤとなるのだ。

 壊されないためには、とりあえずHPの高いパーツを使えばいいことになるが、これがそう簡単ではない。ボディに「出力」というパラメータが設定されており、武器も含めたヴァンツァー全体の重量をこの数値以下におさめなければならないのだ。ここで注意すべきは、武器もその重量の中に含まれてるということ。例えばミサイルポッドは遠距離から敵を攻撃できて威力も高いといいことずくめの武器なのだが、やたら重量がある。無理なカスタマイズをしたりすると、かえってメチャクチャになってしまう。このあたりのバランス感覚が大切だ。

 武器に関しては、今作で新しい趣向が加えられた。もっとも武器と呼んでいいかはちょっと微妙だが。

 これまでのシリーズでは、原則として腕を破壊されると武器は使用できなくなった。両腕を折られたヴァンツァーは、壁ぐらいの役にしかたたなかったのだ。しかし、今作では体当たりができるようになっている。両腕が破壊された場合でも、脚部を破壊されていなければ、自らのボディを叩きつけることで相手にダメージを与えられるようになったのだ。ただし、体当たりを行った方も相当なダメージを受けてしまう。まあ、本当にどうしようもない時の手段といってよく、プレイヤー側があまりこれをやることはない。怖いのは敵。連中はおかまいなしに敢行してくる。まさにカミカゼアタックの恐怖だ。

 また、主人公たちはそれぞれ得意とする攻撃方法を持っている。ヴァンツァーのカスタマイズをする時にはこれも重要だ。ストームは近距離戦向きなので、もっとも適した武器はマシンガンだし、チャンプは格闘型なので接近戦武器が得意。別に苦手な武器を装備してもいいのだが、それではやはりトータルでの攻撃力が下がる。やはり適性にあった装備がベストなのだ。

 なお、新しいパーツは戦場で得た金で購入してそろえていく。資金繰りはそれほど厳しくはないが、かといって何でもかんでも買えるほどの大金ではない。結局このへんは自営業と同じなわけで、節約を心がけて切り盛りしていくしかないだろう。傭兵も気楽なだけの商売じゃないんだね。

同じパーツで構成するとデザインが統一されて格好いい。しかも比較的バランスの取れた設計になる
各ヴァンツァーは最大4つのアイテムを装備ができる。緊急時に備えて回復アイテムを持たせるといい
ミッションを達成すると報酬がもらえる。成功度合いによって金額も変動するので勝ち方にも気をつけたい

戦場での駆け引きと基地での掛け合い

途中ミッションの分岐があることも。選択しなかったミッションは別の部隊が遂行するため、今回のプレイでは挑戦できない

 ヴァンツァーのカスタマイズが終われば、いよいよ出撃となるのだが、本作では1ステージが比較的短く、あまり大多数の敵が出現してくることもない。基本1ケタの攻防でマップもさほど広くはない。その意味では、シリーズに馴れていない人も遊びやすいだろう。このあたり、いかにも元は携帯のコンテンツだった名残を感じる。

 しかし、コンパクトだからといって内容まで薄いわけではない。それどころかバランス感覚は非常にいい。接戦必至の緊迫感あふれるミッションや敵を一掃できる爽快感あふれたミッションなどが上手い具合に配列され、飽きることなくプレイを続けていける。正規のミッション以外にも、アリーナの賭け試合に出て賞金を稼ぐことも可能。オッズ制が採られているので、相性がよくて倍率のいい敵を倒していけば、金の面では不自由することはなくなるかもしれない。

 さて、こうして勝利を収めれば任務は完了、ストームたちは基地へと帰還することになる。かくしてミッションとミッションのつなぎ、いわゆるインターミッションになるわけだが、ここでのストームたちの掛け合いはちょっと驚くほどに明るく軽い。

 フロントミッションをバリバリのミリタリーものだと思っている人は、面食らうかもしれないが、彼らのはしゃぎぶりはそれほど凄いのだ。堅苦しいことを考えると、兵隊のくせに規律がなっていない……などと怒りたくなるかもしれないが、ちょっと待った。

ストームたちはまるで高校生の仲良しグループのよう。とにかくはしゃぎまわり、よく語らい、よく笑う

 もともとストームたちは傭兵なのである。金のために命を売っているわけであり、死んだところで誰かが悲しんでくれるわけでも、名誉が与えられるわけでもない。そうした状態でありながら、毎日のように死ぬかもしれない戦場に出かけていかねばならないのだ。だとしたら、せめて基地にいる時ぐらい、浮き世の憂さを忘れたくなるのが人情ではないか。おおはしゃぎしているからといってたるんどる、というのはあまりにもつれない話では。

 悲惨な戦場から帰ってきた後まで、シリアスである必要はない。むしろ過酷な環境から解放された喜びを爆発させるのが普通の感覚だろう。今日が終わったことに感謝し、明日を生きられることに感謝する。互いの無事を喜び、つかの間の休息を全力で楽しむ。それもまた戦場の確かなリアリズムといえるかもしれない。

 シリーズ伝統のシステムを継承し、それをポップなキャラクターという外観でくるんだ、「フロントミッション 2089 ボーダー・オブ・マッドネス」。コンパクトながら、よくまとまった好編だ。

「フロントミッション2089 ボーダー・オブ・マッドネス」
対応機種ニンテンドーDS
ジャンルドラマティックシミュレーションRPG
発売日2008年5月29日
価格(税込)5040円)
プレイ人数1人
CEROA区分(全年齢対象)
(C) 2005,2008 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/14/news189.jpg 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  4. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  5. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  7. /nl/articles/2411/15/news009.jpg 高2のとき、留学先のクラスで出会った2人が結婚し…… 米国人夫から日本人妻への「最高すぎる」サプライズが70万再生 「いいね100回くらい押したい」
  8. /nl/articles/2411/15/news058.jpg 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」
  9. /nl/articles/2411/14/news023.jpg “膝まで伸びた草ボーボーの庭”をプロが手入れしたら…… 現れた“まさかの光景”に「誰が想像しただろう」「草刈機の魔法使いだ」と称賛の声
  10. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた