プレイヤーの心のゴールに突き刺さる:「イナズマイレブン」レビュー(1/2 ページ)
レベルファイブが贈る新タイトルは、なんとサッカーゲーム! その内容は、現役小学生も往年の熱血サッカーまんが世代もみんなが楽しめる夢のサッカーゲームだった!?
エースストライカーの豪炎寺が抜け出す。ここでシュートだ。出たぁ、必殺のファイアトルネード!! うなる剛球がキーパーを吹き飛ばす……。今勢いに乗っているレベルファイブの新作はなんとサッカーゲーム! その内容は、現役小学生も往年の熱血サッカーまんが世代もみんなが楽しめる夢のサッカーゲームだった!?
サッカーゲーム界に新風が巻き起こる!
王道の「ウイニングイレブン」や「サカつく」もいいが、筆者はサッカーゲームの可能性を広げてくれるという意味で、斬新な切り口を持つサッカーものに目がない。
かつては1998年、フランスワールドカップの際にエニックス(現スクウェア・エニックス)から「日本代表チームの監督になろう! 〜世界初、サッカーRPG〜」なんてゲームも発売された。一般的な評価はさておき、これもなかなか革新的で筆者は気に入っていた。また、なんとノベルゲームとサッカーの試合を組み合わせた「ドラマティックサッカーゲーム 日本代表選手になろう!」なるソフトもあった。ボールのごとく文字が画面外から飛んでくるシステムには度肝を抜かれたものだ。最近では、ヒーローインタビューに答えたり、結婚したり、マイホームを買ったりと、1人のサッカー選手の人生に着目した「サッカーライフ」シリーズにもハマった。スマッシュヒットになり続編も出たので覚えている読者も多いだろう。物好きと言われればそうかもしれない。でも、広大なフロンティアを見つけるのは常に挑戦者なのだ。
この「イナズマイレブン」も、新たな可能性を切り開くパイオニア。ジャンルは「収集・育成サッカーRPG」。テーマはサッカー少年の青春ドラマだ。振り返れば80年代、まんがの世界では、主人公とライバルたちが数々の必殺シュートを繰り出し、燃えるような試合を行っていた。ド派手な必殺技の興奮、勝利に向かってひた走る熱血さ、チームメイトたちの爽やかな友情……。そうした少年まんがテイストをギュッと詰め込んだ、どこか懐かしさもあるサッカーゲームが「イナズマイレブン」だ。主人公と年齢が近い小中学生はもちろん、サッカーまんがに燃えて、出来もしない必殺技を練習していた三十路世代も、童心に帰って夢中にさせてくれる。
「イナズマイレブン」の開発・発売は福岡に拠点を置くレベルファイブ。レベルファイブといえば、「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」の制作や、大ヒットした「レイトン教授」シリーズでおなじみだ。今回「レイトン教授」シリーズに続く自社ブランド作品がサッカーゲームということで、筆者も正直驚いた。しかし、随所に見せるこだわりとゲームそのものの質の高さには、さすがはレベルファイブと思わされた。
特に舞台となる雷門中学の丁寧な作りといったらない。普通のサッカーゲームなら、教室とグラウンドと部室くらいで、あとは省いてしまっても問題ないが、雷門中学には図書室もあれば教員室、放送室まである。外にはプールや野球場、テニスコート……。屋上では応援団が練習し、体育館裏には不良がたむろする。これだけ作り込まれた学校を、部員をスカウトするために走り回るだけでも学園ドラマ気分が盛り上がってくる。RPGというジャンルは、いかに世界観を構築し、プレイヤーを引き込むかが重要だが、この雷門中の作りに、ゲーム冒頭からワクワクさせられた。作品からパワーを感じるとはこのことだろう。
心が熱くなる青春サッカードラマ!
さて、本作のポイントは大きく分けてふたつある。ひとつは先にも書いた、熱血で友情成分たっぷりのシナリオ部分。そしてもうひとつがタッチペンを使ったアクション性に加えて、カードゲームのような戦略性も兼ね備えた試合部分だ。
まずはストーリーから見ていこう。
――マンモス中学、雷門(らいもん)中のサッカー部は、部員7人の弱小チーム。やる気があるのはキャプテンのGK円堂守だけ。あとのメンバーは部室でダラけていたり、携帯ゲームをしていたり……。そんなほとんど廃部寸前のサッカー部に、最後通告が突きつけられた。「最強校、帝国学園との練習試合に勝てなければ廃部!」。しかしキャプテンはあきらめなかった。
「足りない部員はたったの4人だ! オレは、ゼッタイに部員を集めて帝国と試合をしてみせるぞ!」
そこに、伝説のストライカーと呼ばれた豪炎寺修也が転校してくる。ここぞとばかりに部活に誘う円堂。だが「わるいな。サッカーは……もうやめたんだ」と冷たく断られてしまう。果たして部員は集まるのか? そして豪炎寺の心の氷は溶けるのか?
弱小チームが主人公の熱意で強くなっていく青春ドラマはお約束ながらもすがすがしい。主人公の円堂はとにかくサッカーが大好きで前向きな熱血漢。さらに仲間思いでもあり、どんな状況にあってもチームメイトを信じることを忘れない。その姿勢が奇跡を呼んでいく。
キャプテンの円堂もサッカー愛にかけてはかなりのものだが、雷門中学のチームメイトも負けず劣らず個性的。初期サッカー部のメンバーを何人か紹介しよう。
- 円堂守(GK):サッカーを愛する不屈の熱血キャプテン。祖父が残した「大介のスゴ技特訓ノート」を大事にしている。最初に覚える必殺技は気合いと根性の巨大な右手でシュートを受け止める「ゴッドハンド」。相手の必殺シュートもなんなくキャッチ。
- 豪炎寺修也(FW):クールな心に情熱を秘めた伝説のストライカー。彼が転校した理由とは……。ファイアボールをゴールに叩き込む「ファイアトルネード」は必見。
- 風丸一郎太(DF):陸上部出身の快足DF。円堂の親友で、サッカー部の苦境を知って転部してくれた友人思いのいいヤツ。「しっぷうダッシュ」で抜き去れ!
- 染岡竜吾(FW):見た目は不良だが実は努力家。最初は同じFWの豪炎寺に対抗心を燃やしているが……。日々、夜遅くまでの練習によって習得した「ドラゴンクラッシュ」では青いドラゴンが天を駆け、GKに襲いかかる!
- 壁山塀吾郎(DF):アフロヘアのような独特の髪型と丸いお腹がトレードマークのディフェンダー。大地の力で地面が盛り上がる「ザ・ウォール」でFWの前に立ちはだかる。
もちろん、雷門中以外のライバル校も変わっている。最初の帝国学園もすごかったが、次に戦う「尾刈斗(おかると)中学」もかなりキテる。頭にロウソクを差している八墓祟やジェイソン風のマスクをかぶったゴールキーパーの鉈十三など、怖い選手ぞろい。必殺技も、地面から手がわき上がってきてこちらの足を止める「おんりょう」や、体が動かなくなる「のろい」など怪しげだ。次から次へと現れる不思議なライバル校。今度はどんなヤツらが相手で、どんな技を使ってくるのか? 思わず先が気になってしまう。むろん、熱血漢の円堂少年は、どんなひきょうな敵が来ても、サッカーを愛する気持ちで正面突破していくのだが。
ストーリーは1章区切り。ここぞという場面では美麗なアニメムービーも挿入されてドラマチック。涙を流すほど感動的とまでは言わないが、一生懸命何かをやるっていいな、と前向きな気持ちがわいてくる。
現在「月刊コロコロコミック」で同名まんがの連載も始まっている。この秋からはアニメ放映の予定もあり、さらにはカードゲームや据え置き機向け「イナズマイレブン ブレイク!」の開発もすでにアナウンス済みだ。DSから生まれたサッカーゲームが、大きなムーブメントを巻き起こすかもしれない。
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