「SPORE」発売記念――生命誕生と進化の過程を謎解く

9月5日、エレクトロニック・アーツはWindows版「SPORE」の発売を記念して、評論家の唐沢俊一さんと現役東大タレントの木村美紀さんを招いたトークショーを開催した。

» 2008年09月05日 19時46分 公開
[加藤亘,ITmedia]

進化をエンターテインメントとして表現した作品の中で頂点に達した「SPORE」

左が木村美紀さん、右が唐沢俊一さん

 エレクトロニック・アーツは9月5日、「SPORE」の発売を記念し、東京お茶の水にあるデジタルハリウッド東京本校セミナーホールにおいて、「生命誕生と進化の過程を謎解く!」と題した評論家の唐沢俊一さんと現役東大タレントの木村美紀さんによるトークショーを開催した。

 「SPORE」は細胞から宇宙まで、箱庭の中で無限の世界をシミュレーションできる「シムシティ」シリーズを手がけたウィル・ライト氏の最新作。実に構想・開発に8年もの歳月が費やされている。本作では生命の誕生から部族、文明の進化、そして他部族への侵略や交流といった歴史や、そこに生活するクリーチャーや乗り物、建物など独自に創造しカスタマイズすることができる。多種族と戦い支配するか、仲間になって共存するかはプレイヤー次第というわけだ。

 本作では進化の過程に合わせて5段階のステージが存在する。プレイヤーは自分のくリーチャーを進化させながら、彼らが暮らす惑星を創り上げていく。なお、本作に先駆けて6月に「SPORE クリーチャー クリエイター」が発売されており、プレイヤーがクリーチャーを創造する楽しさを提供している。この「SPORE クリーチャー クリエイター」では、オンラインコミュニティの「スポアペディア」に自分で作ったクリーチャーを登録することができ、他者と共有することができる。

第1ステージ:細胞
クリーチャーは生き残るため、ほかのクリーチャーを捕食し成長していく。成長過程ではほかの細胞や隕石から採取したパーツを付け加え、外見の変化はもちろん、パーツに対応した能力を持つクリーチャーへと進化する

第2ステージ:クリーチャー
水中で暮らしていたクリーチャーが、生活の場を陸へ移して、外敵から身を守りながら繁殖、種族を繁栄させていく。ここでは他種族との交流も覚えていくことになる

第3ステージ:集落
族長を中心に、知能の発展した集落が拡大していく。今まで単体で行動していたクリーチャーが群れを成し、集団行動を始める。プレイヤーは知能と文明を持ち始めた部族を発展させ、集団と集団の関係を構築していく

第4ステージ:文明
多数の部族ができはじめ、さまざまな都市や文化が生まれていく中、それぞれの部族は生き残りをかけて他の部族と接触をはかる。プレイヤーは乗り物や建物がひしめく巨大都市を形成し、惑星の支配に乗り出す

第5ステージ:宇宙
惑星の支配者になったプレイヤーは、新たな生活環境を求めて宇宙を探索する。他の惑星で生活する部族に攻撃をしかけ、より多くの惑星を自分の支配下に置き、宇宙一の種族を目指したり、仲間を作って同盟を結んだり、帝国を築くこともできる

 今回の発売記念イベントは、ゲームで繰り広げられる各ステージ内容を人間の進化と対比させながら、生命の誕生や生物・人間の進化、集落の発展、文明開化を目指す中で生まれる戦争や友好同盟、技術の進歩を遂げた現在の地球、そして謎多き宇宙の話をエンターテインメントの視点で語るという趣旨。

 開幕にあたってプロダクトマネージャーの籠谷多恵子氏は、待たせただけあるクオリティーの高さとボリュームを保証し、「もうちょっと値段を上げてもよかったんじゃないかというほどの出来」と太鼓判を押す。驚きの瞬間を感じ、楽しさを伝えてほしいと挨拶した。続いて本作の紹介に立ったローカライズプロデューサーの安次嶺クリス氏も、コアゲーマーだけでなくライトユーザーにも楽しんでもらえるべく、インタフェースや操作面に時間をかけて調整したと語った。ビデオメッセージではウィル・ライト氏が登場し、「生命とは何かと、広い視野で宇宙を見てほしい。(本作は)生命誕生から未来までを観察することができます。誰ひとり殺すことなく、争うことなくクリアも可能で、プレイヤーがコントロールするゲームなのです」とコメントをよせてくれた。

唐沢俊一さんと木村美紀さんによるトークショー

進化はエンターテインメントで描かれると唐沢さん

 今回のトークショーに伴い、唐沢俊一さんも木村美紀さんも「SPORE」を遊んでみたのだそうだ。唐沢さんはまだ宇宙まで進出していないものの、細胞からクリーチャーへの進化の過程で、武器を持たせたり捕食の形態を効率化させるなど、進化の方向性をいじるのに夢中となったのだとか。木村さんは3日ほど寝ずにクリアするほどはまってしまったとのことで、約35億年前の生命誕生から現在、さらに未来までたった数日で体験できるのは素晴らしいと興奮ぎみだった。

 ここからは前述したとおり、ゲームの各ステージを人間の進化と対比してのトークショーとなった。唐沢さんはゲームそのものが進化を続け、ついに「SPORE」においては進化をエンターテインメントとしているに至っていると紹介。しかし、進化をエンターテインメントとして表現した作品はけっこう昔からあったと、19世紀に書かれたH・G・ウェルズの小説「宇宙戦争」を引き合いに出す。ウェルズは、ジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれ、、タイムマシンや宇宙人の代名詞のようなタコ型火星人を生み出し、今でも影響を与え続けている人物。しかし、ウェルズは根拠なくタコ型火星人を想像したわけではないと唐沢さん。当時、一般的とされていた火星の環境を鑑みて、進化の過程を加味しているのだとか。ウェルズは進化ばかりでなく、退化も著書「タイムマシン」で描いており、環境悪化に伴い人類はいずれ猿に退化すると考えた。

 木村さんが「SPORE」を遊ぶ際、プレイヤーの観察するという行為が宇宙を支配する神になったような感覚に似ていると語ると、唐沢さんは1930年代に書かれたエドモンド・ハミルトンの短編「フェッセンデンの宇宙」でまさに同じような視点が登場すると紹介する。「フェッセンデンの宇宙」は、実験室内に創造されたミニチュアの宇宙を見た主人公が、こうして観察している自分のいる宇宙も誰かの創造物なのではないかと夜空を仰ぐという内容(実際、誰かの視線を夜空に感じるのだが)。ここでどれだけ進化という概念をエンターテインメントにしてきたのかという映像を見ることになった。

 ウェルズの火星人が、その後人間の進化すべき姿として投射した例として唐沢さんは「アウターリミッツ」を紹介。この作品には、人間が進化すると脳の容量が増え、頭が大きくなるという未来人の姿が描かれた。1960年代、人間の未来の幸せは進化の先にあり、当時のマンガ雑誌では「人類の未来」と題した未来想像図が特集されていたと、こちらもスクリーンで紹介する。そこには、頭が大きく歯とアゴが退化し顔が小さくなり、胴が短く、手足が細くなった未来人が創造されていた。このグロテスクとしか思えない姿であっても、当時はこれがあるべき進化の姿として受け入れられていた。進化の概念も進化していることが分かる。

 なぜこうした進化をするのだろうか? やはり、そこには環境の変化が重要な要因となっており、「SPORE」でもその概念がベースとなっている。ディズニーのアニメーション「未来の国 火星とその彼方」では、厳しい火星の環境で生物が適応していくであろう未来が登場する。当然、興味を持つのが形態としての進化だけでなく、ちょっと違う進化を経た生物の文明の進化ではないだろうか? 唐沢さんは水木しげるが描く「宇宙虫」を取り上げ、数日間のうちに人類が経験した進化の歴史を駆け足で見せる手法を、まさに「SPORE」そのものだと絶賛した。

 木村さんは「SPORE」において、極力平和的解決を志したが、唐沢さんは武器を背負わせ武力による支配を試みたのだそうだ。武力に頼った国はいずれ滅びるのが常。唐沢さんの部族は進化の袋小路に入りこみ、立ちゆかなくなってきたと話す。ラベルのボレロに乗せて生物の進化と自然淘汰を描いたブルーノ・ボツェットによるアニメーション映画「ネオ・ファンタジア」では、原始の細胞から種類が増え、人類へと進化し、他の生物を支配するという弱肉強食の姿が描かれた。しかし、「SPORE」では平和友好を武器に次のステージにいく可能性が示されている。進化とはまさにいくつもの可能性の先にあるのだ。

 進化というのは学問的なものだけでなく、娯楽としても楽しまれている。その頂点に達しているのが「SPORE」というゲームだと感じたと唐沢さん。このゲームを遊んで感性を進化させてもらいたいと、「SPORE」が技術的な進化をしているだけでなく、ゲームから教わることもあると締めくくった。

SPORE(スポア)
対応機種Windows XP/Vista
ジャンルシミュレーション/アクション
発売日9月5日
価格(税込)7329円
(C) 2008 Electronic Arts Inc. EA, the EA logo and SPORE are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved. All other trademarks are the property of their respective owners.


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/15/news011.jpg 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. /nl/articles/2412/16/news107.jpg 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. /nl/articles/2412/15/news035.jpg 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. /nl/articles/2312/15/news032.jpg 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. /nl/articles/2412/15/news028.jpg 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. /nl/articles/2412/16/news023.jpg 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」