誰もが知らず知らずのうちに誰かの運命に干渉している――パズル的な要素が面白い“実写”サウンドノベル:「428」レビュー(1/2 ページ)
渋谷を舞台にスリルとサスペンスに満ちた物語が展開される「428」。実写とサウンドノベルの絶妙な融合が新たなエンターテイメントの境地を切り開いた!
運命のもつれる糸をほどいていく
家族や友人、学生だったらクラスメイト、社会人だったら会社の同僚。身近にいる人が自分の行動や人生に影響を与えるのは、言ってみれば当たり前の話。でも、見ず知らずの他人が自分の運命を左右するなんてあるんだろうか? ちょっとショボい例だが、この間こんな体験をした。
原稿書きも終わってスーパーにお弁当を買いに行ったところ、半額の寿司があった。かごに入れようとしたら、横からおばちゃんが強奪! おばちゃんは大量の半額弁当を漁っていた。
ほかにも弁当はあったが、なんとなく寿司が食べたくて鮮魚コーナーに行ってマグロのさくを買う。閉店間近で、それも最後の1個。するとしばらくして、3人連れの男女グループがやってきて、お刺身コーナーで騒ぎ出した。「ほら、だからもう少し早く来ればよかったじゃん」「手巻きなのに刺身なしって本気?」。結局、彼らはすぐに店を出ていった。
ふと「これ、『428』みたいだな」と思った。もし、おばちゃんに寿司を取られなければ、マグロは残り、3人組は無事に手巻きができたはず。だから、筆者の時間をさかのぼってあと5分早く仕事を終わらせていれば、万事丸く納まっていたかもしれない。
考えてみれば、人が集まるところには必ずこうした悲喜劇が起こる。それが数万人、数十万人という人が行き交う渋谷であればなおさらだ。誰かが誰かの運命に干渉し、こんがらがっている状態。これを交通整理するゲーム、それが428なのだ(お寿司の例はあまりに地味だが、428は誘拐事件をメインにしたドラマチックなストーリー展開なのでご安心を)。
セガから発売されたサウンドノベルである428は、1998年のセガサターン用ソフト「街」と同じく、渋谷を舞台にした実写作品だ。双方とも、開発したのは「不思議のダンジョン」シリーズで知られるチュンソフト。「弟切草」「かまいたちの夜」など、サウンドノベルの生みの親でもある。
街は知る人ぞ知る名作だ。ゲーマーの間では熱狂的なファンを抱える存在として有名で、某ゲーム雑誌では読者投票で長い間ベスト20に入り続けていた。
だが、高い評価とは裏腹にヒットとはいかなかった。その理由は、画像が実写だったから、とささやかれる。ゲームファンにはどうも実写への拒否反応があり、たとえデキがよくても実写ゲームはヒットに結びつかない傾向があった。それともうひとつ、8人の主人公を切り替えていくシステムが、複雑で感情移入しにくかったというのも要因だろう。
実は428も、その街の延長線上にある。ただし、今回は当時とは状況が違う。Wii用ソフトなのも428の追い風となるはずだ。Wiiのメインターゲットはいわゆるライト層。ドット絵やポリゴンキャラに慣れっこのゲームファンに比べると、先入観が少ない。“実写映像のゲーム”というよりは、“ゲームっぽい要素が入ったドラマ”と受け取られ、新しいエンターテイメント作品としてヒットするのではないか。実際プレイしてみても、サウンドや映像の演出手法がうまく、本当に映画やドラマを見ている気分になる。実写ゲームはちょっと……という人でも、引き込まれるはずだ。
複雑に思えたシステムも、今回導入された「タイムチャート」によって、時間の流れがビジュアル化され、一気に遊びやすくなった。どこにフラグが隠されているか見つけるという楽しさは多少減ったが、その分ストーリーへの没入度が増した。
複数視点から並行して同じ事件を見る海外ドラマのヒットも、428をより親しみやすい存在にしている。これまでのゲームとは違った領域に挑む428。もし、この試みが多くの人に受け入れられたら、ゲームの可能性は一気に開けそうだ。
渋谷に異常事態発生!?
200×年某日、ひとつの誘拐事件が、渋谷に異常事態の始まりを告げる。
誘拐されたのは、渋谷区に在住する緑山学院大学の女子大生・大沢マリア(19歳)。犯人の要求に従い、午前10時に人質の双子の妹・ひとみが現金入りのアタッシュケースを持ってハチ公前に立つ……。
プレイヤーは、騒動に満ちた渋谷の1日を時間の進行に沿って追っていく。メインとなる主人公は、以下の5人。それぞれ、展開されるシナリオのテイストも異なる。
●加納慎也(キャスト:天野浩成)
渋谷署刑事課の若手刑事。女子大生誘拐事件の身代金受け渡し現場に配備される。現れた犯人を追いかけ、渋谷の雑踏に入り込むが……。
加納シナリオは、まさしく刑事ドラマを地でいく展開。まだまだ刑事としては未熟な彼の成長物語としても読める。加納は刑事という仕事に何を見いだすのか?
●遠藤亜智(キャスト:中村悠斗)
渋谷・道玄坂にある遠藤電気店の長男。かつて渋谷最大のグループ「KOK」の伝説的ヘッドだった。今は愛する渋谷とエコロジーのため、ペットボトルを拾い集める……。
誰よりも渋谷を愛する亜智のシナリオは、疾走感にあふれている。何者かに狙われるひとみと、困った人を放っておけない亜智。姫とナイトのような関係にも注目だ。
●御法川実(キャスト:北上史欧)
先輩が経営するヘブン出版の倒産危機に一肌脱ぐ熱血フリーライター。だが、会社を救うための条件とは、この日の夜8時までに雑誌「噂の大将」の来月号を完成させることだった!?
相手をわざと怒らせて本音を引き出す強引な取材方法を駆使する彼のシナリオは、ドタバタあり、笑いあり、人情ありのごった煮テイスト。全体的にシリアス調の中にあって、いいアクセントになっている(ライターの端くれである筆者にとっては、妙に身につまされるシナリオだった)。
●大沢賢治(キャスト:小山卓治)
国内屈指の大企業・大越製薬で、新薬開発の研究主任を努める中年の男性。ウィルスのエキスパートだが、研究生活一筋だったせいで、家族ともうまくいっていない様子……。
大沢が渋谷の自宅で差出人不明のメールを受け取ったところから始まるシナリオ。社会派路線かと思いきや、意外にも上質のヒューマンドラマで感動を誘う。家族っていいなと思える。
●タマ(キャスト:???)
謎の着ぐるみ。駅前で「バーニング・ハンマー」という怪しげな健康ドリンクを配るバイト中。外から見るとかわいいが、入っている当人はむちゃくちゃ暑くて辛いのは言うまでもない。
チャックが壊れてしまい着ぐるみが脱げないタマが遭遇する、数々のハプニング。タマシナリオは、クスクス笑えるドタバタシチュエーションコメディ。だが、実は……。
彼らのほかにも、一癖も二癖もある登場人物が物語に厚みをもたらす。コミカルあり、シリアスあり、スリルあり、ハートフルあり、淡いラブストーリーあり……。出だしは話がいろいろと入り組んで分かりにくいかもしれないが、序盤を過ぎると各シナリオが一気に加速し、絡み合いつつ怒濤(どとう)の展開を迎える。こうなるともう目が離せない。
個人的には、もう少し何気ない日常の偶然が反応し合って事件へ転がっていくというパターンが好みだが、盛り上がりに関しては言うことなし。話のスケールは徐々に大きくなるので、リアリティを気にする人にとっては、終盤はついて行きにくくなるかも? ただし、そのあたりは好みの問題。エンディングで感じられるカタルシスは相当なものだ。
総監督はチュンソフトのロールプレイドラマ「3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!」のイシイジロウ氏。メインのシナリオライターは、同じく金八先生の北島行徳氏。金八先生でも生徒1人1人の成長が細やかに描かれていたが、428でもそのうまさが生きている。
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