安価なライセンス費を武器に伸び続ける台湾ゲーム――TAIPEI GAME SHOW 2009リポート後編TAIPEI GAME SHOW 2009(1/2 ページ)

後編では主要メーカーブース以外のTAIPEG GAME SHOWらしい風景を追いつつ、台湾ゲーム業界について考察してみた。会場ではUserJoyスタッフに遭遇、MMORPG「Angel Love Online」の最新情報もプレイヤーには必見だ。

» 2009年02月16日 16時20分 公開
[麻生ちはや/Guevarista,ITmedia]
バンダイナムコと韓国Hanbitが組んだ「Gundam Capsule Fighter」は、会場の注目を集めていた

 会場リポートの続きをお届けする前に、台湾ゲーム業界と日本ゲーム業界の関係について、基本的な構図を説明しておきたい。リポート前編でブース出展情報をお届けしたGAME FLIER(遊戯新幹線)およびSoft-World(智冠科技)を代表例として、台湾製オンラインゲームは大陸中国(中華人民共和国)に根付き、また日本市場にも徐々に地歩を築きつつある。

 例えば昨年大陸中国で数々の賞に輝いた3D MMORPG「Fantasy Journey Online(風火之旅)」は、Soft-Worldが現地デベロッパと協力して作り上げたタイトルであるし、TAIPEI GAME SHOW 2008でお目見えした、Xbox360とPCのサーバー共有型ファンタジーMMORPG「Xenjo Online」は、台湾におけるサービススケジュール未定のまま大陸中国でのサービス開始が決まっている。

 台湾の人口約2100万人対して、大陸中国のそれは約12億人。文字種こそ繁体字/簡体字と違え、言語を共有する隣の巨大市場は、台湾にとってしばしばホームグラウンド以上に重要だ。

 では、日本で台湾製オンラインゲームが受容されつつあるのはどうしてか? もちろん作品の品質向上といった前提はあるが、傾向として注目すべきはむしろ、ライセンスフィーの安さ(数百万円クラスが多い。ただし運営経費はまた別)である。

 日本でもオンラインゲームビジネスがある程度定着したとはいえ、ここ数年の取り組みを通して日本のオンラインゲームパブリッシャの多くは、このビジネスのギャンブル的性格に気づいてしまった。日本のゲーマーはオンラインゲームの登場に先行するコンソールゲーム文化によって、目が肥えている。だからこそ典型的なコンソールゲームタイトルに真似できなかったMMORPGに注目が集まるわけだが、大金を投じて開発され、ものすごい契約金額でライセンスされた作品が必ずしも成功するわけでないことは、みなさんご承知のとおりだ。そうなると、安価な作品を多数試したほうが、成功可能性の高い投資スタイルとなる。

 日本を除く東アジア諸国では、そうした場面でカジュアルゲームに注目が集まるわけだが、日本市場では総じて、ファミコンタイトルを思い起こさせるようなカジュアルタイトルのゲーム性は成功しづらい。そんなとき白羽の矢が立つのが、MMORPGでありながら過度な作り込みでライセンス料のレートを釣り上げていない手ごろな作品であったり、また、大元のサービスと大陸中国へのライセンス供与を通して減価償却を済ませた作品であったりする。日本人の嗜好に多少合わない部分があったとしても、そこは日本パブリッシャが手を入れたり、注文を入れたりすればよい。どうせそれはどんな作品でも多かれ少なかれ必要になるのだ……かくして、台湾製ゲームの日本進出はゆっくりとだが確実に進んでいる。

 こうした構図を踏まえて、今後台湾のゲームメーカーおよび具体的なタイトル、日本におけるパブリッシングの形を見ていくと、いろいろ参考になったり、納得できたりするケースも多いはずである。例えばリポート前編の冒頭でも触れたとおり、今回のTAIPEI GAME SHOWではGamaniaがサービスするカードゲーム「アルテイル」や、いくつかの三国志ストラテジー、新興メーカーによる意欲的な取り組みとしてのフィールド型RPGを含め、いわゆるブラウザゲームを集めた「WEB GAME Party」という一画が会場に用意されている。正直、あまり賑わっていたとはいえないし、作品としてまだまだ洗練されていないものが多かった印象が強いものの、現在台湾のゲーム界では、ゲームがプレイされる場面を広げるためのアプローチとして、ブラウザゲームに注目が集まりつつある。

ブラウザゲームスペースの、Gamania(遊戯橘子)ブースとWayi(華義)ブース

 そして例えば日本市場を念頭に置いたとき、今後の可能性については、また別の意義を見出せるだろう。ある意味ブラウザゲームこそ、本当に小規模のバジェット(予算規模)で、往年のファミコン的アクションゲームとはまったく異なるゲーム性を実現できる仕組みだからだ。この分野の動向を、引き続き見守っていきたい。

 ブースステージでのミニイベントと販促グッズの配布、そして直接の製品販売など、ファンサービス的側面が強いのも、TAIPEI GAME SHOWの一大特徴である。各メーカーブースには物販コーナーがあって、プレイチケットやアイテムチケット、それらが付属したクライアントパッケージが販売されている。なかには相当にレアなアイテムが会場限定で売り出されたりして、それがショウの人出を大きく押し上げている。

 物販にはプレイステーション 3/PSPブースや、Xbox 360ブースでも同様で、それぞれ対応タイトルやグッズ、ゲーム機本体が売られていたりする。つまりTAIPEI GAME SHOWは来場者にとって、ごく普通に買い物の機会でもあるのだ。


それぞれXbox 360ブース、プレイステーション 3ブースと、付属の物販スペース。対応各ゲームの試遊台のみならず、物販もなかなか盛況の様子

 それらとは別に純然たるゲームショップのブースもあって、PCパッケージゲームとコンソールゲームの店が並んでいる。台湾製PCパッケージゲームで1本199元(600円強)、海外製ローカライズタイトルで299〜999元(約900〜3000円)と、総じて安価だ。

 だが、台湾のパッケージゲーム業界がうまく回っているかというと、それは逆である。東アジア地域通有の海賊版問題と、台湾におけるPCリテラシーの高さがアダになるカジュアルコピー問題で、台湾在来のパッケージゲームメーカーは総じて苦しい戦いを強いられているし、海外ローカライズタイトルの販売も、基本的に不正コピーが広がる前の、時間との戦いであるようだ。


ショップブースは例年通りだが、話題性を高付加価値につなげるためか、ギャルゲコーナーが。で、実際、抱き枕は初日完売だったようなので、お見事

 かくして有力パッケージゲームメーカーも、次第にオンラインゲーム開発へとシフトしていくのである。

台湾最大のゲームWebメディア「巴哈姆特」の、陳 建仁氏(右)と林 盈簱氏(左)

 台湾におけるPCオンラインゲーム市場の規模は、日本円に換算して300億円弱。これは日本におけるそれの3分の1弱であるから、人口が6分の1強しかいないことを考えれば、立派なオンラインゲーム大国である。ここ2〜3年不動の一位を占めているのは「World of Warcraft III(魔獣世界)」で、「Lineage(天堂)」「Maple Story(楓之谷)」といった韓国作品も根強い人気を誇る。ただし、台湾最大のゲームWebメディア「巴哈姆特」(バハムート)の記者によれば、台湾では3〜4カ月ごとに新作オンラインゲームがリリースされ、それに連れて2位、3位あたりの作品は頻繁に入れ替わるという。このあたりは、同サイトの週間ランキングを見ている人には納得のゆくところであろう。その週たまさか一番人気でも、年間を通して見たとき上位に入るとは限らない。新し物好きの台湾ユーザーにウケたか否かについては、最長不倒距離で見ることが重要なのだ。

 ここまでにちりばめてきた台湾ゲーム事情を、ちょうど反映しつつ歩んできた大手ゲームメーカーがある。UserJoy Technology(宇峻奥汀)がそうだ。今年は出展していないのだが、もちろん視察にはやって来る。そこで、同社が日本市場に送り出したオンラインゲーム「Angel Love Online」(この作品は決してスモールバジェットではないが)を中心に、同社の今後について聞いてみた。

会場にはほかにも純然たるオタクグッズショップがあって、日本製の三国志ギャルアニメのフィギュアに出くわしてしまったりする。現地の人がどういう感じで受容しているのか、非常に気になるところだ

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