TAIPEI Game Show2009番外編──ガマニアCEO Albert LIU氏インタビュー(後編)(1/3 ページ)
前編に引き続き、Gamania Digital EntertainmentのCEO、Albert LIU氏へのインタビューをお届けします。新作タイトルについても紹介。
(「今後何を目指すのか──ガマニアCEO Albert LIU氏インタビュー(前編)」はこちら)
水滸伝に基づく「H108」で欧米市場に参入
―― 大枠で言って、2008年はGamaniaにとってどんな年だったといえるでしょうか。
Albert LIU氏 まず台湾本社に関して言えば、安定した1年だったと思います。それに大して香港支社では大幅な成長が見られましたし、ガマニアジャパンは以前の赤字から一転して、通年で黒字となりました。売り上げで言えば、50%以上の成長となります。日本での成功は、Gamaniaグループにとってもっとも嬉しいニュースであって、今後とも日本での成功が続くよう、力を入れていきたいと思います。
―― 日本でのオンラインゲーム市場は、おそらくいったん過当競争の局面に入っていて、そのなかにおけるガマニアジャパンの健闘は素晴らしいものだったと思います。しかし、それに勇気付けられる形で、ほかの台湾企業が日本のオンラインゲームマーケットに続々とライバルとして現れる……という危惧はありませんか?
Albert LIU氏 Gamaniaは日本市場で、たくさんの「勉強料」を払いましたので、それを覚悟できる勇気のある会社は、台湾にそう多くないと思いますよ(笑)。
―― あー。それは確かに説得力がありますね。
Albert LIU氏 台湾のゲーム会社は、自分が進出するよりもガマニアジャパンと提携関係を作りたいと考えるケースが多く、そういった打診はたくさんいただいています。
―― だとすれば今後、ガマニアジャパンがGamania本体の作品でなく、台湾他メーカーの作品を手広くパブリッシングしていくことも、大いにあり得るのでしょうか。
Albert LIU氏 ガマニアジャパンとして、台湾のタイトルを特別意識するような方針はないですから、とにかく良いコンテンツであれば、韓国製であれ大陸中国製であれ、広くパブリッシングしていくことになるでしょう。
―― 先ほど香港の話題も出ましたが、日本以外のブランチでも今年大きな動きがありそうでしょうか?
Albert LIU氏 ええ。今年はついにGamaniaが、欧米市場に打って出ます。
―― それはビッグニュースですね。中華圏から一気にアメリカとヨーロッパですか。
Albert LIU氏 それに加えてオーストラリアですね。
―― ヨーロッパとアメリカはある意味分かりやすいですが、それに加えてオーストラリアを選んだ狙いはどのあたりにあるのでしょうか?
Albert LIU氏 英語圏なのでアメリカ向けと同じテキストコンテンツがそのまま使えるという前提はもちろんありますし、ゲームの嗜好もアメリカに近いと分析しています。それらに加えて、オーストラリアではまだ、オンラインゲームのマーケットが大きくありません。いろいろなサービスが進出してはいますが、大規模にマンパワーが投入されている段階ではなく、ある意味いまがチャンスなのです。
―― 南米地域などは、同時にお考えにはならなかったと。
Albert LIU氏 ええ、考えませんでした。
―― それはやはり、南米ではもうある程度オンラインゲームが根付いているという判断でしょうか。
Albert LIU氏 はい。私が認識している限りで、この1〜2年南米のオンラインゲーム市場は急速に伸びています。ただ、そうであるがゆえ、一足跳びに大手サービス業者にはなれないわけです。ですので、南米市場は順番としては後に回すべきだという判断です。
―― では、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアという、従来の大陸中国、香港、台湾とは大きく異なる地域でのサービスに当たって、中核となる作品ないし作品ジャンルはどうなりますか?
Albert LIU氏 看板になるタイトルは、新作の「H108」です。HはHero、ヒーローです。
―― 108人のヒーローということは「水滸伝」ですか。
Albert LIU氏 はい。これが「新作アメリカンアクション」の正体です。ゲームとしてはアメリカンスタイルで、ストーリーは中国由来。そういうことです。
―― それはたいへん興味深いアプローチですね。魯智深とか、そういった人が、強力なスキルを持ったキャラクターとして登場したりする、と?
Albert LIU氏 あ、魯智深はまだ登場しませんけどね。最初は林冲など四人だけが登場します。この作品についてはアニメーションも同時に制作しており、今年の第3四半期と第4四半期にわたって、ヨーロッパの「Cartoon Network」で公開予定です。作品のサービスタイミングとは、合わせていきたいと思います。
―― いや、ちょっとびっくりしました。でも、最初に華々しく行くのは、正しいのかもしれません。
Albert LIU氏 Gamaniaの欧米戦略として、アニメーションが効果的だと判断しています。そして重要なのは、アメリカとヨーロッパのCartoon Networkで、そのアニメーションが高く評価されていて、今年のメジャーラインアップに入っていることです。
アニメーションの実際のテイストは、中国風ではありません。ただ、108人の味方主要キャラクターがいて、ストーリーの大筋がある程度「水滸伝」に沿っている。そんな感じです。監督もそのほかの制作陣もアメリカ人で、700名くらいのスタッフが関わっています。
―― 日本人としては、非常に興味と敬意を持てるアプローチだと思います。自国の文化を欧米で問うことを、きちんと考えているという点で。
Albert LIU氏 ありがとうございます。
―― 欧米では既存の作品群も、同時に展開予定ですか?
Albert LIU氏 「H108」はGamaniaのグローバル戦略の中で、中核の位置を占めるタイトルとして世界展開を行います。欧米ではそれから「ブライトシャドウ」に始まる自社開発タイトルを、現地の企業さんとの協力も込みで展開していきたいと思います。
―― だとすると「H108」自体は、日本でもサービスが提供されるのでしょうか?
Albert LIU氏 ええ。その予定です。
―― アニメーションも含めて、でしょうか?
Albert LIU氏 どこか有力なテレビ局さんないし配信会社さんと組んで提供したいところですが、まだ検討中です。
―― 日本で武侠モノや中国ファンタジーの概念が、あまり広く知られていない点は、中国文化圏の作品をサービスするとき、常に問題になる部分だと思います。その意味でも、まったく別の形に置き換えて作品化することの意義は大きい気がします。
Albert LIU氏 確かにおっしゃるとおりで、武侠というテーマは中華圏ではたいへん人気があるもののやや食傷気味、そしてグローバル戦略として考えた場合、一部の人が理解できるものにすぎません。ですので、Gamaniaの開発スタンスとして武侠に強くこだわる気はないですね。新しいジャンルに挑戦していきたいといいますか。
―― 「三国志」や「西遊記」など、中国には魅力的なモチーフがいろいろあるだけに悩ましいところですが、そこへの間接的アプローチは挑戦しがいがありそうです。
Albert LIU氏 同感ですね。
―― ところで現在の台湾の子供達にとって、「水滸伝」や「三国志」自体は馴染み深い物語なのでしょうか?
Albert LIU氏 いや、私の年代ならいざしらず、いまの子供達はそれほど詳しくないでしょうね。
―― 在来文化というものは、何か作品を作るときのリソースとして非常に重要ですけれども、日本でも同様にそれは失徐々にわれつつあって、別の継承方法が求められるところだと思います。そうした試みとして捉えたときにも、面白い手法です。
Albert LIU氏 まあ、Gamaniaの欧米市場に対する奇襲のようなものですね。お楽しみに、というところです。
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