ニュース
» 2010年02月10日 08時00分 公開

“よくできたゲーム”と“面白いゲーム”の違いとは?――マリオの父、宮本茂氏の設計哲学(前編)(1/5 ページ)

マリオシリーズや『Wii Fit』などで世界的な支持を獲得している任天堂の宮本茂氏。ゲームデザイナーとしての30年間の業績が評価され、第13回文化庁メディア芸術祭では功労賞が贈られた。受賞者シンポジウムでは、エンターテインメント部門主査の河津秋敏氏が聞き役となり、宮本氏が自身のゲーム設計哲学を語った。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 電機産業や自動車産業などの日本伝統の製造業が世界市場で苦戦を強いられる中、存在感を拡大させているのがゲーム産業の雄、任天堂だ。2009年3月期の売上高は1兆8386億円、株式時価総額は3兆円超と日本第9位の企業となっている(2月9日現在)。

 京都で花札やトランプを製造する一企業に過ぎなかった任天堂が飛躍を遂げる上で、キーパーソンとなったのがゲームデザイナーの宮本茂専務取締役情報開発本部長(57)だ。宮本氏はマリオシリーズやゼルダの伝説シリーズのほか、『Wii Fit』のような健康管理ソフトも開発、老若男女を問わず、世界中の人々から支持を獲得している。

 ゲームデザイナーとしての30年間の業績が評価され、第13回文化庁メディア芸術祭(主催:文化庁、国立新美術館、CG-ARTS協会)で功労賞が贈られた宮本氏。2月5日に国立新美術館で行われた受賞者シンポジウムでは、エンターテインメント部門主査の河津秋敏氏(スクウェア・エニックス)が聞き役となり、宮本氏が自身のゲーム設計哲学を語った。

任天堂の宮本茂氏

自分が素直に面白いと思えることをやっているだけ

河津 まず宮本さんから受賞された感想をいただければ。

宮本 これは授賞式でもお話ししたのですが、功労賞というのはだいたい年配の方がいただかれるものなのですが、僕は5年ほど前から功労賞みたいなものをちょくちょくいただくようになりました。まだ現役のつもりでいるのですが(笑)。

 ただ、授賞式の時に河津さんたち審査委員の方々が出てくるのを見ていると、僕はもう結構年上なんですね。「浜野保樹(文化庁メディア芸術祭運営委員)さんくらいしか年上の人がおられないやないか」ということで、すごく実感しています。ずっと現場で若い人たちと仕事をしているので、全然年をとったという自覚がなくて、「ちょっと嫌な響きの賞かな」と思いながらも、この業界を長い間見てきた人間として、できるだけ貢献できるように頑張りたいなと思っています。

エンターテインメント部門主査の河津秋敏氏

河津 宮本さんはゲーム業界では世界的に有名で、ゲームを作っている人間で宮本さんの名前を知らない人は誰もいないわけですが、ゲームをプレイされている方には意外とまだまだ名前を知られていないと思います。特に日本ではこういう分野の人間自体あまり注目されません。

 世界的に知られている人なのに、あまり国内で知られていないというのは、同じゲームを作っている人間として非常に残念です。今回を機会に名前が広まっていって、「宮本さんを目標に頑張っていこう」という若い人たちが入ってきてくれるといいなと思っています。これからの若い人たちに対して、どのようにお考えですか?

宮本 これは恥ずかしいのですが、日本では「世界で知られている」と言われていて、ドイツの街頭で「知っている日本人の名前を挙げろ」とインタビューしたら名前が出てきたとかありますが、僕は海外で普通に歩けます。ゲームショウのような特殊な場面に行くと大変ですが。

 逆に海外では「この人は日本ですごい有名なんだよ」と言われているのですが、日本でも普通に歩いています。「何かを作っている人が有名である」ということには勘違いがあるようで、山手線に乗っていると、すごい小説家の先生が前に座っていることもあると思うのですが、みんな気付きません。若いころはちょっと自分の作品が売れると、「自分も有名になりたい」といった欲があったような気もするのですが、今は「作ったものがすべて」となっていますね。

 ゲームを作ることに関しては、日本人が作るものに対して世界的な評価はすごく高いです。そのため、「どうして日本でそういうものが作られるのか」と興味を持って分析したがる人もいるのですが、僕は日本というより、また東京とか京都とかいうこととも関係なく、「基本的に個人が作っている」ということが大事かなと思っています。

 僕は別に世界を意識して作っていないんですね。「自分が面白い」というとわがままな感じになるのですが、「自分たちが素直に面白い」と思えることをコツコツやっているだけです。ただ、何十年かやってきて振り返ってみると、「東京に憧れて出て行かなくて良かったな」と何となく思いますね。「京都にいて良かったな」と。

 僕は大学のころに金沢にいたので、金沢にそのままいたら「東京に出たい」とか「大阪に出たい」と思ったかもしれないですが、京都で普通に仕事をしている間に30歳、40歳になっていて、「別に京都でやっていて何も問題はなかったやん」と思うようになりました。(京都にいても)世界中で売れますから。僕が40歳のころには自分が作る作品は海外で売る数の方が圧倒的に多くなってきていたので、「別に京都でやっていてもちっとも問題なかった」と思ったのです。

 そうすると、「どこで仕事をするか」ということよりは、「誰が作っているか」をはっきりさせて作ることが大事かなと思っています。日本の若い人たちにとって憧れって大事だと思うんですよ。東京に憧れたり、有名になりたいと思ったり、「世界に羽ばたきたい」という憧れがあったりしてもいいと思うのですが、自分の足元をちゃんと見て作るということが大事です。僕は奇をてらったり、世界のためにと思って作っていたりはしませんから。ちゃんとやっていれば、ちゃんと評価をしてくれる人たちが世界中にいると思うので、頑張ってほしいと思います。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2311/06/news020.jpg 柴犬「友達〜!!!」 お母さんの寝坊で散歩が遅れた柴犬、ワン友に会えず……→怒りMAXの拒否柴発動に母「スマン……」
  2. /nl/articles/2311/06/news041.jpg 素潜りでイソマグロを突いたら海に引きずり込まれ…… 水深25メートルの激闘が100万再生「怖い」「磯のダンプカー」
  3. /nl/articles/2311/05/news045.jpg カナダ留学中の光浦靖子、得意の手芸でまたしても力作を生み出す 「クオリティ高すぎ」「もープロですね」
  4. /nl/articles/2308/06/news018.jpg 柴犬がプールからあがろうとした瞬間……! 「何回見ても爆笑」「好きすぎる」コントのようなずっこけハプニングが発生
  5. /nl/articles/2311/06/news047.jpg 隣家にいった飼い主、ふと視線を感じると柴犬たちが……? じーっと監視するワンコきょうだいの圧に爆笑
  6. /nl/articles/2311/06/news117.jpg 「スト6」フランス大会決勝、モニターにペンキで中断 環境団体乱入で
  7. /nl/articles/2311/06/news068.jpg 村重杏奈の“最強遺伝子”な弟、7歳バースデーお祝いに黄色い声 姉とうり二つな姿に「幼さが抜けて更にイケメン」「可愛いしカッコイイ」
  8. /nl/articles/2311/04/news008.jpg 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
  9. /nl/articles/2311/04/news016.jpg 突然現れた痩せて汚れた野良猫、「ごはんくだちゃい」と訴えてきて…… 距離が縮まっていく姿に「涙が出ます」と100万再生
  10. /nl/articles/2311/05/news052.jpg 「ここはあんたが座る席じゃないよ」 末期すい臓がんの叶井俊太郎、優先席に座るも高齢者から非難 妻・倉田真由美が明かす
先週の総合アクセスTOP10
  1. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  2. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  3. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!
  4. 「BreakingDown」出場の元プロボクサー、5人から一方的に暴行される 顔面数針縫うも「私は1発も攻撃してません」
  5. 「頭が大きい」「普通ではない」 パリス・ヒルトン、9カ月長男の受診勧めるコメントにぴしゃり「世の中には病んでる人がいるみたい」
  6. 「最期の最期まで闘って」 元「妄想キャリブレーション」水城夢子さん、27歳で病死 2年前には“しばらく療養が必要な病状”で休止
  7. 3児の母・杏、異次元スタイルのパンツスーツ姿が衝撃的 目を疑う脚の長さに「身長の半分股下」「えっ! 本当!? っと思っちゃうくらい」
  8. 志穂美悦子、68歳バースデーに鍛えられた筋肉バキバキの肉体美披露 「いろいろやりたいことがある」「まだ見ぬ自分へ」
  9. 柴犬と父のやりとりに「20分これ見て爆笑してます」「気持ちよすぎるいい返事」 お笑いコンビを超える関係性が100万再生
  10. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 病名不明で入院の渡邊渚、3カ月ぶりSNS更新で「表情に違和感」「そこまで酷い状況とは」 ベッド上で「人生をやり直すこともできません」
  2. 動かないイモムシを助けて1年後のある日、窓の外がありえない光景に 感動サプライズが「アゲハ蝶の恩返し」と話題
  3. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
  4. 「千鳥」大悟、大物美人俳優にバッグハグされた表情に注目集まる 「マジ照れのお顔ですね」「でれでれやん」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 神田愛花アナ、拡散された女子中学生時代ショットにスタジオ騒然「ヤバい」→“アネゴ感”でSNSもざわつく
  7. 「生きててよかった」 熊谷真実、美麗な初“袋とじ”グラビアで63歳の色気全開 真っ赤なドレス着こなす姿に「すごいプロポーション」
  8. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  9. 双子モデル・吉川ちえ、美容整形後のひたいが“コブダイ”状態へ 多額の費用要した修正手術で後悔も「傷がこんなに残りました…」
  10. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!