一手一秒!? CEDEC CHALLENGE「超速碁九路盤AI対決」:CEDEC 2010
CEDEC CHALLENGEと題する枠の中で行われた「超速碁九路盤AI対決」一手一秒、最大対局時間は二分までと、物凄く回転の速い「早碁対決」だが、その内容とは……。
囲碁としては珍しい試み。参加者自慢のAIが集うイベント
「超速碁九路盤AI対決」は、参加者が自作したAIを用いて碁による対局を行い、優劣を競う。一手にかかる時間は一秒、ルールで定められた対局時間は2分までと、AIならではの早碁対決になっている。
今回この「超速碁九路盤AI対決」は、AIの対局のみではなく、王 唯任・万波 佳奈 両プロによる囲碁入門教室も開かれており、AI同士の囲碁対決という主旨の中、囲碁のルールが分からないという方にも、プロによる簡単な手ほどきを受けられるようになっていた。
「超速碁九路盤AI対決」は初日から2日目まで予選を行い、予選の上位四名が決勝進出となる。AI同士という異色の対局ではあるが、このイベントはかなりの注目を集めていたようだ。
予選を勝ち抜いた四つのAIによる決勝戦。気になる結果はいかに
CEDEC3日目には、上位四名による決勝大会が行われた。この決勝大会では、プロの解説つき公開対局というなんとも贅沢なものである。
筆者は開場前に大会が行われるホールに入ったが、驚くべき事に満席であった。囲碁の対局イベントは、CEDECの数ある講演の中でもかなり異色な雰囲気は否めないが、ここまでの人気ということには、主催されていたスタッフも参加者の皆さんも驚かれていた。しかも参加者の方々の9割近くが、囲碁のルールを知っている経験者だという。
決勝大会第一試合は「nomitan」対「hope」で、AIの早碁というだけあってか、解説が始まるよりも早く局面が進んでいく。1分も経たない間に、「hope」が投了。「nomitan」の勝利となった。対局後にプロ棋士お二人の検討が始まると、AIの打ち筋についての解説がされていった。
どうやらAIは、定石などの型にそった打ち方を学習しているらしく、解説する棋士のお二人に「進行として美しい形」と誉められるほどであった。「hope」は攻めにいく碁を打ち筋とし、相手に切り込んでいく棋風であったが、9路の狭い中、詰め碁のような形になってしまい、相手の「nomitan」に正しい手を打たれた後、切り込んだ手が死に石となって投了、白番nomitanの中押し勝ちとなった。
第二試合は「tombo」対「kasumi」の対局。AIの開発者のお二人は同じ電気通信大学の出身で、「tombo」が先輩「kasumi」が後輩の、先輩後輩対決とのこと。対局の流れでは、序盤で白が妙手を打ったが、AIが変化を読みきれていなかったのか、白が妙手の後に手抜きをした箇所を黒が咎め、隅の白を死に石にして、黒の勝ちとなった。
今までの試合を振り返るに、AIはまれに局面の急所をつく手を打っては来るものの、9路の中では石の死活がほぼ一本道ということが多く、死活を読み間違えた片方が負けるパターンが多かった。これもAIの特徴だろうか。石の厚みや地合を計算して勝つというよりは、石を取りにいく事で勝ちを得るスタンスが多いらしい。
決勝戦に残ったAI「nomitan」と「tombo」の対局も、超早碁というだけあって、一分経たずに終局を迎える。結果は黒の中押し勝ち。序盤で白は悔しい思いをした後、何とか地を取りに行ったが、石を取りに行くのが強いというAIの特性もあってか、黒番の「nomitan」は上手い具合に上辺6子・下辺3子と白石を取り、それによって白の「tombo」は投了した。
さてここで、終局後は開発者のお二人を交えての検討となったのだが、驚くことに開発者のお二人は囲碁に詳しくないらしい。しかし、知人に碁の経験者がいるらしく、碁のAI開発をするにあたって、囲碁の基本的なアドバイスは受けていたそうだ。
プログラムの中身についての質問が出ると、2007年ごろ「モンテカルロ法シミュレーションを使った囲碁プログラム」というのが世界的に流行っており、それを素直に取り込んだものとのことだった。これは「nomitan」と「tombo」のどちらも同じとのことで、勝敗がついたのは若干のチューニングの差なのだろうか。プログラマーの方には面白い結果になったのかもしれない。
プロ棋士と自作AI夢の対決。優勝プログラムはプロ棋士にかなうのか?
優勝AIが決まると、プログラムの最後にエキシビションとして万波 佳奈プロと「nomitan」の対局が行われることになった。
石を取るのが上手いAIと、地と囲いに行く人間の思考では、どのような局面が展開されるのか、どのような棋譜が出来上がるのかは、開場の期待を一身に集めた。
碁の棋風には、その人の性格が表れるとよく言われる。その事について「万波先生の性格」を質問されたのだが、王 唯任先生によると、普段は可愛らしいが碁になると凶暴極まりないとの事。凶暴な棋風をほこるプロ棋士を相手に、「nomitan」が黒番、万波先生が白番で対局がスタートし、終局する頃には黒地はゼロ、完膚なきまでにAIを打ちのめした万波プロに拍手が送られた。
AI相手に完全勝利を収めた万波プロは「プログラムのことはよく分からないけれど、今後が楽しみ」と、AIの強さを認める一方で、今後発達するであろう囲碁のAIに期待を寄せて、「超速碁九路盤AI対決」は幕を閉じた。
関連記事
- CEDEC 2010:CEDEC2010からの新たな試み――「ポスター発表」って?
今回で12回目のCEDECで初めての試みとなるポスター発表。一体どんな事が行われていたのか? 何人かの発表者からのお話も交えて、写真とともに紹介します。 - CEDEC 2010:キャラクターも演技者であれ――大塚康生×上田文人対談 〜もっと上手くなりたい!動かす力〜
CEDEC 2010のメインステージに、アニメーターの巨匠・大塚康生氏が登場。「人喰いの大鷲トリコ」を開発中の上田文人氏とキャラクターの動きについて対談する。 - CEDEC 2010:「パチンコのような単純さ」で1000万ユーザー獲得 グリー田中社長が語るヒットの極意
「ソーシャルゲームでは1000万ユーザーにいかないとヒットじゃない感覚」と語るグリーの田中良和社長。ヒットを狙うには、パチンコやテレビのような“単純さ”が必要と説く。 - CEDEC 2010:作家の視点でゲームの、そして人間の重力感を俯瞰する――瀬名秀明氏基調講演
「CEDEC 2010」2日目の基調講演には、作家の瀬名秀明氏が登場。重力がゲームに影響を与え、ゲームは重力に影響を与えているのか? 瀬名氏が“視点”の置きどころで解説する。 - 「3日でソーシャルゲーム作る」 DeNAがCEDECで実演
CEDECで、DeNAのエンジニアらが、携帯電話向けソーシャルゲームを3日間で開発するチャレンジを行う。 - 「CEDEC 2010」関連記事一覧
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
-
誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
-
小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
-
娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
-
プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
-
1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
-
メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
-
子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
-
巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
-
ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
- 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
- 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
- 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
- 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
- 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
- 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
- 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
- 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
- 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
- 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」