「LiveArea」「Near」そして「Suite」――ネットワークに溶け込むNGPのサービス戦略:PlayStation Meeting 2011「Next Generation Portable」サービス編
1月27日に開催されたPlayStation Meeting 2011では、NGP本体スペック公開に合わせて、NGPならではのユニークなサービスも発表された。
ソーシャル、位置情報とトレンドはひと通り押さえた形
ソニー・コンピュータエンタテインメントが本日発表した、次期携帯型エンタテインメントシステム「Next Generation Portable(コードネーム/以下、NGP)」。ハードウェアについてはすでに別記事にて触れているので、こちらの記事ではサービス面について見ていくことにしよう。
ハードウェア編で触れたとおり、3G通信機能を標準で搭載するなど、ネットワーク面についてはかなり力を入れていることがうかがえるNGP。今回発表されたサービスを見ると、なぜSCEがそこまでネットワーク接続にこだわったのか、こだわる必要があったのかが、少しだけ見えてくる。
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ゲームごとに提供される専用空間「LiveArea」
まずNGPのサービスで特徴的なのが、「LiveArea(ライブエリア)」と呼ばれるインタフェース。平井氏の説明によれば、NGPでは個々のタイトルが「LiveArea」という「空間」を持っており、プレイヤーはそこで、他のユーザーとコミュニケーションを図ったり、最新の情報やコンテンツにアクセスすることができるという。
空間といっても「PlayStation Home」のようなメタバース的なものではなく、見た目的にはホームページのような感じ。たとえば「みんなのGOLF NEXT」だったら、中央にゲームをスタートするためのボタンがあり、その下にはストアへの入り口、左右には「みんGOL.NET」からのお知らせと、オンライン大会の案内がそれぞれ配置されているといった具合だ。ただ、すべてのゲームでこのような配置なのかどうかは不明。
また画面下にはフレンドの動向がリアルタイムでポップアップするようになっており、例えば「○○さんがホールインワンを出しました!」といった情報がリアルタイムでどんどん入ってくる。さらに個々のイベントをクリックすれば、「やったね!!」「おめでとう!」といったコメントを残していくことも可能。「みんなのGOLF NEXT」に限らず、NGPのゲームはすべてがこうした「LiveArea」を持つという。
既存のPlayStation Networkでもフレンド同士でチャットやメールはできたが、「LiveArea」の場合、それがタイトルに紐づけられていて、コメントを「残して」おけるというのがユニーク。すべてのユーザーが同時にログインしている必要がなく、時間や空間を越えてコミュニケーションできるという点では、mixiなどのソーシャルネットワークサービスに近いようにも感じた。
「NGPではゲームを買うと、そのゲーム専用のプチSNSが一緒に付いてくる」というのはちょっと大げさかもしれないが、3G通信という常時接続環境を手に入れたことで、「NGPではすべてのゲームが少なからずソーシャル性を持つ」とも言えそうだ。
NGPならではの位置情報サービス「Near」
もうひとつ、NGPならではのサービスと言えるのが「Near(ニア)」。これは位置情報を使ったサービスで、ユーザーの位置情報をもとに、周辺にいる他のユーザーがどんなゲームで遊んでいるのか、どれくらい盛り上がっているのかを見られるというもの。
またNGPを持ち歩いて外出すれば、ユーザー自身の移動記録をたどり、それぞれの場所でどんなゲームが遊ばれているかを見ることも可能。DSや3DSの「すれ違い通信」とちょっと似ているものの、NGPの場合、遊ばれていたゲームの情報はPSNのサーバー側に蓄積されていくため、リアルタイムですれ違わなくても、「時間や空間を越えて」(平井氏)コミュニケーションできるのが「Near」の特徴だ。今のところ、ここからどういったコミュニケーションが広がっていくのかはちょっと想像できないが、新たなゲーム、新たなユーザーに出会うきっかけとしては面白そうだ。
AndroidでPSのゲームが遊べる! 「PlayStation Suite」
また今回、Android/NGP向けに「PlayStation Suite(プレイステーション スイート)」というサービスも発表された。
従来、プレイステーションのゲームを楽しむには、PS3やPSPといった専用のマシンが必要となっていたが、これを必要とせず、オープンなプラットフォーム上で動作するのが「PlayStation Suite」の特徴。現時点ではAndroidとNGPへの対応が発表されており、例えばゲーム機がなくても、Android端末があれば「PlayStation Suite」のゲームは楽しむことが可能。イメージとしては、Android版PlayStation Storeといったところだろうか。
提供開始は年内を予定しており、開始にあたっては、Android端末からもアクセス可能なPlayStation Storeを新たに展開する予定。まずは初代プレイステーションの名作の移植が中心だが、今後はサードパーティ向けに「PlayStation Certified(プレイステーション サーティファイド)」というライセンスプログラムを提供。徐々にオリジナルのコンテンツも増やしていく方針だ。
スマートフォンやタブレットPCがゲームプラットフォームとして急成長している昨今、手軽でかつ高クオリティのゲームをそこに提供することで、より多くのユーザーにプレイステーションブランドのコンテンツを浸透させていく、というのがSCE側の狙い。
「NGPではより深いゲーム体験を追求し、『PlayStation Suite』でカジュアルな楽しさに触れていただく。相互のユーザーが循環することで、手のひらの上に革命を起こしたい」(平井氏)
もちろん「PlayStation Suite」のゲームはNGPからもプレイ可能。SCEとしては初のクロスプラットフォーム・クロスデバイスの試みであり、今後の動きに注目したいところだ。
誰も見たことのないサービスが生まれる瞬間
これらのサービスはいずれも、ネットワークと密接につながりあっているという点で共通している。平井氏は発表の冒頭、PS3のネットワーク接続率は80%を越えていると語ったが、それでもまだ100%ではない。今やすべてのゲーム機が何らかのネットワーク接続機能を持っているが、3G通信を標準で搭載し「全ユーザーがネットワークにつながっているのが当たり前」というゲーム機はNGPが初となる。
果たして「すべてのユーザーがネットワークにつながっている」という状態が当たり前になったとき、そこにはどんなサービスが登場し、どんな使われ方をするのか。平井氏が言うように、NGPが本当に「手のひらの上に革命を起こす」存在となれるのか注目したい。
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