第13回:「隠れキャラ」に隠された、プレイヤーをゲームのとりこにするヒミツ(つづき):なぜ、人はゲームにハマルのか?(4/5 ページ)
1986年にファミコン市場へ参入するのとほぼ同時期に、テーカンから社名を変えたテクモ(現:コーエーテクモゲームス)も非常に凝った「隠れキャラ」を登場させていました。同社は当時、ファミコンソフトのテレビCMやパッケージにウサギをモチーフにしたマスコットキャラクターを盛んに使用していたのですが、実はこのウサギをゲーム中の「隠れキャラ」としても利用していたのです。
テクモのファミコンソフト第1弾となるアクションゲーム「マイティボンジャック」、および「ソロモンの鍵」では、特定の条件を満たすとウサギの顔がデザインされた、その名もテクモプレートという「隠れキャラ」が出現するようになっていました。前者は取ると10万点プラス1UP、後者は50万点プラス1UPというスゴイ豪華特典が得られるのですが、いざプレイしてみると出現させるだけでもかなりタイヘンです。当時これらの「隠れキャラ」をきちんと取れるパターンを習得していたプレイヤーは、きっと友人間では一目置かれる存在になっていたのではないでしょうか?
実は筆者、以前に某所で当時のテクモの開発関係者にお会いする機会があったのですが、テクモプレートを導入するきっかけはズバリ、「社長からの業務命令です。」と証言しています。見た目はとても小さい「隠れキャラ」ですが、会社をあげてのCI活動に大活躍をしていたとは、今となってはちょっと考えられないことですよね?
また、日本物産が1986年に発売したファミコン用シューティングゲーム「マグマックス」では、特定の場所に出現する地上キャラにショットを数発撃ち込むと、鳥のフクロウをモチーフにした同社のロゴマークがそのまま「隠れキャラ」として出現するようになっていました。
同じく、日本物産のファミコンンソフトである「テラクレスタ」でも、特定の地上キャラを破壊すると3種類の秘密のメッセージが表示されるようになっていました。実は同社では、このメッセージを発見してハガキに書いて送ると抽選でプレゼントが当たるキャンペーンを当時実施していました。すなわち、「隠れキャラ」を販促に利用することでプレイヤーのさらなる参加・購買意欲をあおり、ブランディングにもひと役買っていたというワケですね!
究極の企業イメージ向上作戦!? ゲームメーカーのスタッフ自らを「隠れキャラ」に!
各メーカーの顔役あるいは代名詞的な存在として大活躍した「隠れキャラ」ですが、なんとゲームメーカーの開発あるいは営業・広報スタッフの顔をそのまま「隠れキャラ」として登場させるという面白い例もありました。
このような「隠れキャラ」を当時最も多く採用していたのは、おそらくハドソンのファミコン用ソフトをおいて他にはないでしょう。その先駆けとなったのは「プーヤン」および「ボンバーマン」の両作品で、いずれも特定の条件を満たすと開発者の中本さんの顔が「隠れキャラ」として出現するようになっていました。特に後者では、取るとなんと1千万点という特大ボーナスが加算されるということもあって、筆者も初めて発見したときは体が震えるほど感動したものでした。
また「ドラえもん」と「スターソルジャー」には、それぞれ開発者である野沢さんの顔が「隠れキャラ」として登場し、前者は出すと8万点、後者は200万点の大ボーナスがもらえるようになっていました。さらに「忍者ハットリくん」では、当時の子どもたちのカリスマ的存在だった高橋名人(の顔)も「隠れキャラ」となり、出現視点に向かってしばらくの間手裏剣を投げ続けると、やはり高得点ボーナス(8面は20万点、14面は200万点)が加算されます。
ゲーム中にいきなり顔が出てきて、なおかつ高得点が入るというインパクトはまさに強烈で、一度体験するとそう簡単には忘れられず、同時にプレイヤーの脳裏には開発者の存在もハッキリと刻み込まれることになります。とりわけ、高橋名人が「隠れキャラ」としてお茶の間に登場したことによって、メーカーに対してさらに親近感が増したプレイヤーも多かったのではないかと思われます。
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