第14回:これならサルでも遊べちゃう!? いつの間にかゲームがうまくなってしまうヒミツの仕掛け:なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/3 ページ)
実際に遊びながら初心者をサポートする「ガイド機能」
ここからは「練習ステージ」の代わりに「ガイド機能」を用意することで、プレイヤーに遊びながらルールを覚えてもらえるよう工夫をしていた例を取り上げてみましょう。
以前の当コラムでも紹介した、いわゆる落ち物パズルゲームでセガが1990年に発売した「コラムス」、およびナムコが1992年に発売した「コズモギャング・ザ・パズル」がまさのこの典型例です。「コラムス」では宝石を縦・横・ナナメのいずれかに3個以上、「コズモ・ギャング・ザ・パズル」では敵のコズモをボールをぶつけて倒すか、コンテナを横一列に並べると画面から消去されて得点になるルールになっています。
両作品とも、ゲーム開始時にプレイヤーの腕に合わせて難易度が選べる(※)ようになっているのですが、最も難易度が低いEASYモードで始めるとプレイヤーが操作できる宝石やコンテナを得点が入るライン上に移動させるとカーソルが点滅し、得点ゾーンをしばらくの間知らせてくれるようになるのです。この「ガイド機能」によってプレイヤーはなぜ得点が入るのか、すなわちゲームの基本ルールがより理解しやすくなるというワケです。
また、コナミのシューティングゲーム「パロディウス」シリーズでは、初心者向けのオートパワーアップ機能が搭載されたものがあります。本シリーズはその原型となった「グラディウス」シリーズと同様、敵を倒したりすると出現するカプセルを集めて、パワーアップゲージが光ったときにボタンを押すといろいろなパワーアップが自機に装着されるシステムになっているのですが、初めて遊ぶ人にとってはどのパワーアップをどのタイミングですればいいのか、なかなかピンとこないのではないでしょうか?
そこでゲーム開始時に「AUTO(オート)」を選択しておけば、カプセルを取るだけで自動的にパワーアップを選んで装備を強化してくれるオート機能が作動するので、プレイヤーは敵を倒すことに専念しながらゲームに慣れることができるのです。また、同時に各種パワーアップの効果を覚えるためにも役立ちますので、これも「ガイド機能」の一種であると言えるでしょう。
以下のムービーは、1990年に発売されたアーケードゲーム「パロディウスだ!」の「AUTO」を使用してプレイしているところです。ひたすら敵を撃ってカプセルを集めているうちに、どんどんパワーアップしていることがおわかりいただけることでしょう。なお、続編の「極上パロディウス」では「AUTO」以外に「SEMIAUTO」機能も追加され、後者を選ぶと自動パワーアップとプレイヤー自身が好きなタイミングでパワーアップできるマニュアル操作の両方を併用できるようにもなっていました。
習うより慣れろ! トレーニングを楽しくすることでますますヤミツキに
野球の上達には、素振りやキャッチボールなどの日々の基礎練習が欠かせません。しかし、どんなに野球が好きな人であっても素振りのようにボールを使わず単調なトレーニングを毎日続けるのは、体力的にも精神的にも少なからず苦痛をともなうことでしょう。
ゲームもまたしかりで、うまくなるにはやり込みすなわちトレーニングを繰り返し行うことが必要です。プレイヤーの上達を助けるために、本編とは別にトレーニング専用のモードを用意した作品が古今東西たくさんありますが、単なる練習ではなくトレーニング中もゲームすなわち遊びの要素を盛り込むことによって、より楽しくプレイできるように工夫を凝らした例も調べてみるといろいろあることがわかります。
例えば、野球ゲームの定番シリーズであるコナミの「実況パワフルプロ野球」。本シリーズでは投球およびバッティングなどの練習をするためのキャンプモードがありますが、バッティング練習ではホームランやヒットを打ったときに、投球練習では指定のカーソル内にボールを投げたときに得点が入り、一定の球数ごとにハイスコアを集計するというミニゲーム形式になっているのです。以下のムービーは、この得点集計のシステムが最初に導入された1996年発売のスーパーファミコン用ソフト「実況パワフルプロ野球3」のプレイ動画です。
このように、ちょっとした遊びの要素を加えるだけで単に投げたり打ったりするよりも面白さが格段に増し、楽しみながら自然と操作技術が上達できるようになるのです。このアイデアを最初に考えた方は本当に素晴らしいと筆者は素直に思います!
さらに、1995年に同じくコナミが発売したスーパーファミコン用ソフト、「実況ワールドサッカー2」でもトレーニングを面白くする工夫をしています。
本作ではパスやシュートの基本操作以外にも、ボタン入力の組み合わせでさまざまなキックやフェイントなどが使えるようになっているので、これらの使い方をひと通り覚えるのは誰でも少なからず時間がかかります。しかしトレーニングメニュー内のチャレンジモードを選択すると、ゲーム形式で楽しく操作方法が学べるようになるのでまったく苦痛になりません。ドリブル練習時はフラッグ(旗)を通過しながらいかに速くシュートを決められるかを競う形式となり、シュートおよびフリーキック練習では、特定のポイントにボールを蹴るとそれに応じたボーナス得点が入るようになっていて、しかもハイスコアを更新すると自動的にセーブされるという実に凝った設計になっているのです。
実際、筆者は本作を買ったばかりの頃にトレーニングモードがあまりにも面白かったため、時間を忘れて一晩中練習だけを遊んでしまったことがあります(本当!)。
「楽しくトレーニングができる」ゲームとして、筆者が今でも強く印象に残っているのは1996年にナムコがプレイステーション用ソフトとして発売した対戦格闘ゲームの「鉄拳2」があります。
本作のトレーニングモードにはテクニックに応じた得点表示こそありませんが、技がヒットしたときにHigh(上段)、Mid(中段)、Low(下段)と書かれたヒットマークが表示されるため、どの技を使えば相手のどこを攻撃できるのかが明確に分かります。また、連続で技がヒットした場合はコンボ数が表示され、さらに与えたダメージ量の合計も瞬時に計算してくれるので実に便利。しかも、画面下部にはプレイヤーが入力したボタン操作の履歴がすべて表示される仕組みになっているので、コマンド入力が必要な必殺技の練習もこれさえあればもうバッチリです!
なお余談になりますが、本作の攻略本を執筆していた知人の某ライターが、「このトレーニングモードはマジでヤバイ(=最高)でしょ!」と、真剣に語りながら夜な夜な研究に没頭している姿を私は何度も目撃しました(笑)。
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