第20回:プレイヤー同士でいざ勝負! 対戦プレイはなぜ面白いのか?なぜ、人はゲームにハマルのか?(3/4 ページ)

» 2012年05月25日 16時52分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]

ソフトでも、ハードでも! こんなところにも隠されていた対戦ゲームのヒットのヒミツ

 対戦ゲームがヒットする理由は、ソフト自体の出来がいいからにもちろん決まっていますが、実はそれと同じくらい重要なポイントがもう1つあります。それはゲームの外側の部分、すなわちハード面に工夫を凝らして画期的なアイデアを導入したことです。

 分かりやすい例としては、任天堂が1989年にゲームボーイ用ソフトとして発売された落ち物パズルゲームの「テトリス」があります。本作は1人で遊んでも十分に面白いゲームですが、別売りの通信ケーブルを接続すればプレイヤー同士で対戦ができる機能がついていたのが大ヒットの決め手でした。これも対戦ゲームの歴史を語るうえでは欠かせない超重要ポイントでしょう。

 1990年代前半になると、「ストII」の大ブレイクを機に全国各地のゲームセンターで対戦格闘ブームが到来しますが、ここでもゲームのソフトではなくハコの部分を改造した運営方法が発明されたことも人気を集める大きな要因となりました。

 と、ここまで書けば長年の対戦格闘ゲーム好きには筆者が何を書きたいのかお察しいただけるでしょう。そうです、対戦ゲームを運営するゲームセンター側のアイデアによって実現した、いわゆる「通信対戦筐体」が登場したことも歴史上のある意味大きな事件でした。なお、ここで言う「通信対戦筐体」とは1枚のビデオゲーム基板(ソフト)を2台の筐体(ハード)につなぎ、それぞれのプレイヤーが別個の筐体でプレイできるようにしたもの指します。

 「通信対戦筐体」を使用する最大のメリットは、見知らぬ人同士でも気軽に対戦を楽しめるところにあります。例えば、2台のアップライト型の筐体を背中合わせに設置すれば、例え知らない人と目を合わせたり話しかけるのが不得手な人であっても、筐体がちょうどブラインドの代わりになるおかげで物理的にも心理的にも障壁を取り除く効果があるというワケです。もし「通信対戦筐体」がなかったとしたら、突然見ず知らずの人が自分のすぐ隣に(テーブル型筐体の場合はすぐ真向かいに)座ることになりますから、「本当は遊びたいけど、途中で誰かに乱入されるのは何となく怖いからやりたくなあ……」などというように、多くの人がプレイすること自体に抵抗を感じてしまうことでしょう。

 誰でも好きなタイミングで対戦プレイに参加できる「乱入」あるいは「乱入対戦」という遊び方が定着した背景には、実はハード面の改良が大きく貢献していたのです。

 そして1995年になると、セガからあらかじめ背中合わせにモニターおよびコンパネ(操作部分)が2台くっついた筐体、その名も「バーサスシティ」が発売されました。このような機械をわざわざ開発したという事実からも、当時の対戦型ビデオゲームに対する需要がいかに高かったのかがお分かりいただけることでしょう。また1997年にナムコが発売した「サイバーリード」のように、さらに時代が進むと外部映像出力などの機能をあらかじめ搭載した筐体も登場するようになりました。

 さらに「バーサスシティ」では、筐体上部にあるLED(※2ケタの文字を表示する装置)を利用して対戦プレイを盛り上げる工夫もしています。例えば、この筐体で「バーチャファイター2」を稼働させると、お互いの技がヒットするたびにダメージ量をLEDに表示するようになっていました。これによって、プレイヤーは数値を見ながらプレイすることで技の性能を研究したり、次の作戦を考えたりしながらゲームを楽しめる効果が新たに生み出されました。また、セガが1995年に発売したサッカーゲームの「バーチャストライカー」では、ゴールを決めるとLED上に「GOAL」と表示したり、筐体上部のランプが点滅するなどの演出を盛り込み、対戦プレイをさらに盛り上げる工夫をしていたのです。

 同じく、「サイバーリード」にもLED表示機能が搭載されていました。これを利用すると、例えば「鉄拳3」は使用した技の名前がLED上に表示されたり、「鉄拳タッグトーナメント」では大きなダメージを受けてピンチになったキャラクターの「休ませて!」というセリフが表示されるなど、数々の面白い演出が見られるようになっていました。

 なお余談になりますが、KONAMIが1993年に発売したアーケード用バスケットボールゲームの「スラムダンク」や、1994年発売のサッカーゲーム「サッカースーパースターズ」では、1人でCPU戦をプレイ中に別のプレイヤーが入ってくると「対戦者出現!」などと画面に表示され、対戦プレイモードに移行するかどうかを先にプレイした側が選択できる機能がついていました。もし腕に自信がなければ対戦を拒否することもできるので、初心者でも安心して「通信対戦筐体」で遊ぶことができるという仕組みです。

 対戦格闘ゲームがブームだった時代は、人気タイトルを何台も設置したお店がたくさんありましたが、もちろんすべての店がそうだとは限りません。しかし、このようなシステムがあれば「通信対戦筐体」でしか稼働していない店であっても、初心者が安心してCPUを相手に腕を磨くことができますよね!

 このようなお店でのオペレーション、およびハード面での工夫が対戦ゲームの面白さを支えていたことは、ビデオゲームの歴史を語るうえで必要不可欠であると筆者は考えますが、はたしてみなさんはどう思われますか?

まだまだあります、対戦ゲームによって生み出された大発明!

 格闘ゲームに限らず、総じてアクションゲームでは対戦プレイ時にプレイヤー間の実力差が顕著に出てしまうもの。ソフトを発売日に購入してずっとやり込んでいる人と、その日初めて遊ぶプレイヤーとが対戦した場合は当然ながら力量が大きく違うので、しばらくの間はスリリングな勝負を楽しむことができません。

 そこで登場するのが、あらかじめプレイヤーごとにハンディキャップがつけられるアイデアです。例えば、1992年にセガがメガドライブ用ソフトとして発売した落ち物パズルゲームの「ぷよぷよ」では、スタート時に「激甘」「甘口」「中辛」「辛口」「激辛」の全5段階から難易度を自由に設定して遊べるようになっています。以下のムービーを見れば明らかなように、「激甘」で始めたプレイヤーは落下物(ぷよ)がゆっくり落ちてくるのに対して、「激辛」を選択したプレイヤーは落下スピードが格段に速くなり、さらに開始直後に「おじゃまぷよ」と呼ばれる障害物が大量に出現することでハンディをつけた状態でプレイができるようになっています。

ムービー:「ぷよぷよ」
※Wiiバーチャルコンソール版を使用。
(C)SEGA/COMPILE 1992

 元々はアーケードゲームだったものを家庭用に移植したタイトルについても、対戦プレイ時にハンディキャップをつけられるシステムを追加した例が数多くあります。以下のムービーは、ナムコが1998年に発売したプレイステーション版「鉄拳3」の対戦モードで、本作ではゲーム開始時に体力値の増減を設定することでハンディがつけられるようになっています。ちなみに「ストII」シリーズでは、1992年に発売されたスーパーファミコン版の対戦モードでは攻撃力を8段階で変えられるハンディキャップシステムがついていました。

 アーケード版はその場でお金を払ってプレイする性質上、ハンディを自由につけられるルールにすると不公平感が出てしまいますが、家庭用であればプレイヤー同士で合意さえすればどれだけハンディをつけても何の問題もありませんし、なおかつ財布の中身を気にせず存分にトレーニングを積むことができますよね。

ムービー:「鉄拳3」
※PS版を使用。
(C)1994 1995 1996 1998 NAMCO LTD., ALL RIGHTS RESERVED

 そしてもう1つ、今ではすっかり忘れ去られた感のあるビデオゲーム史上に残る世紀の大発明をご紹介しましょう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/22/news047.jpg 刺しゅう糸を20時間編んで、完成したのは…… ふんわり繊細な“芸術品”へ「ときめきやばい」「美しすぎる!」
  2. /nl/articles/2412/18/news207.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」【大谷翔平激動の2024年 現地では「プレー以外のふるまい」も話題に】
  3. /nl/articles/2412/21/news040.jpg 友達が描いた“すっぴんで麺啜ってる私の油絵"が1000万表示 普段とのギャップに「全力の悪意と全力の愛情を感じる」
  4. /nl/articles/2412/22/news034.jpg 後輩が入手した50円玉→よく見ると…… “衝撃価値”の不良品硬貨が1000万表示 「コインショップへ持っていけ!」
  5. /nl/articles/2412/21/news019.jpg 毛糸6色を使って、編んでいくと…… 初心者でも超簡単にできる“おしゃれアイテム”が「とっても可愛い」「どっぷりハマってしまいました」
  6. /nl/articles/2412/22/news036.jpg 「これは家宝級」 リサイクルショップで買った3000円家具→“まさかの企業”が作っていた「幻の品」で大仰天
  7. /nl/articles/2412/21/news023.jpg 「人のような寝方……」 “猫とは思えぬ姿”で和室に寝っ転がる姿が377万表示の人気 「見ろのヴィーナス」
  8. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  9. /nl/articles/2412/17/news042.jpg 山奥で数十年放置された“コケと泥だらけ”の水槽→丹念に掃除したら…… スッキリよみがえった姿に「いや〜凄い凄い」と210万再生
  10. /nl/articles/2412/22/news020.jpg 余りがちなクリアファイルをリメイクしたら…… 暮らしや旅先で必ず役に立つアイテムに大変身「目からウロコ」「使いやすそう!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」