第20回:プレイヤー同士でいざ勝負! 対戦プレイはなぜ面白いのか?:なぜ、人はゲームにハマルのか?(1/4 ページ)
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の20回目は、相手と戦うことで初めて起きる“ゲームを続けたくなる”仕組みについて。
人はなぜゲームにハマルるのかを、プレイ動画や画面写真を見ながら楽しくかつまじめに考える当コラム。今回は前回の同時・協力プレイに続き、2人以上のプレイヤーが勝敗を競って楽しむ対戦プレイをテーマにしてお送りします。
コンピューターの操る敵ではなく、プレイヤー同士で対決するとまた違った面白さが堪能できるのもビデオゲームならではの大きな醍醐味。では、対戦モードの存在によってゲーム楽しくなる仕組みとは具体的にいったい何なのか、ビデオゲーム発展の歴史と合わせて考えていくことにしましょう。今回もどうぞヨロシク!
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」バックナンバー
- 第19回:仲間といっしょに遊べば楽しさ倍増! 同時プレイはなぜ面白いのか?
- 第18回:「待って、もう1回!!」――いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文PART2
- 第17回:これ以上ないプレイヤーへのご褒美!? 極上の快感を与えてくれるエクステンドの演出
- 第16回:ゲームは見た目がすべて!? ひと目でプレイヤーを虜にするデモ画面の工夫
- 第15回:「待って、もう1回!!」 いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文、「コンティニュー」のスッゴイ仕掛け
- 第14回:これならサルでも遊べちゃう!? いつの間にかゲームがうまくなってしまうヒミツの仕掛け
- 第13回:「隠れキャラ」に隠された、プレイヤーをゲームのとりこにするヒミツ(つづき)
- 第12回:「隠れキャラ」に隠された、プレイヤーをゲームのとりこにするヒミツ
- 第11回:開発者VSプレイヤーの知恵比べ? あの手この手で編み出されたボーナス得点システムの数々
- 第10回:スコアアップ&劣勢挽回のチャンス! ゲームがますます楽しくなるボーナスステージ
- 第9回:テクニック・イズ・スコア! プレイヤーに「ゲームがもっとうまくなりたい!」と思わず夢中にさせてしまう得点アップの仕組み
- 第8回:ステージクリアの快感をさらに高める、ボーナス得点のアイデアいろいろ
- 第7回:ハイスコア更新は常に命がけ! 「ボーナス獲得=ハイリスク」の法則
- 第6回:ハラハラドキドキ感を演出するゲームサウンドの魅力
- 第5回:ゲームをより面白くする「4ステージ1セットの法則」
- 第4回:ピンチの後にはチャンスあり! プレイヤーへの爽快感を高める「逆転の法則」
- 第3回:「なぜ、ゲームではステージ数の表示方法にこだわるのか?」
- 第2回:「なぜプレイヤーは“ハイスコア”に夢中になるのか?」
- 第1回:「なぜ、プレイヤーはマニュアルを読まなくてもゲームを遊べるのか?」
人 vs 人で対戦できれば遊び方が無限大に広がる!
対戦ゲームの歴史における大きなターニングポイントとなったのは、今から21年前の1991年になるでしょう。この年に登場して全国各地のゲームセンターで空前の大ヒットとなったのが、20代後半以上の人には懐かしいカプコンの対戦格闘ゲームである「ストII」こと「ストリートファイターII」です。当時からゲームセンターをよく利用していた人であれば、連日多くのプレイヤーが設置店舗に集まり、熱気であふれていた光景をきっとご記憶のことでしょう。
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※PS2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用
(C)CAOCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.
もっとも、「ストII」までの間の時代に対戦ゲームがまったく存在しなかったわけではありません。では、「ストII」以前の1980年代には主にどんなものがあったかと言いますと、アーケードでも家庭用でも野球、サッカー、テニスなど球技系のスポーツものが対戦ゲームの定番だったというのが筆者の印象です。任天堂のファミリーコンピュータ用ソフトとして発売された、その名もズバリの「ベースボール」や「サッカー」、あるいはナムコ(現:バンダイナムコゲームス)の大ヒット作である「ファミスタ」こと「プロ野球ファミリースタジアム」シリーズは、いずれも2人で対戦ができるゲームモードがありました。
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※いずれもファミリーコンピュータ版を使用
(C)1983 Nintendo
(C)1985 Nintendo
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![画像](https://image.itmedia.co.jp/gg/articles/1205/25/wk_120525naze08.jpg)
(C)1986 NAMCO LTD., ALL RIGHTS RESERVED
では、これらの作品はなぜ対戦モードを取り入れたのでしょうか? その答えはやはり、対戦プレイを取り入れることによって、毎回同じようなパターンで動くCPUの敵キャラクターと戦い続ける単調さが解消され、遊びの幅が大きく広がるからです。またスポーツゲームの場合は、画面を見れば誰でも元ネタとなったスポーツがすぐに分かる、すなわちその競技のルールをある程度知っていれば自然と遊び方もだいたい想像できるのでゲームの初心者でもとっつきやすくなります。
プレイヤー同士で対戦(あるいは同時プレイ)させることによって、順番待ちをする他のプレイヤーの待ち時間を短縮することができるのも大きなメリットです。今でこそ同時に数百人でも数千人でも同時に参加できるオンラインゲームが当たり前のように存在しますが、初期のアーケードゲーム筐体は2人分のコンパネ(操作デバイス)が、家庭用ゲーム機には2個のコントローラーが最初からついていることが非常に多かったため、2人対戦プレイモードを用意するだけでそのゲームはフル稼働状態になるわけです(当たり前ですが……)。特に1980年代の半ば頃からゲームにハマリ出したファミコン世代の方であれば、自分の部屋や友人の家に大人数で上がり込み、みんなで交代しながら遊んでいるときの「待ち時間」がどれだけ長く感じたのか、容易に想像がつくことでしょう。
さらにお店側の視点から見れば、プレイヤーすなわち客の回転が早くなればその分インカム(売上)が増えることにもつながります。1台(あるいはワンセット)の筐体で2人が同時に遊んでくれれば、単純計算で同じ稼働時間でもインカムが2倍になりますから、経営サイドとしてはこれほどありがたい話はありません(ゲームセンター店長経験者談!)。
また、「ストII」シリーズでは見た目も性能もまったく異なる8人の格闘家が選べることで、さらに「ファミスタ」シリーズでは各選手の能力が異なるだけでなく実在の選手(※)が登場することによって、そのキャラクターになりきって戦うことができる「なりきり感」が得られるのも大ヒットの要因となったことは論を待たないでしょう。
この「なりきり感」については今回のテーマとは異なるので詳しくは触れませんが、なぜ人がゲームにハマルのかを語るうえでの重要なキーワードであることは間違いありませんので、この機会にぜひご記憶にとどめておいてください。
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